「ちょっと、離してよ!挟まれるでしょ!?」
絶対に離さないと目で訴えると女は苛立ちながら私の後頭部に手を回し、ぐしゃりと頭皮に爪が食い込みそうなほど力を入れ、頭を無理やり固定した。
周りにいた外国人や日本人は焦った様子で視線を頻りに泳がせているだけだ。
「離しなさいよ!!!!!!!」
”出発するのでドアから離れてください!!!”
駅に響き渡る駅員の声。
喉が潰れそうな声で必死に叫んだ。
「うっさいね!!!!!黙れ!!!!」
他人の貴重品をホームに落としといて黙れ??
涙が止まらなかった。何がなんだか分からない。
その時、舌打ちとともにその女は私を乱暴に引き剥がしたため、私は奥の扉に思いっきり胴体を打った。
「っぁ!?」
’’閉まりまーす!!!!!!駆け込み乗車はご遠慮ください!!!’’
そのまま逃げ出すように閉まる扉とともに逃げ去って行った。
頭がガンガンしている。つま先に至るまで痛みがズキズキしている。恐怖で全身が悲鳴をあげ、力が抜けていくせいでうまく立てず、その場でへたりこむ。
こんな大事件になってるというのに、この場に残っている乗客は皆見て見ぬふりだ。修羅場だな〜ぐらいに思っているのだろう。
ああもうどうしてこうなっちゃったんだろう。。このままさっさと地獄に行きたい。
意識が遠のき、視界も揺らいでいる。
社内で意識を手放しそうになった私の目の前にいきなり、青年が現れた。私の推しより少し明るいターコイズブルーの瞳。
私は片膝をつき、何かを呼びかける青年を前に天才ミッドフィルダーの名前をかすれた声で呟き、意識を手放した。
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