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その夜、人気の少ない路地裏にある、6人の“たまり場”に久しぶりに全員が顔をそろえた。
昼間は誰も寄りつかないような古びたビルの屋上。だが、彼らにとっては誰にも邪魔されない、安心できる居場所だった。
「ひっさしぶりだよね? 全員そろうの!」
こさめがピースサインを掲げてにっこり笑う。
「集まれって言ったのお前だろ」
いるまが肩をすくめながらも、どこか嬉しそうだった。
それぞれが好きな場所に腰をおろし、缶ジュースやスナック菓子を片手に、ゆるい空気が流れる。
みことはすちの隣。自然に並んで座っていた。
けれど──
その”自然”が、今日のメンバーには妙に引っかかった。
「なぁ、なんかさぁ……すち、今日めっちゃみことに優しくない?」
ぽつりとひまなつが言うと、すぐにこさめが「うんうん!」と乗っかった。
「ていうか、距離近いよね!? ほら! もうちょっと左行ってみてよ、あ、ほら、腕ぶつかってるし!」
からかい全開の笑顔で、こさめが指差す。
「……っ!」
みことは真っ赤になった顔を、咄嗟にすちの肩に埋めた。
「わっ……みこと……隠れられても……」
それでもすちは、戸惑いながらも微笑んで、そっとみことの頭に手を添えた。
「かわいいね」
小声で囁かれ、みことの耳まで真っ赤になる。
「え!? なになに!? 今なんて言ったの!? すち、反則~!」
こさめが笑いながら近づいてくる。
「だーっ! こさめちゃん、やめてっ……」
みことがさらにすちの背後に隠れようとし、すちはそんなみことを優しく背中でかばった。
らんはそんな様子を苦笑しながら見ていたが、ふとこさめの髪を撫でながらぼそり。
「……まぁ、やっと付き合ったんだから、からかいすぎんなよ。みこともやっと笑うようになったんだし」
その一言で、ひまなつもこさめも、ハッとしたように黙り込む。
「……うん。ごめんね、みこちゃん」
こさめが素直に謝ると、みことはそっと顔を出して「……ううん、大丈夫」と小さく笑った。
すちの手が、静かにみことの背をさする。
その温かさに、みことの心もほんのり温かく染まっていった。
夕焼けに染まる空の下、6人の時間は穏やかに流れていく。
きっと、誰より大切な“仲間”という絆を確かめ合いながら──
その中に生まれた“恋”も、ゆっくりと深く根を張り始めていた。