⚠あてんしょん⚠
・曲パロ(『泥の分際で私だけの大切を奪おうだなんて』)です
・knmcが可哀想なまま終わります
・mb女がいますがmb女は喋りません
・gkとmb女要素あり
良い小説ライフを
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ずっと『ごめんなさい』を言いたかったんだ、と彼に伝えたなら、まだ彼と共に過ごせていただろうか。
まだ僕に、チャンスはあったのだろうか。
今の僕にはもう、関係のなくなってしまったことだけれど。
︎︎⟡
僕は十六歳を永遠に繰り返している男子高校生の剣持刀也である。
周りは卒業して就職していくにあたって、僕は変わらず男子高校生のままなのだ。
変わらない校舎、変わらない日常、変わらない校則、変わらない通学路…。
変わるものといえば、同級生や先生ぐらいだろうか。皆、一年経ってしまえば僕の事など忘れてしまう。そこが僕にとって好都合なのだが。
時の流れは早いようで遅い。僕にとっては特に。
そんな平凡な日常を変わらず過ごしていた時。新たな二年生として入ってきた奴らの中に、ずば抜けて興味のある奴がいた。
『伏見ガク』という男だ。
よく笑い、よく食べ、よく喋り、よく寝て、よく怒られている。
驚いた。僕が見てきた奴らは言われたことを何となくやり遂げ、将来のこともぼんやりと考えながら卒業していっていたのに、伏見ガクという男は他の奴らとは違うらしい。
自分の意思をしっかりと持ち、尚且つ相手の配慮まで欠かさない。将来の夢は大きく、色々なことに挑戦し、自分で自分の道を切り開いている。
羨ましいな、と思ってしまった。
永遠と十六歳を繰り返す僕とは違って、伏見ガクは成長し、自分のやりたい職業に務めた後もきっと、道を増やすための努力を欠かさないだろうな。
…なら、僕はどうなのだろう。
只々ぼぅっと時が過ぎるのを待ち、何の努力もせず、受け身になっている僕。何が楽しいのだろう。どうして耐えられるのだろう。そう思ってしまう。
だって、伏見ガクの人生なんて楽しそうだから。カラフルで、色んな失敗を繰り返すからこそ、人は成長し、努力が身を結んでいく。
身を結ばない時だって諦めず、どうにか自分の夢まで手が届くように最善の手を尽くしているではないか。
僕は自然と、ガクくんの元へと駆け寄っていた。
︎︎⟡
「とーやさん!早くしないとパン無くなっちゃうっすよ!」
「わかってますってば!!」
はぁはぁと荒い息を繰り返しながら、ガクくんの前で膝に手をつく。
コイツ、周りに気配りができるくせにこういう時だけ置いていくんだよな…。
「全く、とやさんは油断しすぎなんすよ!購買って所謂戦地なんですよぉ!?」
「はいはい。その話聞き飽きたってば」
「聞き飽きたって…。パンが買えてるのもオレのおかげっすからね!」
「はーい。…あ、おばちゃん焼きそばパン一つで」
「ふたつっ!ふたつでっ!!」
「んふ、うるさぁ笑」
「オレも食べるのわかって言ったでしょぉ…?」
「なんの事だか」
僕はあの後、伏見ガクと仲良くなった。
一見チャラそうに見えるが、意外にも僕と相性が良く合っており、割と直ぐに仲良くなったのだ。
ガクくんが積極的に話題を振ってくれたこともあるが、今では親友と呼べるほどの仲になった。
伏見ガクという男を知れば知るほど気になってくるものが増えていく。
ガクくんのことをもっと知りたい。みんなの知らないガクくんを僕だけが知りたい、と次第に思うようになった。
誰にも邪魔をされたくない。僕だけの、僕だけに優しいガクくん。
僕といる時だけ、みんなとは違う笑顔を見せてくれるんだ。だから、ガクくんは好き。
きっと、これはただの友情なんかじゃないと思う。だけど、僕は己の気持ちを否定しない。
ガクくんが好きなのには、変わりないから。
︎︎⟡
……まただ。また、女と絡んでる。
…ガクくんもガクくんでデレデレしちゃってさ。僕がいるのに、なんで気づかない訳?
僕だけの笑顔だと思ってたのに。他にもホイホイするなんて。しかも女に。
ガクくんが女と絡んでいるところを見ると、モヤモヤする。
これは、嫉妬なのだろうか。
「…あの人、ガクくんのこと好きなんだろうなぁ」
無意識に出た言葉だった。
ぼーっと仲の良さそうな二人を見ていたら、そんな言葉が出てきてしまった。
ふふ、と笑みが溢れる。
ガクくんは僕だけのものなのに。所詮泥の分際のくせに。
泥の分際で、僕だけのガクくんを奪おうだなんて。
地面の上這って見上げることしか脳がないくせに。
可哀想なひと。ガクくんに振り向かれることも無いまま、恋を終わらせちゃうんだなぁ。
絶対に奪われることなんてない。そんな余裕から出た笑みだった。
︎︎⟡
あれから本格的にアピールをしてみようと思った。
僕はずっと受け身だったせいで、アピールなんてどうしたらいいか分からなかったけど、何となくでやってみた。
ちょっと無口になってみたり、目を合わせなくなったり。
それで気づいてくれるかなって。ちょっとはムズムズしてくれるかなって思った。
鈍感すぎる君に酔ってるんだ。
距離を取ってみたり、下手くそながらも逆に甘えてみたり。
でも、全然伝わることはなくって。だからといって、嫌われる選択肢なんて取りたくなかった。
ただでさえ同性であるのに、これ以上グイグイいって気持ち悪がられるのだけは勘弁だった。
僕のアピールが始まった時から、強く、酷くガクくんに期待をしていた。
少しは気づいてくれるかな、とか。なんでまだあの女と楽しそうなんだ、とか。
想えば想う程に荒立ってさ。
全部、あの女のせいだって思うようになったんだ。
でも、泥の分際のくせにガクくんに近寄るからいけないんだよね。
僕の大切を奪おうだなんて。憎たらしい。
「とーやさん!…話聞いてますぅ?」
「ぇ、ああ。聞いてるよ、うん、聞いてる」
「ほんとぉ?」
「ほんとほんと笑」
「それならいいんすけどぉ…」
僕は不老で不死だ。だから死ぬことは無い。
例え車に跳ねられても、銃口で頭を撃ち抜かれても。
でも、アイツは期限付きの生を有難がるしか脳がないはずなんだ。
車に跳ねられたら簡単に死んじゃうし、銃口で頭を撃ち抜かれたら死んでしまう、所詮脆い生き物。
「ふふ」
「…?今笑うとこだったっすか?」
「うぅん?ただ、表情の喜怒哀楽が激しいなって思って」
「なっ、表情は別にいいでしょぉ!?話聞いてたんすか!!全くもう!」
「ごめんってば。笑 ちゃんと聞いてるよ」
危ない危ない。ガクくんにこの醜い感情がバレてしまうところだった。
…ツキン、ツキン……ツキン…
時々、胸が苦しくなって、痛くなる。
嗚呼、嫌だな。あの女のせいで、僕まで醜くなってしまうじゃないか。
折角、ガクくんが綺麗で何一つ汚れのない『翼』だと言ってくれたのに。
ツキン、ツキン…ツキンツキン……
どこかが痛むが、気のせいだろう。
気のせいだ、気のせいだ。
︎︎⟡
なんで、なんであの女ばっかり構うの?
僕だってガクくんの大切でしょう?だったらあの女なんていらない。あの女の存在ごと消してしまおうよ。僕とガクくんで。
だって、だってだって!!
ガクくんだって僕の事好きでしょう?そうじゃなきゃ一緒にいてくれないじゃん。
あの女に付き纏われて、本当は困ってるんでしょう。助けてあげる。僕は優しいから。
「ガクくんはお前のことなんて好きじゃないよ」
「ガクくんが可哀想だから付き纏うの辞めてくれないかな」
「ガクくんは優しいからお前と仲良くしてあげてんの。あんまり調子に乗らない方が可哀想な奴にならないんじゃない?」
「ガクくんは僕だけを愛しているから。お前なんて眼中に無いから。無いはずだから。」
今まで溜まっていた分を、すれ違う度に耳元で囁いていく。
僕と通り過ぎる度、ビクビクしていてとても面白い。僕がおろそしくなったかな。可哀想に。
ガクくんにも愛されず、誰にも愛されなかった可哀想な女。
思わず笑みが零れてしまいそうだ。
強く、甘く期待して。二人が笑えば笑うほど苛立って。
でも、それは全部アイツのせいなんだもんね。
ガクくんはなんにも悪くないよ。悪いのはアイツだけ。アイツとなんて仲良くしなければいいのに。
ガクくんも学習しないなぁ。全く。
僕がここまでしてあげなきゃ、離れてくれないのかな。
︎︎⟡
今更、『ごめんなさい』なんて言う気にならない。
言おうと思えるほど、僕はガクくんへの愛を捨てていない。
ガクくんの隣を歩くのは、いつだって僕だけの特権だと、疑ったことないから。
なのに、泥の。泥の分際で僕だけのガクくんを奪おうだなんて。
地面の上這って汚らわしいのにガクくんのことを可愛がらないでよ。
ガクくんの頭を撫でないで。ガクくんもアイツの頭なんて撫でないで。僕だけを撫でていてよ。
ガクくんの大切は、僕だけじゃないの?
ねぇ、見てよ。この僕を。
貴方が褒めてくれた、綺麗な翼だよ?綺麗でしょう?
「刀也さん、今までこの子にしてきたこと、全部聞いたぜ」
「信じられねぇよ。刀也さんがそんな奴だったなんて」
なんで?なんで?どうして?
ガクくんだって迷惑してたでしょう?どうして今更そんなこと言うの?
嗚呼、隣に並ばないでよ!ガクくんにまで醜いものが移っちゃうじゃん!!
怒りでどうにかなりそうだった。
肩なんて取っちゃってさ。ガクくん、僕にだってそんなにした事ないくせに。
女にばっかりデレデレしちゃって!!
「…なんで、なんで、?」
「…?なにが…」
「なんでっ!なんで泥の分際が選ばれて!僕が!今までずっとそばにいた僕が選ばれないの!!」
「…泥って……アンタ、」
「だってそうじゃん!!…嗚呼、そっか。絶対アイツのせいだよね。ガクくん。何かの間違いなんだよね、こんなのは」
「…」
「ね、今ならまだ間に合うよ。あの女に何を唆されたの。教えて?ねぇ、ガクくん」
「…刀也さん、アンタ最低だな」
一瞬、視界がグラついた気がした。
あれ?今って現実?それとも夢?……性格の悪い夢だなぁ。早く覚めて欲しいよ。
遠くから、『行こう』という声がする。
待って、待ってよ。お願い。ごめんなさい。今なら謝るから。許して…。
「ぁ……ガク、く……ね……ごめ……なさ…」
僕の声なんて届かない。それほど早く進んで行っている。
僕は、あの二人とは真逆に、堕ちていく。地獄のどん底へと、グングンと。
『本当に愛してる』という言葉は、唾液と共に飲み込んだ。多分、今言っても伝わらないから。
僕だけの貴方を、愛しているよ。本当に、愛してるんだよ。
未練、未練、未練____
「未練しか残らないこんな結末を、反逆者として背負っていかなきゃいけないんだね」
窓から吹いてきた風が嗚咽が響く教室へと入り、僕の湿った頬へと嘲笑うようにかすっていった。
真っ白で綺麗だった僕の翼も、気づけば真っ黒に汚れ、ボロボロの翼で見るに堪えない姿になっていた。
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