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「待て。行くな」
もうすぐ執務室の扉だったのに、アダムに手首を掴まれたどり着けなかった。
「こちらを向け」
（……そんなこと言われても、向けないわよ）
今の自分の顔をどうしてか見せたくなかった。
「王女様」
アダムは少し苛立ったように呼ぶと、掴んでいた手に力を込めて引っ張り、強引にベロニカを体ごと振り向かせる。
ベロニカはそのまま壁際に追い詰められ、顔の横にアダムの両手を置かれた。
背中に硬い壁の感触が当たる。
「……顔を上げろ」
命令口調でアダムが言う。
本当は言うことをききたくない。
けれど無視し続けても状況は変わらないだろう。覚悟を決めてベロニカはそろそろと視線を上げた。
眉根を寄せてベロニカを見下ろすアダムと目が合う。＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
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