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「誰も俺なんか狙ってないって。常日頃からおまえにしか狙われてないよ、安心しろ」


淡々と説明しながら玄関の電気をつけて靴を脱ぐと、それに合わせて宮本も靴を脱ぎ、橋本に引きずられてリビングに到着した。


「電気、電気っと」


スイッチに手を伸ばしかけた瞬間、宮本の手がそれを止めるように握りしめる。


「雅輝?」

「陽さんわかってない。自分がどれだけ男前なのかってこと。狙ってるのは俺だけじゃないはずですって」


カーテンをしていない大きな窓から月明かりが入り込み、ふたりを優しく照らし出す。青みがかったほのかなその明かりは、真剣みを帯びた宮本の顔を格好良く照らしていて、橋本の胸の内がじわりと熱くなった。

宮本は掴んでいる橋本の手を自分の首にかけて、向かい合わせになる。


「陽さんのお客さんに見せつけたいな。俺とのお揃いの指輪」

「なにを言って……」

「俺のだって見せつけたいんだ。わかってよ、それくらい!」


唇を尖らせて喚く宮本に、橋本は眉根を寄せながら渋い表情をあえて見せつける。


「おまえ知らないのか? ごく一部だけどこの世の中には、人のものを横取りしたがるヤツがいるんだぞ」

「それってどういう――」


宮本はさきほどまでの苛立ちを消し去り、目をパチクリさせつつ首を傾げた。


「人のだからという理由だけで、手を出したがるヤツがいるってことさ。言葉巧みに狙った相手を誘って落としたときの快感や、誰かから奪ったっていう支配欲を満たす感じって言えばいいか。相手の恋人が自分よりもイケメン、もしくは美人だったりしたときは、ソイツに勝ったという勝利感も得られるってわけ」


橋本から告げられた内容に顔を歪ませながら、本心を告げる。


「なんか、えげつない……」

「というわけで、指輪をしてパートナーがいることを、わざわざ見える形でアピールしている雅輝くん。レアリティを自ら晒していることについて、少しくらいは注意をしてほしいんだけどさ」


どこか嬉しげに瞳を細めた橋本に、「むぅ……」とひとこと呟きつつ、頭にひらめいたことを口にしてみる。


「それだったら俺よりも、キョウスケさんのほうがヤバくないですか? イケメンで既婚者なんだから、めちゃくちゃ狙われるでしょ!」

「確かにな、それは一理あるけど……って今はおまえの話をしてるんだ。恭介のことは放っておけ」


宮本の弾んだ声を聞いて、橋本はうんと嫌そうな表情を浮かべた。


「キョウスケさんのこと、心配じゃないの?」


目の前でなされる橋本の態度に、きょとんとするしかない。


「恭介よりも、おまえのほうが心配だから言ってるのに! ただでさえネコに見られるおまえがぼーっとしてるだけで、横から取って食われちまうぞ!」

「陽さんわかってるでしょ、俺の反射神経。取って食われる前に逃げますよ。それと誰かに何を言われても、俺はきちんと断ります。だって陽さん一筋だから」


説得力ありまくりの宮本の言葉に、橋本がうっと何かを飲み込んだ。


「陽さん?」


傾げていた首をもとに戻し、橋本の顔をじっと見つめて様子を窺ってみる。薄暗がりだったが、目の前にある頬が赤く染まっているのが見てとれた。


「陽さん、俺は陽さんを愛しているから安心してください。この気持ちはけして変わらないし、陽さん以外、誰も好きにならない。永遠に誓うよ」


このタイミングは押し時だと悟った宮本は、左手の指輪を見せつけて、ふわりと微笑みを湛えた。


「おまっ……ズルいぞ。俺の口撃をうまいこと回避しやがって、クソガキが!」


垂れ下がった目尻や口角の上がった唇が宮本の気持ちを如実に表していて、橋本の頬がさらに赤く染まる。


「そんなクソガキのことが、好きで堪らないくせに」

「好きなんかじゃ足りねぇよ」


宮本の首にかけられている橋本の腕に力が込められて、互いの顔がぐっと近づいた。


「なぁに? 陽さん」


あとちょっと近づけばキスができる位置にあるのに、宮本は甘ったるい声で返事をしながら、引っ張られる力にわざと抗う。


「抵抗すんなよ」


見せつけている宮本の左手を握りしめ、躰ごと自分に近づけさせようとした橋本。宮本は引き続き反発する。


「雅輝、このタイミングで意地悪を繰り出すなって」

「意地悪したくもなるよ。だって焦らせば焦らした分だけ、陽さんが熱くなるのがわかるから」

「ドS……」

「陽さんの手、さっきよりも熱くなってる。きっと躰の奥も、同じようになってるよね。俺を欲しがって、疼いているでしょう?」

「疼いてねぇよ、ふざけんな」

「素直に認めないとあげない」


はじめのうちは、互いの腕力が拮抗していた。しかし長期戦になると宮本に分があり、橋本が寄せた躰の距離がじりじりと離されていく。


「雅輝っ!」

「俺がほしいんでしょう?」

「ほ、ほしい……」

「なにしてほしいんですか? キス?」

「してほしい」


ちょっとだけ拗ねた橋本が告げると、距離が一気に縮まり、宮本の唇が強く押しつけられた。


「ンンっ…あぁっ」


橋本は鼻から抜けるような声をあげ、両手を宮本の首にかけて深い口づけに変えた。離されていた分を補うようなキスに、どんどん堪らなくなっていく。


「陽さんのキス、相変わらずエロい」

「おまえほどじゃねぇ、よ……」

「じゃあ次は、なにをしてほしい?」


感じまくって息も絶えだえの橋本に、宮本は次の指示を仰ぐ。


「いつものようにしてくれないのか?」

「いつものって、なんだっけ?」


小さく笑いながら橋本のネクタイに手をかけ、音をたててはずすと、ブレザーのボタンを丁寧に外しにかかった。


「いちいち言わなきゃダメなのかよ……」


焦らされたせいか、橋本の頭の中で宮本に抱かれている自分の様子が鮮明に流れている。そのせいで、余計に口にしづらかった。


「ちょっとだけ陥没気味の乳首を、舌先で丁寧に舐めてほじくり出したり、指で摘んで勃たせたり?」


宮本は嬉しそうに克明に語っていく。弾んだ声が妙にリビングに響き渡った。


「言うなって、恥ずかしい!」

「陽さんの代わりに言ってあげてるのに、文句を言うなんて、おかしくないですか?」

「ああ、もう! いつものように、気持ちよくしてくれよ」


焦らされすぎて頭にきた橋本は、恥ずかしさを忍んで強請ってしまった。

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