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#独占欲
#ダークファンタジー
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——鈴木さんの受け持ってた案件らしいんですよね
「噂になってる渦中の件、重大な違反が発覚したらしいんですよ」
「鈴木さん、今出社していないみたいです」
「自宅謹慎になってるらしいですよ」
——重大な違反?
あの
大人しそうな鈴木さんが?
正直驚いた
そういえば……
先日の同期女子達とのランチの時
鈴木さんは不在だった
あの時は
購買部全体として調べられていると思っていた
そして
あの時の
神崎さんの反応
何か知っている風な感じだった
コンプライアンスは法務部の管轄
法務部の神崎さんは
何か知っていたのだろうか
一体
鈴木さんは何をしでかしてしまったのだろう
購買部の事など何も分からない私が
考えても分かるはずもない
漠然と
ただただ驚いていた刹那
ふと
脳裏を過った
(そういえば……)
先日の
突然の母親の来訪
母親にバレてしまった
私の昇進と昇給
そして
純也にバレてしまった
実家に帰っていたという嘘
あの日
私が外泊して帰らなかった日
実家になど帰っていなかった
咄嗟についてしまった嘘が引き起こした
困窮する事態と
突然の母親の来訪
重なり合った不慮の事態に
極度の緊張に駆られ
過ちの許されない繊細な回答に迫られ
あの状況を切り抜けるのに必死で
忘れていた
あの時
——何故純也が自宅に居たのだろう
という疑問
平日の
あんな時間に純也が自宅に居る事など
どう考えても不自然だった
遅くなる事は日常茶飯事なれど
早く帰宅する事など
ついぞ見たことが無い純也がだ
もしかして……
——純也も何らかの処分を受けて自宅謹慎中だった?
取引先一覧には
純也の会社の名前はあった
もしも
弊社と純也の会社との間に現行で取引があり
弊社担当の営業が純也で
弊社側窓口の購買担当が鈴木さんだったとしたら
それなら
二人が知り合う切っ掛けにもなり得る
そして
二人の間に
何らかの不正があり
二人に
何らかの処分が下されたのだとしたら
そう考えると
妙に……
腑に落ちてしまう
辻褄が合ってしまう
私は
妙な胸騒ぎがした
***
その日
私は早めに退社した
先日の休日出勤で
業務負荷は正常に戻せた
残業する必要も特段無い
定時に打刻し
会社を後にする
自分の妄想が
自分の予感が
合っているのか確かめたかった
純也は今日も
家に居る気がしてならない
でも
もし居たら
いつもよりも長く
気まずい時間が増すだけ
私にも後ろめたい事がある
変な話を振られないかも不安
確認したい欲求と
確認した結果がもたらす不安で
気持ちは複雑だった
いつも通りスーパーへ寄り
食材を買い出し自宅へ向かう
そして
自宅玄関の前
鼓動の高鳴りと共に
ドアノブに掛けた手が震え
ドアを開ける事を躊躇する
一瞬躊躇うも
ここまで来たら進むしかない
勇気を振り絞り
ドアノブを回し
ドアを開ける
ガチャ……
恐る恐る開けたドア
隙間から覗く玄関の靴
——純也がいる
私の予感は的中していた
という事は……
純也も何らかの処分を受けたのだろうか
その予感も合致しているのだろうか
靴を脱ぎ捨て
普通を装い
何食わぬ顔でリビングへと向かう
「……」
「ただいま」
純也は
相も変わらず定位置のソファで
相も変わらずスマホを触っていた
純也を尻目に
上着を脱ぎ
キッチンへ向かい
買い出した食材を置く
「早かったね、今日」
普通を装い
何食わぬ会話を投げ掛けてみる
も、
反応はなく
返事もない
とは言え
普段通りのいつもの事
そのまま夕飯の支度へ取り掛かる
と、
会話の流れなど無視した様に
純也が口を開いた
「あの日さあ、本当に同僚のとこ泊まったの?」