テラーノベル
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第4話「同じ屋根の下で」
朝だった。
木の床が、ギシ、と鳴る。
「……っ、いて」
コゲが目を覚ます。
「なんだこれ……背中バッキバキなんだけど……」
見れば、床に寝ていたらしい。
ベッドの方を見ると――
「……あれ?」
しらたまがいた。
しかも、ベッドの上ではなく。
ベッドの“上にいるコゲの上”に、乗るような形で。
「お前、なんで俺の上で寝てんの!?」
「……あ、おはよう」
しらたまが寝ぼけた顔で言う。
「いや、おはようじゃねぇ!」
「だって、なんか安心したから……」
「キモい!離れろよ💢」
「静かにしろ」
ごマしオの声が下から聞こえる。
「……え?」
コゲが下を見ると、ベッドの下にごマしオがいた。
「なんでそこ!?」
「そこ汚いし。」
「いや普通逆だろ!?」
「合理的判断だ」
「お前の合理性どうなってんだよ……」
少しだけ、空気が緩む。
昨日の重さが、ほんの少しだけ薄れる。
「……とりあえずさ」
コゲが立ち上がる。
「この家、なんとかしね?」
「賛成」
しらたまがすぐに言う。
「このままじゃ、ちょっと……」
「衛生環境は改善すべきだ」
ごマしオも同意する。
「よし、じゃあ掃除大会な」
「大会?」
「ノリだよノリ」
3人は動き出す。
まずは床。
「うわ、柔らか……」
「腐食しているな」
「抜けそうで怖いんだけど」
机。
「ホコリすご……」
「長期間放置されていたと推測できる」
「説明いらねぇから拭け」
椅子。
「クモの巣ある……」
「除去する」
「頼むわ」
キッチン。
「火、つくじゃん」
コゲがコンロをひねる。
ボッ、と火がついた。
「ついたわ」
「ガス供給が維持されている?」
「誰もいないのに?」
「……異常だな」
蛇口。
「うわ、キショ」
「飲用には適さない」
「飲む気も起きねぇよこれ」
少しずつ。
ほんの少しずつ。
家の中が“使える状態”になっていく。
しらたまは丁寧に。
ごマしオは効率的に。
コゲは適当に――でも、ちゃんとやる。
「……ふぅ」
しらたまが一息つく。
「ちょっと、マシになったね」
「最低限は整った」
「最初よりは全然いいな」
3人は、少しだけ満足そうだった。
しばらくの沈黙。
コゲが、ぽつりと言う。
「……昨日のさ」
空気が、少しだけ止まる。
「消したやつ」
しらたまの手が止まる。
「……あれ」
コゲは頭をかく。
「悪かった、とは思ってる」
少しだけ、言いにくそうに。
「勝手にやったし」
しらたまは、少しだけ驚いた顔をする。
「……ううん」
小さく首を振る。
「僕も、ちゃんと止めきれなかった」
「いや、それは違うだろ」
「違わないよ」
しらたまは、コゲを見る。
「コゲがどう思ってるか、ちゃんと分かろうとしなかった」
コゲは少し黙る。
「……でもさ」
しらたまが続ける。
「僕は、やっぱり直したい」
「……だろうな。ザ・主人公」
『それと、みんな主人公でしょ。この物語は。』(心の声)
「だから、これからも止めるよ」
「……おう」
短い返事。
でも、それで十分だった。
ごマしオが口を開く。
「役割を決めるべきだ」
「急に現実的だな」
「効率のためだ」
「自分は観察と判断を担当する」
「司令塔ポジかよ」
「そうとも言う」
「しらたまは修復」
「うん」
「コゲは削除」
「言い方ァ!一応、消す以外もできるわアホ!」
「事実だ」
「まあ……否定はできねぇけど」
少しの沈黙。
「……じゃあさ」
コゲが言う。
「それでいこうぜ」
「役割分担、ってやつ」
しらたまは少しだけ迷って。
それでも、頷いた。
「……うん」
その選択が、どこへ繋がるかも知らずに。
日が傾いていく。
家の中に、オレンジ色の光が差し込む。
3人は、それぞれの場所に座る。
同じ屋根の下。
少し整った空間。
少し近づいた距離。
だけど。
「直す」「見る」「消す」
その違いは、確かにそこにあった。
それでも今は。
まだ、笑える。
まだ、戻れる気がしていた。
コメント
1件
読み終わりました……第4話、じんわり沁みました🥀 朝のスタートがあの寝相バトルから始まるの、めっちゃこの3人らしくて思わず笑っちゃいました。コゲのツッコミが冴えてる! 掃除シーン、地味だけどすごく好きです。何もない空間を少しずつ“使える場所”にしていく感覚が、関係性の修復と重なって……「直す」「見る」「消す」って役割に分かれたのも、それぞれの在り方の違いが出てて考えさせられました。 しらたまが「ちゃんと分かろうとしなかった」って言えたの、すごく大事な瞬間だと思います。 まだ戻れる気がする——その一文に救われる思いでした🌙