テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「黙って見守る。それが兄ってもんだろ」― ジンの視点 ―
俺は、最初から知っていた。
キム・ミンジュが“普通のマネージャー”じゃないってことを。
それは嗅覚とか、勘とかじゃない。
長く生きてきた“Dom”としての、本能だった。
空気の抜き方。
距離の取り方。
立ち入りすぎず、引きすぎないバランス。
──「あ、この子は、ただ者じゃないな」って。
けど、口には出さなかった。
俺の言葉でバランスを崩すのが怖かったから。
それに、あの子は必死だった。
何かを隠すように、誤魔化すように、でも誰よりも誠実に働いていた。
だから俺は、見守ることを選んだ。
ジョングクが戻ってきた日。
その空気が、ガラッと変わったのを、誰よりも早く感じたのも俺だった。
「やばいのが来たな……」
SSクラス。
それは、Domとしての“最上級”であり、支配の極み。
それでも、グクは変わっていなかった。
素直で、真っ直ぐで、どこか不器用なままの“末っ子”だった。
ただひとつ──ミンジュを見る目が、違っていた。
それは、俺も知っている目だった。
誰かを求め、許しを乞うような、
「救われたい」と願う目。
……そして、ミンジュもまた、
いつかの“無表情”ではなくなっていた。
怖がっていた。怯えていた。
でも、その奥にあったのは、“本音をぶつけたい”という強さだった。
俺は、Domとして長男的な立場にいるけど、
支配するつもりなんて最初からなかった。
BTSは、「自由な7人」が集まってできたものだから。
そして、ミンジュが来て「8人」になった時、
俺はまた、違う家族を得たような気持ちだった。
最後にあの子が消える時、何も言わなかった。
言えば、止めてしまう気がした。
止めれば、あの子たちの“選んだ未来”を壊してしまう気がした。
だから、ただ伝えた。
「好きなように生きろ。
戻りたくなったら、いつでも帰ってこい。
……お前は“家族”だ。どんな形でもな」
──今、BTSは解散していない。
でも、確実に“変わった”。
新しい音楽、新しい形、新しい関係性。
その真ん中に、“彼らがいたこと”は確かなんだ。
時々、グクから連絡が来る。
「ジンヒョン、今日生まれた子が立ちました!」
「おまえそれ最高かよ、動画送れ」
そんなやり取りの中で、俺は安心する。
あいつは、救われた。
そして、ミンジュも。
俺たちは、今も兄弟だ。
家族だ。バースなんて関係ない。
──それを見届けるのが、“兄”としての役割だと思ってる。
⸻
【End:ジン視点】