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nk side
前回は必死に走った道を、小走りで進む。
「…はぁ…はぁ…、つい、た…、」
あの日以来の彼の家。
中に入るのは初めてで、どうも緊張してしまう。
俺は入り口ののインターホンを鳴らした。
だが、彼は中々出ない。
やはり何かあったのだろうか、
俺はしばらく待ってみるーーー
もう5分以上も待っているのに彼が来ない。
裏口からなんとか入ることも考えたが、その内にガチャ、と扉の開く音がした。
「…!」
ゆっくり開く扉から現れたのは、
酷くつらそうな顔をしたスマイルだった。
今にも倒れそうな足取り、
少し潤んだ紫色の瞳、
その顔は、どこか熱を孕んでいた。
その瞬間、彼は俺に向かって倒れ込む。
「え、ちょ…、ス、スマイル!?//」
俺は咄嗟に彼を抱きしめるように支える。
…息が荒い、
俺は彼の額に触れてみる。
「……あつッ…!?」ボソッ…
凄い熱だ。
これは動けないのも無理ないだろう。
俺はそのまま彼を部屋まで運んだ。
彼をベッドへ寝かせてから、俺はまた彼の額に手を置いた。
「っ、…」
一人でずっと耐えていたのか…
見たところ、彼の家は家具が少ない。
もしかして、一人暮らし…?
でも、高校生で一人暮らしなんて…
まだ金銭的にも厳しいはず…
でも確かに、家具が少ないあたり、本当に一人で暮らしているようだ。
「…スマイル、体温計ある?」
「っ…な、ぃ…」
「…わかった、水とか持ってくるから、」
「冷蔵庫漁らせてもらうね、」
彼は小さく頷いた。
俺は部屋を出て、申し訳ないが早速彼の家の冷蔵庫を漁る。
冷蔵庫の中には食材となるようなものは無く、あるのは2、3本ぐらいのペットボトルしか入っていなかった。
これだけしかない中でどう生活しているのだろうか、
ふと、いやなことが頭をよぎる。
もしかして、普段から食事をあまりとっていない…?
だとしたら、熱じゃなくて栄養失調なんかで倒れかねない。
「…なんか食べられるもの…」
……やっぱりない…
俺はとりあえず、水とタオルを持って部屋へ戻る。
部屋へ入ると、異様なまでに汗をかいて苦しそうにするスマイルがいた。
「っ、!スマイル…!」
「~ッ…はぁッ…、っ…、はーッ…」
俺はすぐに駆けつけて彼の汗を拭う。
「大丈夫ッ…!?水、飲んで…!」
彼は首を横に振った。
「いら、っ…ない…」
「一口でもいいから…!」
すると、彼は俺の制服の袖を掴んだ。
「なかむ…ご、めっ…、はぁッ…」
「お、れっ…ひどいこと…、」
「っ…、そんなのどうでもいいよッ…!」
「無理に喋んなくていいから…、!」
「な、かむ…、いかないで、っ…」
「…!」
その声はとても切実で、儚くて、今にも消えてしまいそうだった。
俺はスマイルのために何ができた?
彼の友達として、親友として、何をした?
迷惑かけてばっかで、救われてばっかで、この有様だ。
彼が飛び降りる前に何ができた?
俺がそばにいるから、まだ行かないで、なんて一言でもよかったのに、
俺は何をした?
ただの傍観者で、彼に寄り添うどころか、彼を押し退けた。
そんな俺が、まだスマイルを好きでいていいのか?
この窓だ。
彼はこの窓から飛び降りた。
ここに立ったときの気持ちはどうだっただろう、
とてつもない無力感、開放感、恐怖、
俺には理解できる。
自分を痛めつけることが、無下にすることがどれほど苦痛か。
俺だってそうだった。
でも、それは間違っていたことを彼が教えてくれた。
もし、俺があの時彼に「大丈夫、」だなんて言えてたら、
もし、俺があの時すぐに彼を追いかけてたら、
そんな気持ちがふつふつと湧き上がってくる。
つらそうな彼を目の前に、こんなことを考えている自分に、また嫌気が差す。
でも、彼が一度救ってくれた命だから、
彼が助けようとしてくれた心だから、
今度は、大切にするから。
スマイル
「…ごめんね、何もしてあげられなくて…」
「っ…、なかむ、は…いつも、っ…助けてくれた…、」
「…え…、?」
俺がスマイルを一度でも助けたことがあっただろうか?
足手まといになってばかりだった俺を、わざわざ引っ張ってくれて…
「おれ、は…なかむが、っ…いる、から…」
「いきて、る…」
なんで、
なんでそんなことが言えるの、?
俺は…
「っ…、はぁッ…、はぁッ…げほッ…、げほっ…!」
「っ、…スマイルッ…!」
さっきよりも呼吸を乱す彼は、とても見ていられなかった。
「はぁッ…は、ぁ…、へ、き…」
「平気なんかじゃッ…、!」
彼はもっと強く袖を掴んだ。
「なかむ、っ…」
「はなれないで…、」
「おれ…なかむのこと、っ…」
「すきだから…っ、」
「っ、…!」
…あーあ、スマイルには驚かされてばっかだなぁ、
今の一言で俺の中の曇りが全部晴れた。
俺はスマイルのことを好きで、スマイルも俺を好きでいてくれてた。
もう、ただの親友なんかじゃない、
でも、ただの恋人なんかでもない、
この世で一番大切で、
この世で一番の宝物。
「……うん、俺も、」
その言葉を最後に、彼は眠りについてしまった。
ただ一つ、分かったことは、
スマイルは、俺の想像していたよりも、ずっと…
凄い人なんだ、