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第9章『心を重ねた静けさの中で』(なおきり視点)
夜が深まって、みんなが部屋に戻りはじめたころ。
なおきりはまだ、台所に残って後片付けをしていた。
そこに、またゆあんくんがやってきた。
「……なお兄、さっきのミネストローネ、めっちゃ美味しかった!」
「ありがとう」
ふたりの間に流れる空気は、どこか特別だった。
それは、きっとお互いがわかっているから。
「ねえ、なお兄」
ゆあんくんが、少し真剣な顔で言った。
「俺、最近ずっと気づいてたんだけど……
なお兄の前だと、素直になれるの、なんでかなって」
なおきりは、静かに答えた。
「俺が、ゆあんくんに素直にいてほしいって思ってるからかもな」
「……そっか」
ほんの一瞬の沈黙。
けれど、次の言葉は、止まらなかった。
「俺、なお兄のことが好き」
なおきりは、まっすぐにこちらを見るゆあんくんを見つめ返す。
「……ありがとう」
そして、自分の胸にあった気持ちに、やっと言葉を与えた。
「俺も、ゆあんくんのことが、すごく大切だ」
静かなキッチンの明かりの中。
手と手が重なることはなかったけれど、それ以上に深く、心がつながった瞬間だった。
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