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「……環奈、これ……」
「……大丈夫です、その、空き巣とか、そういうのじゃないので……」
「…………全部、アイツがやったのか?」
「…………はい」
正直、有り得ないだろうと思った。
こんなのは普通じゃない。それなのに、環奈にとっては当たり前の光景なのか、気にも止めずにクローゼットへ向かい、服を手に取った。
「すみません、その、足の踏み場がないので、ベッドにでも座っていてください。ちょっと、シャワーを浴びてくるので」
「……あ、ああ」
1Kのアパートなので部屋も一部屋だし、床は物が散乱している事もあって、環奈はベッドを椅子がわりにして待っていて欲しいと告げると、浴室へ入って行った。
(有り得ねぇ……こんなの、普通じゃねぇって)
こんな部屋でいつも一人で暮らして、喜多見が来たらアイツの顔色窺って、気分屋のアイツに抱かれる……この、ベッドの上で。
考えれば考える程、俺の怒りは募るばかり。
少しして、シャワーが止まる音が聞こえた俺はベッドから立ち上がると、迷う事無く浴室へ向かう。
そして、
「きゃっ!? ……ば、万里……さん?」
いきなり浴室へ続くドアを開けた俺に驚いた環奈が咄嗟にバスタオルで身体を隠しているその姿を見て、欲情した。
「――環奈」
「え、……あ、の……ちょっと待って……、万里さん……?」
まだ水滴が残る身体を抱き締めた俺に戸惑う環奈。
「万里さん、濡れちゃいますよ……離して……」
「別にいいよ、濡れても」
「で、でも……」
環奈を見下ろすと、ところどころにある身体の痣が痛々しい。
そんな中に、首筋や鎖骨、胸元にある赤い痣が気になった。
これは殴られて出来た痣じゃない事くらい、容易に想像出来る。“キスマーク”なんだと。
あんなクズ野郎の印なんて、環奈の身体に一つも残しておきたくない。
「え!? ちょ……、万里さん!?」
そのまま環奈の身体を抱き上げた俺は無言のまま部屋に戻り、優しくベッドの上に下ろす。
「……万里……さん……? あの……」
「環奈、好きだ。もう、我慢出来ねぇ。あんな男の痕跡なんて、全て消してやる」
「万里さ――っあ……ッ」
これ以上あの男が付けたキスマークや殴った痕を見たくなかった俺は、少し強引なやり方だと分かってはいたが環奈を求める自身の欲を止める事が出来なくて、アイツの痕跡を上書きするように彼女の身体に俺の印を付けていく。
「……ぁ、んッ……ばんり、さん……だめ……」
俺が身体に吸い付き、新たな赤い印をつけるたびに反応する環奈。
アイツのキスマークも、殴られて出来た痣も、全て俺の印に書き換えていく。
されるがままの環奈は既に息が上がり、熱っぽい瞳で俺を見つめてくる。
「その顔、そそるな――」
「んッ……」
全てが愛おしくて、正直、めちゃくちゃにしたくなる。
環奈と一つになりたい。
奥まで深く、繋がりたい。
俺にだけ、溺れて欲しい。
だけど、無理強いはしたくない。
ここまできて辛いけど、環奈が嫌がるなら止めようと思っていた。
「……環奈、俺はお前を抱きたい。アイツから、全てを奪いたい。それくらい、好きなんだ。……けど、嫌なら止める。俺は、お前が嫌だと思う事は、したくねぇんだ」
一度深く口付けをした後、俺は環奈に問い掛けた。