テラーノベル
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女風、つまり女性用風俗という意味だ。
ただ一つ言いたいのは、最後までは絶対しない。大体のお店での決まりであり、だからこそ勇気を出せた。
流星は私より二つ年上の二十七歳。ドS王子と呼ばれるほど口調は荒く、お店のナンバー2らしい。
「一夜の恋人」は店名通り、一夜を共に過ごすコンセプト。他の店は何時間とか泊まりとかを指定出来るらしいけど、ここは泊まりのみの仕様となっている。
「メールで言ってた通り、彼氏の浮気だって」
「ふーん」
目を逸らす私を逃さないと言いたげな瞳で見つめてきて、思わずペットボトルの蓋を強く締めていた。
一夜の恋人は、事務所経由での予約と、セラピストに直接予約が取れるのと二通りある。私は事務所に連絡した後にメルアドを教えてもらい、本人に連絡して予約を取った。同じ女性として、男性をレンタルするなんてどう思われるかと考えてしまった。
食べ終わったカップを、当たり前のようにコンビニのゴミ箱に捨ててくれる。ベンチに戻ってきた流星は、あえて真ん中に置いて空けておいたペットボトルを私の膝上に置き、真ん中に座ってきた。
距離が近い。私は少し体を引くが、彼はまた詰め寄ってくる。立ち上がろうとした瞬間、手を握られた。
「彼氏が居るのに、男慣れしてないな? ……他に理由、あるんだろ?」
「か、関係ないじゃない!」
振り解こうとしても力強く、空いた方の手を振り上げると、彼はその手もパシッと掴んできた。
「俺はセラピストだから関係あんだよ。莉奈のようなタイプは女風とか利用しない。よほどの理由だろ?」
真っ直ぐに私に向ける視線に、私はまた目を逸らしてしまう。
見透かされるのが怖くて。 本当の理由を知られてしまいそうで。
「彼氏は本当に居たの! ……大学の時、だけど」
目を逸らした先には、キャンパス付近に聳え立つ小山。暗闇でその影すら見えず、彼との思い出みたいに真っ暗だった。
「……じゃ。次、行くか?」
聞いてきたくせに話を切った彼は、私の手を握ったまま歩き出す。
「え、またどこか行く気なの?」
「始まったばかりだろ?」
光に照らされた場所から、再び闇の中へ。
私は、彼という灯りを頼りに、また一歩を踏み出した。
残り二時間五十分、空はまだ暗い。
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