TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する


GW前日の登校日

なぜか他の委員会と比べて委員会開催数が多い文化委員。どうにかならないものかとも思うけど、とりあえずGW前の委員会はこれで最後だ。

「毎回思うんだけどさ、共有事項多過ぎ」 

「それな。今日どうする?」

「この前、私の教室に来てもらったし、今日は私がB組行くよ。カバンだけ取りに行くね」

「分かった、じゃあ待ってる」 

自分の教室へ着いて荷物をまとめていたら机の上に置いていたスマホに指が触れて、画面が明るくなった。

水島渉

【五十嵐、今日部活来ないの?】

あれ、委員会あるって伝え忘れたかな

【文化委員会あるから遅れる】 

送信してホーム画面に戻る。ホーム画面には忘れられない絵に似ている風景の写真。本物は写真撮れなかったから似てるものを探してこれにしてる。

……あれ、もしかして私って結構気持ち悪い?執着し過ぎかな?壁紙、他のもの探したほうがいいかも…画面を真っ暗にしてからカバンを持ち上げた。

B組の教室の扉を開けると自分の席で端末を見つめていた真住が顔を上げてこちらを見上げた。

「わざわざ、悪いな」

「前はますみん来てくれたじゃん」

彼の左隣の席をお借りして座り、ノートを広げてシャープペンシルを滑らせていく。

「まぁそうだけど」

「こっち側の教室にお邪魔することあんまりないから、ちょっとそわそわする」

「E組遠いもんな」

「こっちまで来ると 最早 異世界」

「異世界は大袈裟だろ」

お互いにくすくす笑いながら殴り書きの文章を丁寧にまとめていく。唐突にガラッと扉が開く音がして顔をあげる。そこに立っていたのは、昨日真住と廊下で一緒に話してた眼鏡の男の子だった。

一瞬目が合ったけど、すぐに逸らされてしまった。

「慶、持ってきたよ」

真住の元へと歩み寄る彼は1枚の紙を手に持っていた。何の紙だろう、とは思ったけど、あんまりジロジロ見るのもなと思って視線をノートへと落として手を動かす。

「ありがとう」

「まだラフの段階だけど、これをベースに進めるらしいよ」

「こんな感じか……もかっぺ」

真住に呼ばれて顔を上げると男の子が持ってきた紙を私に見せてくる。

「コンクールのチラシのラフだってさ」

「これ…」

「美術部に幼馴染がいるって前に話しただろ?」

美術部にいる幼馴染と聞いて男の子を見上げると彼も私のことを見てくれていた。眼鏡をかけてる彼の表情からは何を考えているのかが読み取りづらかった。

「昨日廊下で会ったけど、はじめまして」

「はじめまして」

私が声をかけると目を見つめたまま爽やかな声色で言葉を返してくれた。目線を逸らされてばかりだったから何だか嬉しくてそれだけで顔が綻ぶ。

「私、ますみんと同じ中学だった五十嵐友香っていいます」 

「慶から聞いてる。僕は瀬南亜貴(せなみ あき)」

「瀬南くん、よろしくね!」

「こちらこそ、よろしく」

‘僕’かぁ…私の周りの男の子はみんな’俺’だったから何だか新鮮に感じる。私の目を見つめ返してくれる彼の目に会話を続けてもいいと言われてる気がして言葉を紡ぐ。

「これ、瀬南くんが描いたの?」

「これは先輩が描いたもの」

「そっか、文字の構成考えなきゃだから持ってきてくれてありがとう」

3人で会話を進めて次回のチラシの文字構成提案について話し合った。瀬南くんは人見知りっぽいし大丈夫かなと思ったんだけど、結構はっきりものを言うタイプで私には皆無な美術センスある意見を言ってくれた。

「こんなもんか」

「次回、佐藤先生に聞かれてもちゃんと答えられそう」

構成案を練れたので次回の委員会で問い詰められてもどうにか答えられそうだ、良かった。

「瀬南くん、色々提案してくれてありがとうね」

 「別に、大したことしてない」

声はすごく爽やかなのに物言いがめちゃくちゃツンケンしてる…これが彼のスタンダードなのかな。

「亜貴、部活大丈夫か?」

「うちは個人主義だから大丈夫」 

あ、部活…

「瀬南くん!」

「何?そんなに大きい声出さなくてもちゃんと聞こえてるけど」

これは、私にとってものすごく大きなチャンス。美術部の知り合いが1人もいない私にとってありがたい繋がり。

昨日今日会ったばかりの人間だし、断られるかもしれないのは重々承知だけど、次にいつ瀬南くんに会えるかは分からない。

「あの、美術部見学させてもらえませんか」

「は?入部希望?」

「あ、いや…私絵のセンスは皆無なんだけど」

「じゃあ何で?」

「……探してる人がいるの」

拒否されるかもしれないと思ったけど、彼は私の表情を少しばかり見つめると必死さが伝わったのかため息混じりに口を開いた。

「誰を探してるの?」

「あ…名前も顔も分からなくてこの学校の美術部に必ずいるとも限らないんだけど…」

「何それ、全くヒントもないのにそんなの探せれるわけないじゃん」

「会える方が難しいのは分かってる。それでも、その人に会える可能性が少しでもあるなら私は諦めたくないの。お願いします、見学させて下さい!」

約半年前に私の心を揺さぶった絵。忘れられないあの絵を描いた人に一度でいいから会いたい。深々と頭を下げてお願いをする。

「ちょっとやめてよ、顔上げて」

その言葉に従って顔を上げると、彼は言葉を探しているのか視線を彷徨わせてから私に目を向けた。

「1つ、聞かせて」

「何?」

「どうしてそこまでして会いたいの」

「今まで生きてきた中で1番私の心に強く響いたものを生み出した人なの」

瀬南くんは黙って私の言葉を聞いてくれている

「出来ることなら自分で探し出して’ありがとう’と’あなたの絵が好き’って直接伝えたいから」 

そこまで言うと瀬南くんは目を伏せて黙り込んだ。そして少し間を空けてからゆっくり口を開く。

「よく恥ずかしげもなく’生きてきた中で’とか’1番強く響いた’とか言えるね。これから先もっと良い作品に出会えるかもしれないのに」

「未来のことは分からないけど、私が今1番好きだと断言出来る絵であることは変わらないから」

瀬南くんの目を真っ直ぐに見つめて訴える。一切目を逸らさない私に呆れたのか瀬南くんから大きなため息が溢れた。




loading

この作品はいかがでしたか?

16

loading
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚