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──映画の内容は、主人公の軍人の男性が、ヒロインの女スパイを追っているうちに親しくなってしまうが、二人の仲を上官に知られ、不祥事に目をつぶる代わりに彼女を殺すことを命じられるというストーリー展開だった。
愛があろうと上官には逆らえない軍人の彼は、彼女を銃で撃とうとするが、やはり殺すことまではできずにいると、彼女の方がその銃を奪い、自ら死ぬと見せかけた後に、愛していたはずの彼を撃ち殺してしまうという、どんでん返しな結末になっていた。
ラストシーンで、ヒロインの彼女が、息絶えた彼に向けて、
「女は、愛だって偽れるのよ。なのに本気になるなんて、バカよね、あなたは……」
そう呟き、本当に彼のことを愛していたのかどうかはわからないまま立ち去ろうとして、一筋の涙を流すアップで幕を閉じた。
「……重たくて、哀しい結末でしたね」
エンドロールが流れる中で、こぼれた涙を拭おうとすると、彼が取り出したハンカチで、私の目元をそっと押さえた。
「あ、ありがとうございます」
「いいんだ、とても切ないストーリーだったな」
彼に頷いて、小さく鼻を啜り上げる。
「私は、貴仁さんに対して、絶対にあんなことは……。たとえ自分が死んだって、それであなたが救われるなら……」
すっかり役に入り込んで話した後で、急に恥ずかしくなってうつむいた私に、
「ああ、私も同じだ」
彼が、ふっと優しげに口角を上げ、そう一言を返した。
「……私なら、現実であろうとなかろうと、必ず君を守るから」
高ぶった気持ちに真摯に応えて、身体を包み込むように回した手で、彼がなだめるように私の背中をぽんぽんと軽く叩いた。