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篠原愛紀
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「浮気相手うちの会社の子でしょ?」
「……」
リュカが奇妙な事を口走った
夫の浮気相手の事
昨日の会話で
夫の浮気疑惑には触れた
だが
私はその浮気相手にまでは言及していない
(何故リュカが……?)
(しかも……核心を突くようなことを)
驚きと同時に
急激に鼓動が早くなる
リュカはなぜそう思ったの?
リュカは何故それが解るの?
リュカは何を知っているの?
高鳴る鼓動
不可解なリュカの言葉に
返す言葉が見当たらない
「まあ勘だけどね」
——ただの勘だった
「……」
でも……
勘にしてはピンポイント過ぎる
正に私の疑念と合致し過ぎる
リュカは勘が鋭い
見透かしたような目で
知っているかのような言動をとる
私はリュカの勘を
あながち否定しきれなかった
私に対するこれまでの経緯しかり
勘とはいえ
核心に触れるようなその言葉は
ただの勘とは言い切れない気がした
「何故そう思うんですか?」
疑念を振り払うように
私は思い切って聞いてみた
「……まあ勘だよ、言ったようにね」
「もう少し具体的に言うと匂いとか?」
「彼女からは瑠奈と同じ男性の匂いがした」
「あとは彼女が瑠奈を見る眼差しとか瑠奈に対する感情とか?」
「まあ勘だよ、根拠無く五感で感じるものをそう言うだろ?」
私が疑念を抱いていた
私が追っていた
香水の香りではない
女の背後に香る
男の匂い
何の証拠も根拠も無い
ただの勘
でも
それが人狼のリュカの鋭い勘なら
その勘が真実である可能性を否定しきれない
高鳴る鼓動
巡る思考
思いもよらなかった
リュカ宅で
リュカと夫の浮気相手の話をするなんて
しかもそれが
浮気相手の真相に迫る
浮気相手の特定に迫る
私が抱き続けてきた疑念の核心
「あのね……」
思い耽り
黙り込む私に
諭すようにリュカが説いた
「勘は勘でそれ以上でもそれ以下でもないよ、基本は」
「でもね、君たちは物事を論理的に考え過ぎている」
「それは会社や社会では正解、証拠や動機、根拠を以て立証すべきだ」
「でもね、だからと言って動物的な直感を軽視し過ぎている」
「純粋にどう感じるかはとても大事、特にこのような場合はね」
「直感から仮定を立てて立証に進むプロセスもあって然るべきだと思うよ」
まるで
社長であって社長でないような
論理的な思考に勘を伴う推論
リュカ独自の理論に聞こえるが
彼の言動の鋭さを鑑みると
彼の至った理屈を鑑みると
それは真相に近い気がした
——浮気相手うちの会社の子でしょ?
あのリュカの物言い
きっとリュカは
それが
浮気相手が
誰なのか特定できている——
「……それって……結局その浮気相手って誰なんですか?」
きっと
リュカの勘は当たっている
そんな気がする
私の勘が
私の動物的な直感は
そう確信している
となれば
その相手は誰なのか
リュカの見解が知りたい
鼓動が高鳴り
血流が沸き立つ
核心の直前に立ち
逸る気持ちで
核心の答えを尋ねる
「んー……何だったっけな?名前覚えてないな」
「瑠奈以外興味ないからさ」
「ほら、俺が就任して間もない時にランチミーティングしたの覚えてる?」
「その時にいた子だよ」
——ランチミーティング
勿論覚えている
イツメンの同期女子たちとのランチの最中
突然リュカが現れた時だ
あの時同席していたのは
神崎さん
小山田さん
鈴木さん
いつものランチメンバー
そこまでは私の疑念と合致する
夫の浮気相手はその中の誰か
私もそう感じていた
やはりリュカの勘は核心を突いている気がする
だが
問題は
その中の誰かだ
「あの時私の他に三人居たと思うんですが……その中の誰ですか?」
「ほら、あの子だよ。瑠奈の隣に座ってた子」
リュカの直感が導き出す
夫純也の浮気相手
それは
あの時私の隣に座っていた子
あの時
リュカは私の隣に座った
反対隣に居たのは——
——鈴木さんだ