テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
1件
ya×et
俺のコードネームは「chicken」。組織内でも、その軽快な身のこなしと予測不能な行動から、そう呼ばれている。相棒は「chocolate」。その甘美なコードネームとは裏腹に、冷静沈着、そして時に残酷な女、etさんだ。
俺は、etさんに歪んだ愛情を抱いている。彼女の美しさ、知性、そして任務を完璧に遂行する冷酷さ。全てが俺を惹きつけてやまない。だが、etさんの心はいつも氷のように冷たく、俺のどんな言葉も熱も、彼女には届かない。
「chicken、今回のターゲットは、S国の外交官、イワノフだ。君の魅力で近づき、機密情報を入手しろ」
ブリーフィングでの司令官の言葉に、俺は内心で舌打ちをした。また、etさんのためならどんな危険も厭わないとでも思っているのか。
「了解しました」
俺は、表面的には従順なスパイを演じた。
イワノフとの接触は、予想以上に簡単だった。俺の甘い言葉と、計算された仕草に、彼はすぐに心を許した。連日連夜、二人で過ごすうちに、イワノフは俺に深い信頼を寄せるようになった。
だが、俺の心は焦っていた。早く任務を終わらせ、etさんの元に戻りたい。彼女の冷たい視線でもいい。彼女の傍にいたい。その一心だった。
ある夜、イワノフから重要な機密情報が入った。これで任務は完了だ。後は、情報を組織に送るだけ。
その時、背後から冷たい声が聞こえた。
「ご苦労様、chicken」
振り返ると、そこに立っていたのはetさんだった。手には、サイレンサー付きの拳銃が握られている。
「etさん…なぜここに?」
「ya君の後の始末」
etさんの瞳には、いつものように何の感情も宿っていない。
「まさか…イワノフを…」
「邪魔者は消す。それが、私たちのやり方でしょ?」
etさんは、ためらいもなく引き金を引いた。銃声は、静かな夜に吸い込まれていく。
俺は、etさんの冷酷さに震えながらも、同時に安堵していた。これで、イワノフはもう、俺とetさんの間には存在しない。
「etさん…俺は、etさんのものですよね?」
血の匂いが漂う部屋で、俺はetさんに問いかけた。彼女は、無表情のまま俺に近づき、俺の頬に冷たい銃口を押し当てた。
「ya君は、所詮….組織の犬。それ以上でも、それ以下でもない」
その言葉は、俺の胸に深く突き刺さった。それでも、俺はetさんから離れることができなかった。彼女の冷酷さも、また俺を惹きつける魅力の一つなのだから。
蜜のように甘い罠に落ちたのは、イワノフだけではない。俺もまた、etさんという名の甘美で危険な蜜に囚われた、哀れな獲物なのだ。