「、愛衣ちゃん?」
私服姿の愛衣ちゃんだった。タイムリーすぎて驚いた。
「こんなところでお会いできるなんて、、!!あ、あのまた写真いいですか!?」
「え、ああうん、いいよ」
4,5枚ツーショットを撮ると、愛衣ちゃんは可愛らしい笑顔でありがとうございます、と言った。
「部活帰りですか?お疲れ様ですっ」
「ありがとう、愛衣ちゃんは?」
「そこのドラッグストアに用があって、、ここの店舗でしか売ってないのがあって」
「そうなんだ、それで来たんだね」
家の最寄り駅が一緒なのかと思ったが、そうではなさそうだった。
「、、あの、、今日、学校で宇治先輩見ませんでしたか?」
「、、…宇治?」
宇治、今日は一人だと言っていた。でも愛衣ちゃんから電話がかかってきたということは、ただ宇治が一人で部活をしただけなのだろう。
電話から環境音が聞こえて、学校かも、と思ったのかもしれない。
「、、ううん、用あって美術室行ったけど、閉まってたよ」
知ったら、きっと悲しむだろう。
「そうですか、、ならいいんですけど、、 」
なら、いい。
「、、幡中先輩と宇治先輩、仲良いですよね」
「そう、かな、そうだね」
「、、、あの」
愛衣ちゃんは俯いていた。
「私、宇治先輩のこと好きで、、」
そんな気がしていた。
恋があまりわからないとごたごた言っていたのに、人の感情には察しが良い。
「なんとかしてアタックしてるつもりなんですけど、宇治先輩全然揺らがなくて、、
こんなことお願いするのおこがましいっていうのはわかってるんですけど、、 協力してくれませんか、、?」
「、、協力?」
「31日の花火大会に宇治先輩を誘ったんですけど、断られちゃって、、その、幡中先輩、宇治先輩と仲良いので、説得してもらえないですかね、、」
宇治に、愛衣ちゃんと花火大会に行くように言ってほしい、ということだろうか。
「ほんと情けないのはわかってます、ごめんなさい、、でもどうしても一緒に行きたいんです」
躊躇する理由は、どこにもないはずだ。
「うん、わかった、宇治に言ってみるよ」
「本当ですか、、ありがとうございます、、!!」
愛衣ちゃんは頭を下げた。
「じゃああの、私明後日部活なんですけど、幡中先輩も部活ありますか?」
「うん、明後日あるよ」
明後日は部活というか、夏休みの課題チェックの日だ。部員はみんなそこで課題をほとんど終わらせてから帰る。
「じゃあ、明後日の部活私休むのでその日に言ってもらえないですか?」
「休ん、で大丈夫?」
部活を休んでまで、と思ったが、確実に説得してほしかったのだろうか。
「部活は基本自由参加だって言ってたので大丈夫です!」
「、、そっか、じゃあ明後日言いに行くね」
「ありがとうございます!!やっぱり幡中先輩かっこいいです、、!」
さっきまで暗い表情をしていたのが、だいぶ明るくなった。
「あ、でも、私が宇治先輩を好きって、はっきりとは言わないでもらえませんか、、」
「どう言うのは大丈夫?」
「私が宇治先輩のこと好きって言ってたとは言わないでほしくて、、でも多分、花火誘ってる時点でバレてはいると思うので、、匂わせるくらいは、大丈夫です 」
「うん、わかった」
愛衣ちゃんはまた頭を下げた。
「、、なんで、宇治が好きなの?」
「、、なんで、っていうのは難しいですけど、、」
『好き』には、明確な理由があるときもあればないときもあると、玲花が言っていた。
「入学してすぐの部活見学で美術部に行ったんですけど、そこで宇治先輩を一目見てかっこいいって思って」
愛衣ちゃんは少し恥ずかしそうに笑っていた。
「ちょっと冷たい人なのかなって思ったら、喋ってみたら優しくて、声とか話し方とか落ち着いてて好きだなって」
『なんで』という質問自体間違っていたかもしれないなと少し反省した。
「そっか、宇治意外と優しいよね」
本当は美術部に入りたかったが、友達に推されて吹奏楽部と兼部になったため美術部に行けなかったと言っていた。もう兼部じゃなくなったから、今がすごくチャンスなのだろう。
「愛衣ちゃん、可愛いしいい子だから大丈夫だよ 」
「ええっ、幡中先輩に言ってもらえるなんて、、光栄ですっっ 」
いやいや、と私は笑った。
そのまま改札前で愛衣ちゃんと別れた。
帰ったら課題やらないとな。
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