🦍社二次創作
戦争系
「そのコトバを俺は知らない」
第4話 凍てつく心
「ちょっといいか?」
あからさまに眉間に皺を寄せた上司が俺を呼ぶ。
「はい、なんでしょうか?」
「規則をお前は知っているな?」
「…はい」
「お前は、その規則を破ったんだ。」
俺が昨日彼と話していた時の写真。
血の気が引いた。
「奴は敵軍の狙撃手だぞ?何故に奴と談笑した?」
「…ったく、あまり俺を困らせるなよ、ガキの癖に…」
心臓がとても冷たい。生きた心地がしない。
色々な人から見られている。
「お前クビな?情報を敵側に渡したのに殺されないだけマシだと思え。」
「…ッ…はい…」
荷物なんて他にないので、早くあの視線から逃れようと、慌てて基地を飛び出した。
これからはもう、何もする事がない。
いや、何もできない。
手に握った、銀の刃を、頬に当てて軽く切る。
血が出てきて、止まらない。
錆びた鉄の味がして、顔を顰める。
敵国の方へ、足が動く。
今なら味方でも消せるのではないかというくらい殺気立っている。
「おんりー…?」
「……」
無言で近づき、ナイフを振る。
案の定彼は交わしてくる。
何回もナイフを振り、無我夢中で闘う。
ナイフをガッチリ手で掴むおらふくん。
彼の左手からは、血がどくどくと溢れていた。
「…攻撃が単純すぎやで、でも、君がこっち側に来てくれるなら上達するだろうなぁ」
「…俺さ、軍隊から追放されたんだよね」
「嘘ぉ、僕だったらみっちりしごいて逸材をぴかぴかにするけどなぁ‼︎」
「…ただ、俺は母さんと父さんを救う任務を遂行できていない。だから、この国で足掻く。」
「それは諦めたほうがいいよ。」
別の声。ふと見ると、おらふくんの後ろに灰色の髪の毛の、美男子が立っていた。
「…?」
「彼等は、国の命令で、殺されてしまったんだよ。」
「っちょっ、ネコおじ…‼︎」
「…⁉︎うそ…そんな…」
「俺だって止めたよ…平和がいいし。」
「でも、止まってくれなかったんだ。」
「本当にごめん。君の為になれなくて」
「全然…わざわざありがとうございます」
彼はまたどこかに消えてしまった。
「…おんりー、ちゃんと、友達になりたい。」
昨日はその話をされてはぐらかして終わってしまった。だからだろう。
「…でも、友達なんてなった事もできた事もないし、こわいの…」
「俺は、母さんと、父さんを…必ず助けないとだから…」
僕は、この子を見て思った。
「愛」を知らないんだな、と。
幼い頃から戦争に巻き込まれ、両親を失い…
草むらに連れて行き、辺りを見回す。
何処にも、人の気配を感じない。
ゆっくりと、おんりーを抱きしめた。
おんりーは、大粒の涙を零している。
「おんりー、友達って、こうして抱きしめあったり、助けたりできるんだよ。」
「君もこっちに来てよ。」
こっちに来てよ、なんて言われてホイホイついてくる馬鹿はこの世の中に存在しない。
おんりーはびっくりして、そのまま北東に向かって走って行ってしまった。
設定紹介
約10年前、文化や民族の違いが問題で内戦が発生した。
北側が南側の人々を大量に拉致したことで、戦争は激戦化した。
元は一つだった国が北と南で分断され、現在も戦争は続いている。
南北それぞれの国の被害は甚大。
その為、 必ず勝利する、と息巻く人がいる一方で、 もう和平解決をしたい、終戦してほしい、と願う人も増えつつある。
次回 明日
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