テラーノベル
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警察によりユニオンヘイストの収束が宣言された時、逮捕者がいる本署の地下では緊張感のある空気が流れていた。ユニオンヘイストの主犯である最近台頭してきた紫のギャングに新顔がいたからだ。
新顔ということもあり情報を取りたいのか、対応は上官(ハイランク)の小柳が行っていた。
「どうしてこんな事されたんです?」
小柳の問いかけに、黒髪に青いウサギのお面の男は黙秘を貫いていた。
「だんまりですか。指紋の照合であなたの正体は分かっているんですよ」
小柳の口調や態度から彼の苛立ちを感じたのか、男はようやく口を開いた。
「………正体分かっていても、大声でバラさないんだよねぇ」
「話をすり替えないで、質問に答えてください」
「理由ねぇ。友達に助けて欲しいと言われたから」
「犯罪でもですか?それがあなたの正義ですか!」
小柳の声が牢屋に響いた。そのせいで遠巻きにしていた他の署員も何事かと集まってきてしまった。
「………そろそろプリズン送ってくんない?松葉杖はとっくに外れているし、仲間は先に行ってるし。事件と関係ない問答で時間取られたくないんだよねぇ」
「そうやって誤魔化すんですか!」
「まっ、ここでする話ではないね」
両手を挙げながら男は立ち上がる。そして埒が開かないと思ったのか近くにいた女性警官にプリズンに送るよう言った。
「あ、そこのお姉さん!『青ウサギくん』でプリズン60分お願いね!」
「えっ、あたし?」
「この人、なかなか送ってくれないからさ。押収も切符も終わってるし、だいぶ時間経ってるし、早くしてくんない?」
「えっと、はい。60分で送ります。ではっ」
男がプリズンに送られる瞬間だった。
「ま、後で連絡よこしな?」
小柳の方を見た男は、そう言葉を残しプリズンに消えていった。
ぺいんがプリズンに着くと、トレーニングルームから声が漏れ聞こえた。どうやら先ほどのユニオンヘイストのメンバーがいるようだ。
「うぃっす。お疲れー」
「ぺいんさーん!」
挨拶しながらトレーニングルームに入ると逮捕者以外に迎えにきたギャングメンバーもいたようで、その中にさぶ郎とミンドリーの姿もあった。
ぺいんの刑務作業中も、次々にギャングメンバーから声をかけられ感謝の言葉を伝えられた。どうやら次は単独での成功を目指すらしい。
他のメンバーは既に刑期を終え、残すはぺいんだけとなった。さぶ郎とミンドリーはもちろん、不破を含めたギャングたちもぺいんの刑期が終わるのを待っていた。
なまえなどない
新・ぺんまーく
「終わりましたぁ」
「ぺんちゃん、お疲れ。じゃぁ皆んな帰るぞ!」
プリズンを出てからもまだ話は続いていた。さぶ郎もミンドリーもギャングのメンバーと話をしているようだ。
それを横目にぺいんは不破に話しかけた。
「ふわっち。利確できた?」
「まぁね。分かれて逃げたのが正解だった。ぺんちゃんも最後までありがとね」
「JTSはまかせとけって」
「ふはっ」
二人の思い出でもあるその言葉に、思わず不破から笑みが溢れた。
「ぺんちゃん。今回は無理言って悪かったね」
「兄弟の頼みは断れないよ」
そう話しながら、二人はまだ話の続いているギャングメンバーたちを見た。
「お互い、いい『家族』だね」
「そうだね」
「………ほら、家族待ってるよ」
「…そっちもね」
視線の先にはそれぞれの家族がこちらに歩いてくる姿があった。
「じゃあね」
「また店にも来てね」
「もちろん」
二人は背を向け、それぞれの家族のもとに帰った。
ぺいんはやっとミンドリーとさぶ郎に声をかけることができた。
「ただいま」
「ぺいん君、お疲れ」
「いやぁ、四つ叉で4〜5人はダウン取ったんだけどね。人数で押し切られた。勝てんかったぁ」
ぺいんが明るくそう言うと、さぶ郎がぺいんに駆け寄り、その背中に引っ付いた。
「………ぅ〜」
「どしたぁ?」
「………ぅ〜」
困ったぺいんはミンドリーに顔を向けた。
「さぶ郎になんかあった?」
「さっきのユニオンじゃない?最後で離れちゃったから」
そう言われてさぶ郎の様子を伺えど、さぶ郎は唸りながらもずっとぺいんの背中にしがみついたままのため、その表情は見えない。
「…さぶ郎?」
「………ぅ〜」
「ここじゃ話しづらい?」
「ぅ〜」
「…ミンドリー、帰ろうか?」
ぺいんの声がけで3人はミンドリーのフロガーに乗り込み帰路に着く。上空の誰にも邪魔されない高度でぺいんは再びさぶ郎に問いかけた。
「さぶ郎、どうした?」
優しげな声で問われ、さぶ郎はようやく小声で話し始めた。
「………ぺんぱい、助けられなかった」
さぶ郎のか細い声とは裏腹にぺいんは明るい声で返す。
「あの状況じゃ仕方なくね?」
「ミンドリーさんにも言われた。さぶ郎もそれは分かる」
「じゃぁ…」
「でもね。さぶ郎たち、今、警察じゃないから、GPSないんだよ?ダウンしても通知が来ないんだよ?ピンも鳴らせない」
さぶ郎の言葉は続く。
「ぺんぱい置いてっちゃって、マップ見てもシグナルないの気づいちゃって、助けに行こうと思ったらダウンしたって聞かされて………」
「………」
「家族だもん。助けたかったんだよ」
まっすぐこちらを見て伝えてきたさぶ郎の言葉に、ぺいんも改めて向き合い言葉を返した。
「心配、というか不安にさせたか?」
「………うん」
「不安にさせたのは、ごめんな。でも……」
さぶ郎の頭を撫でながらぺいんの言葉は続く。
「僕もさぶ郎のことを守りたかったんだよ」
ヘリから降りるとさぶ郎は再びぺいんの背中にしがみついた。歩きづらいのでぺいんはさぶ郎を背負って移動した。
「ミンドリー。この子くっついて離れないんですけどー」
自宅に着いてもさぶ郎はぺいんに背負われたままだった。その様子をミンドリーが覗き込む。
「寝ちゃったみたいだね」
「ベッドで寝かせてくるわー」
さぶ郎を彼女の自室で寝かせ、ぺいんは居間に戻ってきた。ミンドリーもすぐ休まないのか晩酌の準備をしていた。ぺいんもすぐは寝られないのか晩酌に付き合うようだ。
「ミンドリー。せっかく作ってくれたブルパップ、押収されちまったわ。あと白市民パスとライセンス諸々もか。ごめんなぁ」
「そこはそんなに気にしていないんだけど」
向かいに座ったぺいんに酒を注ぎながらミンドリーは話を続ける。
「さぶ郎にも言ったんだけど、その場にいれば俺もぺいん君と同じ判断をする。だけど俺もさぶ郎と同じで、家族なんだから心配もするし、助けたい気持ちがあるというのは分かって欲しい。………正直、肝が冷えた」
「………ごもっともです。心配かけてごめんな。ま、僕も逆の立場だったら、他の人が止めても助けに行くだろうしな」
ぺいんはことさら明るく続けた。
「そんで全員逃げるか、全員捕まるかのどっちかで!」
「くくっ。全滅はダメじゃん」
「家族仲良く、刑務作業やるも良し!」
ぺいんもミンドリーも酒を飲みながらも会話が続く。
「あー。久々のヒリツキだったわー」
「疲れた?」
「そんなんでもないけど、一旦チル」
二人は今日のユニオンで互いがどうだったかの話を続けた。あの街でもやっていたフィードバックだ。
フィードバックが終わっても話は続く。
「あと、今日中か分からないけど、連絡きそうなんだよねぇ」
「不破君?」
「いやぁ。警察の小柳君」
意外な名前が出てきたのでミンドリーは姿勢を改めて聞いた。
「なんかあったの?」
「まぁ、牢屋でちょっと噛みつかれた」
「ぺいん君、なんかしたの?」
「僕じゃないって。変装しても指紋タブレットとプロファイルでバレるじゃん?そしたら色々とね」
先日の招聘を断ったことに絡んで何か小言を言われたのか───そんなことを思いながらミンドリーは考えた。
やがて、疲れたのか酔ったのか、ぺいんの口数が少なくなってきた。電話も鳴っていたが気づかない様子だ。
「ぺいん君、ぺいん君」
「………んぁっ?」
「電話鳴っていたよ」
「ごめん。うとうとしてた」
「やっぱり疲れてるんだよ。もう休んだら?」
「あー。悪いけど寝るわ」
「俺の方に連絡きたら、明日って伝えておくね」
「頼むわぁ」
そういうとぺいんはあくびをしながら自室に引き上げていった。
程なくして、今度はミンドリーの電話が鳴った。
「はい。ミンミンボウのミンドリーです」
「警察の小柳です。そちらの伊藤さんに連絡がつかないのですが、何かご存知ですか?」
「あぁ。今日はもう寝ましたが。流石に深夜なので出前はできませんが、彼に用件があれば代わりに伺っておきますよ?」
「いえ。伊藤さん個人に用事があったので日を改めます」
そう言って電話は切れた。先程ぺいんが話していた件だろう。これまでの様子を見るに、犯罪に加担したぺいんに何か物申したいらしい。
「まぁ、ぺいん君なら良い落とし所を見つけてくれるでしょ」
夜も大分更けた。日本でいうところの丑三つ時だ。
ミンドリーは後片付けをすると自室に戻り、深い眠りについた。
コメント
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家族の優しいとこ好き

毎度楽しみだぁ