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「あぁ〜…日曜…」
日曜日。大抵の人にとっては休みだわっほーい。だが
そういう平日お仕事で土日休みの人たちが土日にフルアクセスするのが不動産業界。
土日は内見予定でびっしりである。肩を落としながら、足取りも重く会社へ向かう伊織。
早く火曜日水曜日にならないかなと死んだ目で思う伊織。
死んだ目で「オーライ おおらか不動産」という文字を見る。
「はぁ〜…」
「わかるわかる」
ワイヤレスイヤホンから流れる曲の向こう側右耳のほうから声が聞こえ、右を見る。
いつの間にか累愛(るあ)が立っていて、腕を組みながらうんうん頷いていた。
伊織はワイヤレスイヤホンを耳から外し
「いつの間にいたのかよ」
と言った。
「おはようが先じゃね?」
「おはよ」
「はい、おはよう」
「学校の先生かよ」
「いや、わかるよ。伊織の気持ち。もう手に取るように。
あぁ〜仕事嫌だなぁ〜。今日日曜ぞ?世間ではお休みぞ?
なのにうちは日曜が一番忙しいだなんて…Oh,jesus.世間様が崇める土日というのがオレにとっては…はあ」
とまるでミュージカルのように身振り手振りをしながら伊織の周りを周りを歩き
伊織の気持ちを代弁する累愛(るあ)。
「まあ…合ってるね」
「これがオレちゃんがここの稼ぎ頭である所以よ」
とまたミュージカルのように一回転して
両手で「オーライ おおらか不動産」も文字を紹介するようにする累愛(るあ)。
キラキラァ〜とするように指を動かす。
「なるほどね。お客様の心を読むと。
そんな人間離れした術、私にはできそうにありません。帰ります。お疲れ様でした」
と引き換えそうとする伊織の体に抱きつき、止める累愛(るあ)。2人は「オーライ おおらか不動産」に入る。
「お、おはよう2人とも!」
「おはー」
社長と明観(あみ)がいた。
「おはようございます社長!今日も頑張ります!あ、おはよ景馬(ケイマ)」
「おはよ。朝から元気な。頑張ろうなんて気にならんて」
「景馬(ケイマ) くんは良くも悪くも嘘がないよねぇ〜」
「汐田もおはよ。珍しく気恵(キエ)もルビアくんも一緒じゃないのね」
「ま。てか尾内(オウチ)はともかく、ルビアと一緒に来たことねぇから」
と話していると
「おはよーございます!」
Speak in the devil.噂をすればなんとやらである。ルビアがオフィスに入ってきた。
「おぉ、噂をすれば。おはよールビアくん」
「おはようございます!景馬(ケイマ)先輩!」
「おはよう!ルビアくん!」
「おはようございます社長!」
「おぉ、新人くん!ルビアくんおはよう!」
「おはようございます!小角決(おかけ)先輩!」
「累愛(るあ)でいいよ、累愛(るあ)で」
もう馴染んでいる。さすがは人垂らしの悪魔といったところか。ルビアは伊織ににじり寄って
「たしかに伊織先輩と一緒に来たことはないっすね」
と小声で言った。
「聞こえてたんか」
「そうですね。ここが見えたときくらいに景馬(ケイマ)先輩の声が耳に入ってきました」
「すごいなマジで」
と2人で話していると
「すいませーん。遅れました〜」
と気恵(キエ)がオフィスに入ってきた。
「おぉ気恵(キエ)ぇ〜。珍しいじゃん。どした」
「いや、出て少し歩いてたときさ、今日のこと考えてさ?
今日終わったらルビアくんの歓迎会かぁ〜って思って
バッグ確認したらお財布入ってなくてさ?んで取りに戻ったの」
「気恵(キエ)って財布忘れること度々あるよね」
「まあ、たしかに。最近全部スマホで済むからね」
「あぁね。じゃあなんでたまに私に奢らせる?」
「んふふ〜」
ただただ微笑む気恵(キエ)。
「ふふふ〜じゃないよ」
「それでは全員揃ったということで」
と軽い朝礼が始まった。始業時間になるとすぐにお客様が訪れて
気恵(キエ)も累愛(るあ)も伊織とルビアも
ゲームしに来ているようなあの明観(あみ)にもお客様が来て、皆、内見へと出掛けた。
お昼になり、気恵(キエ)は明観(あみ)と、伊織はルビアとお昼に行こうとしていたが
「おぉ!2人とも。これからお昼?」
と累愛(るあ)と「オーライ おおらか不動産」の前で会い
伊織とルビアと累愛(るあ)、3人でお昼に行くこととなった。
「あ、3人で!」
土曜日に伊織とルビアが来た中華のファミレスに入った。
「累愛(るあ)もここよく来んの?」
「来るよー?なんで?」
「いや、オレも昨日来たし」
「あ、そうなん?」
「そうなんすよ。あ、ここのラーメンもチャーハンもめっちゃうまかったっす!」
「だよね!あ、ルビアくん昨日が初めて?」
「そうっすね」
「あ、じゃあねぇ〜」
「餃子はやめとけよ」
「知ってるよ。そんなことぉ〜。エースぞ?」
無言で無表情で腹が立つ伊織。伊織はラーメン、累愛(るあ)は味噌ラーメン
ルビアは累愛(るあ)におすすめされた五目麺と天津飯を頼んだ。
「ルビアくん、食べるねぇ?」
「はい!人間界」
と言ったときにテーブルの下で伊織がルビアの足を蹴る。
「痛っ」
「ん?どした?人間界?」
「あっ」っと思うルビア。
「あぁ〜。あ、あれ。あの、ファンタジーRPGやってて
そのときに人間界の料理で天津飯あって、食べてみたかったんですよ!」
「あぁ!ゲームね!たしかに天津飯ってゲームで出てくる率高いかもね」
ホッっとする伊織。一方その頃、気恵(キエ)と明観(あみ)は
カジュアルなイタリアンレストランでパスタを頼んだ後だった。
「汐田とはどーなん?」
「どーなんてなに?どーなんて。…あ、この後菊田さんか」
とスマホでスケジュールを確認した気恵(キエ)。
「そりゃ恋愛に決まってんでしょ」
「なんもないよ別に。そっちこそ色恋沙汰ないわけ?」
「ないねぇ〜。興味本位で結婚してみたけど」
「は!?」
あまりに唐突なことで大きな声が出た気恵(キエ)。視線が気恵(キエ)に集まり
小声で「すいません。すいません」と言いながらペコペコ頭を下げる。
「驚きすぎでしょ」
と笑う明観(あみ)。
「は?いや、驚くでしょ。は?いつ?なんで言ってくれんかったん?」
「あ、盛り上がってるとこ悪いけど、ゲームの話だから」
ガタンッ。っとスマホを落とす気恵(キエ)。
「おぉ。現実でそのリアクションする人いるんだ?よかったね。コップとかじゃなくて」
「変な話出すなよ」
と言いながらスマホを拾う気恵(キエ)。
「ごめんごめん。ピンク話ってそれくらいしかなかったから」
「じゃあ、無理して言わなくていい。あと恋愛話って言って?ピンク話って言わないで」
「あぁごめん。まだ昼だもんね。下ネタは…ね」
「自覚あったんかい」
という話をしているとパスタが届いた。
「ペロリじゃん」
ルビアは二人前をペロリと平らげた。
「ご馳走様でした」
「マジでめっちゃ食うね」
「めちゃくちゃ美味しいんで」
「伊織。ガチ中華とか連れてってあげなよ。店の材料なくなるまで食べるんじゃない?」
「嫌だよ。お店にも迷惑だし、なにより店の材料なくなる前にオレの銀行の金がなくなるわ」
「それもそっか」
と満面の笑みになる累愛(るあ)。
「んじゃ、行くか」
「累愛(るあ)さんご馳走様です」
と頭を下げる伊織。それを見てルビアも頭を下げる。
「ん?ないない。別会計よ?ルビアくんの分は伊織がどうするか決めなよ。伊織の直属の後輩なんだから」
「お前、うちの稼ぎ頭のくせにケチよな」
「オレは愛ファス(愛嬌ファーストクラスの略称)につぎ込むんで」
「地下アイドルだっけ?」
「そ。オレを含め愛ライダー(ファンの愛称)のみんなで
愛ファスをメジャーに押し上げようって頑張ってるのよ」
「…頑張ってくれ。地下アイドルハマんないようにしよ」
「なんでよ。伊織もおいでよ〜底なし沼へ」
「怖い怖い」
「ルビアくんは〜?地下アイドル、興味ない?」
「ま、ないことはないですけど」
「お!マジ!?今度一緒にライブ行く?」
「うちの後輩を沼に引きずり込むなよ」
累愛(るあ)は累愛(るあ)で伊織はルビアの分までお会計を済ませて
「ご馳走様です!」
店を出た。気恵(キエ)と明観(あみ)もお会計は同じだが、それぞれの分はそれぞれで出し、お店を出た。
5人とも「オーライ おおらか不動産」に戻り、またそれぞれ仕事をしていった。
空の色は綺麗な水色からオレンジになり、雲の色も白から影の色が濃いグレーになっていた。
「皆さん、忙しい土日。お疲れ様でした!」
「お疲れっしたー」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様でしたー」
「お疲れ様でした!」
「今日も小角決(おかけ)くんはお部屋が決まって」
「うっす!」
「ではこの後、ルビアくんの歓迎会をします!お店はもう予約してあるので、行きましょう!」
「社長の奢りっすか」
「もちろん」
「あざーす!」
「やったー。今日の晩御飯代が浮くわー」
ということで「オーライ おおらか不動産」の6人は居酒屋へ移動した。