テラーノベル
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翌日、いつものようにキーボードを叩きながら仕事をこなすが、流石に寝不足が堪えてきた。口の中で欠伸を噛み殺し、周囲に悟られないよう背筋を伸ばす。
モニターを見つめる視界の端に、ふと人の気配を感じた。
「朝比奈さんちゃんと寝れてます?」
私の顔を覗き込むようにして声を掛けてきたのは、年齢が2つ下の男性社員、クリエイティブ局のアートディレクターである|堤《つつみ》 |蒼汰《そうた》くん。
私が異動してきた初日に案内役をしてくれて以来、何かと気にかけてくれる。
「うん、大丈夫。ありがとう」
「何か手伝える事ありませんか、こっちに異動してきて大変ですよね」
相変わらず、距離感の近い親切心。それに甘えて、手元のファイルを差し出した。
「じゃあ、ごめん。ファイル整理だけお願いしても良い?」
彼は笑顔で快く受け取ると、自分のデスクへ戻っていった。頼りになる部下がいるのは、素直に助かる。
異動して間もないこともあり、昼休みは街の開拓を兼ねて外でとることが多かった。
そんな私の散策を含めたランチに、大抵、堤くんが付き合ってくれる。
「朝比奈さん、ご飯行きませんか」
「そうね、お腹減ったし」
この周辺に詳しい彼は、いつも外れのない店へ連れて行ってくれる。近頃は、この時間が楽しみになっていた。
「今日は、どこ行く? 前に一度行ったお店にもう一度行くのもいいわね」
堤くんがスマートフォンで候補を探し始め、二人で画面を覗き込みながら会社を出ようとした時、ポケットが長く震えた。
スマートフォンを取り出すと、画面には雅の名前が表示されている。
「あ、ごめん。ちょっと待って」
昼時に連絡もなしに掛かってくるのは珍しい。
堤くんに断りを入れ、通話ボタンを押した。
「何よ、急に電話なんて」
『今何してんの』
受話器越しの声は、あからさまな寝起きだった。
いつもならまだ眠っているはずの時間なのに、電話を掛けてくるなんて何かあったのかと首を傾げるが、今は堤くんを待たせている為、あまり時間の猶予がない。
「今からお昼なのよ、今日は部下とこれからご飯だから時間なくって」
手短に切り上げようとした私に、雅は引くどころか、わずかな沈黙を置いてから『……男?』と問い返してきた。
普段、そんなことを確認するような人ではないから、不意を突かれた。
「男って、ただの後輩よ」
そう答えたタイミングで、堤くんから「朝比奈さん、行きましょう」と声がかかる。私は手で小さくOKと合図を送った。これ以上長引かせれば、彼の休憩時間まで削ってしまう。
「じゃあ、電話切るからね」
『……本当、お前がそんなただの会社の人間だとか、ただの友達だって誰でも受け入れてるから周りの男勘違いすんだろうな』
「え?」
言葉の意図が掴めず聞き返したが、返ってきたのは『別に、他の男とのお食事楽しんで』という、あからさまな皮肉だった。
そのまま一方的に通話が切れる。
耳元に響く切断音が、今度はひどく不快に感じられた。
理解が追いつくにつれ、じわじわと頭に血が上る。
前触れもなく掛けてきて、勝手な言い分を投げつけて、こっちの言葉も聞かずに切るなんて、なんなの、あの男は。
「朝比奈さん? 大丈夫ですか?」
「あ、うん。大丈夫」
堤くんとのランチにこの苛立ちを持ち込むわけにはいかないと、無理やり笑顔を作って前を向いた。
さっきまで楽しみにしていたはずのランチのことなど、どうでもよくなり、雅の事で頭がいっぱいになった。
コメント
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# 感想 堤くんいいヤツすぎて、ランチ楽しみにしてる朝比奈さんがかわいい〜!なのに急に寝起きの雅から電話きて「男?」って嫉妬するとか待ってよそのギャップやば😭💕 普段クズなのに一方的に切るあたりがもうクズ全開だけど、それだけ朝比奈さんのこと気になってるってことだよね…?続きが気になりすぎる!!
まなこ〜友
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#ますしき
T
5,800