テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
随分と海で遊んで、海の家でカキ氷や焼きそばを食べて、砂浜でビーチバレー···さすがにずっと部屋に籠もっていて体力がなくなっていた俺は日陰で見学することにした。
クラスの女子たちも日陰で応援していて、若井が得点を決めるとカッコいい〜と声援を送っていた。
やっぱり若井ってモテるよね、カッコいいのに気取ってないし、サッカーもギターも出来て。
どんなに好きでも俺は恋愛対象にすらならないんだろうな。
そう思うとさっきまで1人でときめいていた自分が恥ずかしくなった。
皆散々遊んで夕方も近くなり、各々解散することになった。
若井と俺は荷物を抱えてバスに乗り込んだ。
荷物が多いのでバスの一番後ろの広い席に並んで座る。
俺たち以外は前の方に2人くらいしか乗客はいなくて車内はとても静かだった。
「海、楽しかったね」
日焼けした若井は少し疲れて眠たそうにしながらそう言った。
「だね、特に浮き輪で浮いてたのとか···楽しかった、いい思い出になったよ」
「まだまだ···花火もお祭りも···いっぱい楽しいことしよ···」
そう言うと俺の肩に頭を乗せて寝てしまった。
若井の体温が伝わって肩が熱い。
顔に触れる髪からは海の匂いがする。
静かなバスに揺られてこのままバス停になんか着かずに、ずっとこうしていたい···若井の全てが愛おしい。
誰も俺たちなんて見ていないから。
そっとよく日焼けした大きな手に自分の手を重ねた。
···そんな幸せな時間にも終わりは来てしまって、バス停に着いて若井を起こし、家に送り届ける。
「元貴ありがと、本当に送っていかなくても平気?」
「すぐそこだし、若井疲れてるでしょ?大丈夫だから。···今日は、本当にありがとう」
まだ眠いのだろう、目がとろんとしていてなんだか可愛らしい。
「俺、本当に楽しかった」
「俺もだよ、若井といたら楽しい事ばっかりで···バイバイするのが寂しいくらい」
若井は笑い飛ばすだろうと思って笑って言ったけど、その反応は想像と少し違って。
「···俺も、寂しいよ」
「···ぇ、ぁ、うん、ホントにね···」
若井も?
けど、どうせそういう意味じゃない。
「じゃあ、俺帰るね、ありがとう。本当に、若井は最高の親友だよ」
「···うん···じゃあ気をつけて」
帰り道歩きながら、今日のことを思い返していた。
家で俺の話をしていること。
2人で同じ浮き輪に入って後ろから抱きつかれたこと。
バスで俺の肩で眠っていたこと。
さよならを寂しいと思ってくれていること。
こんなの、普通の男女だったら両想いなんじゃないのって思う。
けど男同士で友達の延長だと思えばそれでしかない。
切ない、苦しいけど。
すごく幸せだから。
この気持ちを隠してこの距離感でまだまだいようと思った。
俺だけの片思いで。
コメント
7件
元さんの「最高の親友だよ」の後の若さんの「…うん」の…が若さんも元さんが好きなんじゃないかと勝手に妄想しました。 凄くこれからどうなるのか気になります🫣💖
切なすぎる😭🥺 ドキドキ(・:゚д゚:・)ハァハァ