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小さい頃から、なぜヴィランズが嫌われているのかが分からなかった。確かに【ヴィランズ】という名前からして悪者だが、私はそうは思わない。
例えば、【ふしぎの国のアリス】のハートの女王。怒りっぽい性格が話の中で際立っており、彼女を怒らせたりすると《首を跳ねられる》という無慈悲な事があったという。
【リトル・マーメイド】では、アースラがヴィランとして活躍している。海の王であるトリトン王の次に王になろうとしていた彼女は、《契約》で美しいマーメイドを脅かしていたらしい。
次に【ライオン・キング】のヴィランは王の弟、スカーである。王の地位を略奪しようと王の息子を自身の賢い頭で騙し上げ、見事王の座に。
等等、素晴らしい経歴を残した彼らは、讃えられる存在としているべきだと私は思う。なのに何故、嫌われてしまうのか。
私には、理解ができなかった。
目まぐるしい太陽が身を包む。
朝だ。
私にとって憂鬱な朝。家にいても誰もいないし、学校にも私を必要としてくれる人はいない。そして、私も必要としている人はいない。…だが、
…唯一あるとすれば、ただひとつ。
自室のベッドの隅に固まっている【ディズニーキャラ】こと、【ヴィランズ】。私にとってカッコよくて逞しくて憧れな彼らは、ディズニーの中で【悪】として活躍している。
彼らは、私の命の恩人………いや、人生の師匠。
私が親に必要とされていない時、テレビでたまたま流れた、ディズニー映画。ヒロインを際立たせるために自身の賢い頭で策略を立てる姿勢に魅了された。そこから、私のディズニーヲタク心が燃えた…気がする。
そんな彼らはやはり2次元の存在で、会えるわけが無い。だから、ディズニーランドも数え切れない程たっくさん行ったし、たくさんグッズなどに貢いだ。少しでも私の気持ちが伝わって欲しくて。
『ま、無理に決まってるんだけどね…。』
そう思いながら、スマホの電源を付けてお気に入りのゲームを開く。
【ツイステッドワンダーランド】
ディズニーヴィランズが主題となった、ディズニー公式ゲームだ。ディズニーヴィランズがイケメン学生になっていて、ド性癖である。
私、プレイヤーはその様子を見守る?的な存在であり、最近は推しの為にこのゲームに貢ぐのが日課だ。
『ツイステの世界に入れたらなぁ〜…。そしたら、ヴィランズにも、エース様にも会えるのに…。』
すると突然、明るさMAXを飛び抜けるほどの眩しい明かりが私のスマホの画面から光り出した。
そしてその後、意識が曖昧でそれっきりは何も覚えていない。
ガタン、ガタン。ゴトッ、ガタンッ。
何かが揺れる音が私の耳に届き、重い瞼をゆっくりと開かせる。…真っ暗…。本当にこれ、目を開けてる?
そう疑う程、光は何一つ通っていなく、息苦しくも感じた。なんとかしようと手足を動かすと、私は何か箱の中に入っていることが分かった。まだ動いているので、今はむやみに動かない方がいいと思い、大人しく時間が経つのを待つ。
…あぁ、夢なら早く覚めて欲しい。こんな真っ暗な箱の中に入っている夢なんて、悪夢以外の何物でもないじゃないか。
そしてその後すぐ、床に置かれた感覚があり、このまま押したら出れるのではないか?と額に汗を浮かべながら腕を曲げて押してみる。
………。…ビクともしない。
すると、ゲームで毎日って言うぐらい聞いた声が、私の耳に小さく届いた。
「よぉし…制服を奪って早くここの生徒になるんだゾ!…ふなっ、この蓋、重たいんだゾっ!」
「こうなったら…ふなぁああー!!!!!」
何度も聞いた声。……【グリム】らしき声が、私の入っている箱に近付いてくる音がした。そしてすぐ、火特有の匂いが私の鼻を刺激していく。
…まさか、燃やされてる?もしかすると、もしかしなくても…。
私のディズニー魂が燃える。そして、口を開く。
『か、火事だー!??!?!?』
あのゲームの通りに、叫んでみる。
すると、たぬきのような見た目をして炎の耳のリボンを着けた見覚えのある魔獣が、私の目の前に突っ立っていた。
「なんで起きているんだゾ!?!?」
私が棺のようなものから出てきて、そして起きていたのが予想外のことらしくて、魔獣は尻もちをつく。目を見開いて、私を見つめて。
『グ、グリム…?』
思わず、声が出る。
「ふな…?な、なんでオレ様の名前を知っているんだゾ?…もしかしたら、もうオレ様、有名人なんだゾ!?!?」
『あっ、え、…え、グ、グリムなの?ほんとに…?あ、頭痛くなってきた…』
そう、この魔獣の名前は【グリム】。私が散々ツイステのストーリーで聞いてきた声と全く一緒で、見た目も何一つ違いはなかった。ただひとつ違和感があるとすれば、私が今、この世界にいること。
なんで?どうして?ゲームでよくある転生系?いやいや、そんな物が実在するわけないって…。………そうだ、これは夢だ!あぁ、なんだ。夢だと思えば気が楽になってきた。
そう思い込んで最低限自分の気持ちを抑え込む。目の前にいるグリムを感動のあまり抱き締めそうになったこと以外は。
「…いやいや、そんなことより…。その式典服、オレ様に寄越すんだゾ。オレ様はそれが必要なんだ。」
『やだちょっとグリムったらえっち〜。私は女の子だよ?』
「…え?」
再び目を見開くグリム。
…そうだ、ここは男子校。私みたいな女がいるのがおかしいんだ。予想外な出来事で忘れてしまっていた。…まずい。
「冗談はよすんだゾ!びっくりじゃねーか!オマエがメスだとしたらその胸はどう説明するんだゾ?まな板じゃねーか」
(し、失礼な…!)
ん?待てよ。
女だと、バレてない?
…これは、利用できる。
グリムと仲良くなって騒ぎにならずにその先からゲーム通りに進めば推しに、皆に会えるのではないか?
そう考えた私は早速行動に移そうと私をジロジロと見るグリムに話しかける。
『は、ははは〜。そういえば式典服取られなくなるかなー!って思って!』
「なんだそういうことか。…てことで、式典服寄越すんだゾー!」
『ぎゃあああああああー!!!』
さすがに仲良くはできなかった。入学したさにグリムも半分正気を失っていそうだったから。
青い炎を口から何度も出すグリムが怖くて学園中を逃げ回り、最終的に図書室に辿り着き追い詰められてしまった。炎を吐きながら近付いてくるグリムの姿は、まるで躾がなっていない吠える犬の様だった。
🐈⬛「オレ様の鼻から逃げられると思ったか?ニンゲンめ。大人しく服を…ふぎゃっ!!!何だこの紐!?」
🐦⬛「紐ではありません、愛の鞭です!!!…あぁ、やっと見つけました。君、今年の新入生ですね?」
『え、え?』
グリムに追い詰められて詰んでいたところ、仮面をつけたカラスみたいな男が私たちのところに急に現れた。そしてそのままグリムを愛の鞭とやらでベシベシと叩き、グリムを大人しくさせた。凄い。すると次の瞬間私の目の前までやって来て、口を開く。
🐦⬛「ダメじゃありませんか。勝手に扉からでるなんて。それにまだ手懐けられていない使い魔の同伴は校則違反ですよ。」
🐈⬛「は〜な〜せ〜!!!」
🐦⬛「はいはい。反抗的な使い魔さんは黙っていましょうね。」
🐈⬛「ふがふが!!!」
仮面をつけた男は…クロウリー理事長(ディズニーではカラスのディアブロ)。理事長は、グリムの口を手で塞いでそのまま私に話しかけてきた。
…グリムの口、手で塞いでたんだ。ゲームの世界でしか見たことないからなんだか新鮮。
「まったく…。勝手に扉を開けて出てきてしまった新入生など前代未聞です!はぁ〜…どれだけせっかちさんなんですか。」
『へへ…』
理事長の声はゲームで聞くより近くてなんだか緊張して言葉が出てこなくて、照れているような返事をしてしまった。その返事に満足いかないのか眉間に皺を寄せた理事長は私の肩に手を置き指を指す。
「さぁさぁ。とっくに入学式は始まっていますよ。共に向かいましょう。」
『ちょっ、ちょっと、まっ…って、え、えええ〜???』
私の話を聞かずに腕を引っ張りながら入学式に連れて行かれる。
…はぁ、長い夢だな…。
入学式をしているところ、【鏡の間】に着き、それぞれの寮を決めている【闇の鏡】の前に立たされる。1人遅れてきたものだから式典服を来た周りの人達は急にシーン、と、静かになってしまった。
…あぁ、こんな状況で寮決めなんて最悪だ。人に見られながらが1番恥ずかしい。陰キャには屈辱的な場面すぎる。
周りを見渡すと、寮ごとに綺麗な列になっていて、その先頭にはそれぞれの寮長が1人。
…あぁ、やばい。生で見れるなんて。いや、夢だけど!夢だけどさ!…涙出てきそう…。
「何してるんですか!さぁ早く!!!」
理事長に顔を掴まれ鏡の方向に体を向けさせられる。そして、鏡に映っている仮面の男が、口を開いた。
「汝の名を告げよ。」
覇気のあり、そして、どこか優しげな声。
…本物だ。本物の闇の鏡。
感動しながら咄嗟に名前を考えた私は口を開く。
『…カノンです。…カノン……カノン・トラッポラです。』
推しと同じ苗字にしてしまった。名前は本名だが…。…あぁ、推しはどんな反応をしているだろう。まず、この世界苗字や名前が一緒になることはあるのだろうか?もしなかったらだいぶまずい。まずすぎる。…でも、これが夢なら許してくれるだろう。
「カノン……何時の魂の形は…」
「………」
「…ハーツラビュル寮」
『………え?』
「!?だっ、大丈夫ですか!?!?」
思わぬ出来事で、腰が抜けてしまい床に思いっきり尻もちを着いてしまう。
だって、だって…ハーツ、ラビュル寮って…。
心配して駆け寄ってくる理事長を横目に、鏡にもう一度問いかける。
「ハーツラビュル寮だ。」
『…はえ?』
何度聴いても、ハーツラビュル寮と聞こえる。
嘘、なんで?このままゲーム通りに行けば監督生になるはず…。
焦りと喜びで私の今の表情はおかしな事になっているだろう。…はぁ。夢はどんだけ都合がいいのだろうか。このままずっと覚めなければ、推しに、エースに会える…かも。
期待を持ちながらハーツラビュル寮生がいる方向に足を運ぶ。
「ハーツラビュル寮へようこそ。いいかい、新入生たち。ハーツラビュル寮ではボクが法律だ。逆らう者は首をはねてやるからそのつもりで。」
『わ、わぁ…』
目の前に、リドルがいる。本物かどうか確かめたいところだが…少しでも触れたら首を跳ねられてしまうだろう。触りたい衝動を抑えリドルが連れるハーツラビュル寮の後ろについて行こうと足をあげた瞬間
🐈⬛「もごもご…ぷはっ!オレ様も入学させるんだゾっ!」
🐦⬛「あ!待ちなさい!この狸!」
🐈⬛「オレ様、そいつの使い魔なんだゾ!だから、だから一緒に入学させてくれ!」
🐦⬛「あらあらまあ…。さっきはあんなに反抗的だったのに一体どうしたんですか!こんなに大人しくなるなら最初から…。ほら、トラッポラくん。貴方の使い魔は貴方が世話をして下さい。…もう。」
『え、あぁ、は、はい…?』
大人しくなったグリムを受け取り、両手で抱きしめる。不服そうなグリムの顔が面白くて吹き出しそうになったのを堪え、リドル達の後ろにグリムを抱いて着いて行った。
「ここが君の部屋だ。次にここが君の部屋。次は…」
丁寧に1人ずつ部屋を振り分ける寮長が愛おしくて机に肘をつきながら彼をボーッと見続ける。
…さて。なぜ、私がここに普通に入学できたのかは夢だからと理由で済ませよう。
だってそうじゃん!夢じゃないとおかしいでしょ!
そう思い込んでいると、耳元に可愛い声が響いた。いや、ずっと響いていたかもしれない。
🌹「おい!聞いているのか!このボクを無視するだなんて生意気だね…。首をはねてやろうか?」
『わぁああああっ!すっ、すみません!ボーっとしてて…。な、なんでしょうか?』
🌹「ふん。…次は君と使い魔くんの部屋だよ。ここが君と使い魔くんの部屋だ。法律を守りながらゆっくり過ごすといい。」
『あぁ…ありがとうございま』🐈⬛「ひゃっほーい!や〜〜〜っと部屋で休めるんだゾ〜!!!」
🌹「では、部屋割りはもう済ませたね。皆、明日に備えてもう睡眠に入るように。おやすみ。」
「「はい、寮長!おやすみなさいませ!」」
口を揃えておやすみなさいませ、と頭を下げて寮長に挨拶をする1年生たち。…入学初日にこんなことさせられるなんて、なんて可哀想なんだ…。
まあ、それを強制させるリドルはくっそ可愛い。
「おい、お前。」
『はい?…って、んむっ!?んーーー!!!』
「しー…。」
呼ばれた気がしたので後ろを振り返ると同時に口を手で塞がれ、私たちの部屋とは違う部屋に入れられた。部屋に入った瞬間目も塞がれたので何も見えず何も言えずで恐怖で身体がずっと震えている。すると、耳元に聞き覚えのある声が流れてきた。
「お前、女だ「ふがふがー!!!!!」…」
『!?!?!?!?』
グリムの声で最後の方はかき消されたが、よく聞こえた。
女って、言ったよね?
『んーー!!!…ぷはっ、』
❤️「ハハッ、ごめんごめん。質問したのに口塞いでたら意味ないからな。…で、女なんだろ?」
『ちが「違うんだゾ!こいつは男だ!!!」…。ありがとうグリム…。』
❤️「だったらなんでそんな動揺してるんだよ。しかも、その胸の膨らみ。小さいけど俺には誤魔化せられねえぞ。…不正入学者か。これ報告したら俺、内申点爆上がりになりそ…。」
動揺が隠しきれない。だって、だって。
推しのライブ会場に来て1番前の席になってファンサされた時みたいな喜びが、一気にぶわっと押し寄せてきた。思わず口角が上がりそうなのを抑える。目の前にいる推し、エース・トラッポラの目をちらちらと見ながら。
『ほ、本当なんです!わっ、……ぼ、僕、男なんです!胸はまあちょっと生まれつき大きめで…筋肉質なんですよ〜あはははは』
🐈⬛「そうなんだゾ!………そうだったのか?」
❤️「ふーん…。なら、脱いでみせてよ。」
『…はい?』
今、なんて言った?
今推しの口からとんでもないことが聞こえた気がする。
❤️「マジで男だったら土下座するわ。ほら、見せてよ。」
『い、いやぁ…。てかここ誰の部屋…。いつここの部屋の人が来るのか分からないのに!』
❤️「俺の部屋だからダイジョーブ。ハイハイ、脱ぎますヨー。」
『いやぁあああああああ!』
🐈⬛「カノンーーーーー!!?!?!?」