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この作品は フィクション小説です。
実在の人物・学校とは関係ありません。
【3年1組の春はセーラー服の季節】
三年 一組の春は、どこか儚かった。
窓の外では、まだ咲ききらない桜が風に揺れている。
私は机に頬杖をつきながら、黒板をぼんやり見ていた。
紺色のセーラー服。
白い襟。
胸元のスカーフ。
もうすぐ、この制服ともお別れだ。
「荒川。」
低い声が教室に落ちる。
「はい。」
私は慌てて顔を上げた。
教卓に立っているのは担任の先生。
生徒たちは陰でこう呼んでいる。
――地獄先生。
怒鳴るわけでも、怖いわけでもないのに、
なぜかそう呼ばれていた。
「プリント配ってくれ。」
「あ、はい。」
立ち上がると、私が着ているセーラー服のスカーフがふわりと揺れる。
私はプリントを受け取り、列ごとに配り始めた。
席に戻ると、私の隣で真奈が小声で言う。
「また呼ばれてるじゃん。」
「係だからだよ。」
「いや絶対違うって。」
真奈は笑いながら私の袖をつついた。
「荒川、先生のこと好きでしょ。」
「違うってば。」
そう言いながら、胸がちょっと苦しくなった。
私ほんとは、先生が好きだもん。
【ホームルームの恋バナで言えない恋】
昼休みの教室は騒がしい。
「三組のカップル別れたらしい!」
ホームルームの教室では、恋の噂がいつも飛び交っていた。
真奈がいつもどうり私の横でパンをかじりながら聞く。
「荒川は恋してないの?」
私はちょっとだけ見るところを変えてから
「してないよ。」
「うそ。」
「ほんとだって。」
言えないだけ。
好きな人が先生なんて、 恥ずかしくて絶対に言えない。
【放課後の保健室と保健室の先生】
その日の放課後、私は保健室にいた。
窓から夕方の光が差し込んでいる。
白いカーテンが風でゆっくり揺れていた。
「百合さんどうしたの?」
保健室の佐伯玲奈先生が優しく聞く。
私はベッドの端に座り、私の長い髪をを指でいじる。
「最近、寝つき悪くて」
「受験のストレスかな?」
「それもあると思います。」
本当は違う気がする。
夜になると、先生の声を思い出す。
「荒川」って呼ばれるだけで胸が苦しくなる。
「金縛りみたいなのもあって。」
「怖い夢?」
私は少し迷ってから言った。
「好きな人がいるんです。」
玲奈先生は優しく笑った。
「なるほど。」
「でも…言えないんです。」
「先生とか?」
私はびっくりして顔を上げる。
先生はくすっと笑った。
「高校三年生でしょ?よくある話だよね」
顔が一気に熱くなる。
「やっぱり変ですか?」
「変じゃないよ。」
玲奈先生はそう言った。
「でも今は、生徒と先生だもんね。」
私は小さくうなずいた。
【先生が褒めてくれた私のセーラー服 】
数日後、防災訓練の日だった。
校庭に全校生徒が並び、先生たちが指示を出している。
春の風が吹いて、セーラー服のスカートが少し揺れた。
そのとき 「荒川。」
振り向くと、先生が立っていた。
「列少しずれてるぞ。」
「あ、すみません。」
慌てて並び直した。
そのとき先生がふっと言ったきがする。
「そのセーラー服、似合うな。」
一瞬、耳を疑ったよ。 「え ?」ってなったね。
「うちの制服、地味だけどな。」
先生はそう言って空を見上げる。
「制服ってのは、着る人で意味が変わる。」
少しだけ間を置いて、続けた。
「ちゃんと生きてるやつが着れば、それは誇りになる。」 胸がドクンと鳴った。
「荒川には合ってる。」
顔が熱くなる。
「ありがとうございます。」
これが私から出た言葉だ。
【呼び止められた放課後に先生の顔】
その日の放課後。
校庭で呼び止められた。
「荒川。」
振り向くと、同じクラスの佐々木くんが立っている。
サッカー部で背が高くて、クラスでも人気の男子。
「俺さ、荒川のことが好きなんだ。」
心臓が一瞬止まりそうになる。
「付き合ってほしい。」
夕方の風が校庭を通り抜ける。
セーラー服のスカートが揺れた。
前までの私なら喜んだかも。
でも頭に浮かんだのは 先生だった。
首を振る。 「ごめん。」
佐々木が驚く。
「好きな人いる?」
「うん。」
「誰?」
私は笑ってごまかす。
「誰だろうね。」
佐々木は少し黙ってから苦笑した。
「そっか。」
「ごめんね。」私が言うと
「いいよ。」と悲しそうに言った。
そう言って佐々木くんは私を置いて校庭を去っていった。
【先生、年下はだめ?】
教室に戻ると、先生がまだ残っていた。
窓から夕焼けが差し込んでいる。
「荒川、まだいたのか。」
「はい。」
私は少し迷ってから聞いた。
「先生。」
「ん?」
「年下って…だめですか。」
先生は少し考える。
「そうだな。立場があるからな。」
そして静かに言った。
「でもな。」
先生は窓の外の桜を見ながら続けた。
「好きって気持ちは、年齢で決まるもんじゃない。」 胸が強く締めつけられた。
先生はさらに言う。
「ただ、大人はそれをどう扱うかを考えなきゃいけない。」 少し笑って言った。
「それが大人の仕事だ。」
私は何も言えなかった。
そのとき、放課後のチャイムが鳴った。
めったに鳴らない静かなチャイム。
先生は窓の外を見ながら言う。
「三年はすぐ終わる。」
私は自分のセーラー服を見る。
もうすぐ、この制服も着られなくなる。
「荒川。」 先生が私の名前を呼ぶ。
「はい。」
先生は静かに言った。
「青春ってのはな、長さじゃない。」
少しだけ笑う。
「どれだけ本気だったかで決まる。」
胸の奥がじんと熱くなる。
私は小さく答えた。
「…はい。」
【まだ女子高生でいたい】
帰り道、真奈が言った。
「もうすぐ卒業だね。」
「うん。」
私はセーラー服のスカートをそっと握る。
まだ、このままでいたいと思った。
まだ
女子高生でいたい。
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