テラーノベル
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(……どこまで聞かれてたの!?)
ちらりとアンナへ目配せする。すべてを察したのか、弾かれたように部屋を飛び出していった。
バタン!
扉が閉まる。カイル殿下が、ずかずかとこちらへ歩いてきた。
「ちょ、ちょっと……近すぎ……!」
思わず後ずさる。
一歩。また一歩――。 やがて背中が壁へぶつかった。
ドンッ!
顔の横の壁に、手をつかれる。
「……あ、あれは比喩で……っ」
「ふん。比喩、か」
鼻先が触れそうなほど近い。
「勝手に首輪をつけておいて、他人に譲るなど許さん」
「……っ」
ぞくりと背筋が震えたときには、もう遅かった。 顎をすくい上げられ――言い訳ごと、唇を奪われる。
「んむっ……!? ん……っ」
息さえ奪うような、深く貪欲な口づけ。 ようやく唇が離れ、息を吸おうと顔を背けた、そのとき――。
「っ……!」
今度は首筋へ、唇が落ちた。 ちくり、と甘い痛みが走る。
「ちょっと……何するのよ……っ」
首筋へ、もう一度唇を落とす。
「忠犬だからといって、聞き分けがいいと思うなよ」
カイル殿下が顔を上げ、仄暗い目で私を見下ろす。
「一度噛みついたら――死んでも離さない」
(な、何なのよ、この重すぎる独占欲……っ!?)
(忠犬どころか、完全に首輪の外れた猛獣じゃないの!!)
そのときだった。
ドンドンッ!!
「殿下! 緊急事態です!」
扉の向こうから、切迫した声が響いた。
「……何事だ」
「黒魔法師らしき人物が目撃されました! 現場には魔法陣も残されています!」
「……分かった。すぐ行く」
彼がこちらへ向き直る。
「ソフィア」
「……何ですの」
「戻るまで、部屋から出るな。話はまだ終わっていない」
鋭い視線が、私を捉える。
「花火が上がるまでには、必ず戻る」
それだけ言い残し、部屋を出ていった。
扉が閉まる。静かになった部屋で、首筋へそっと指先を当てた。
(……ごめんなさい)
(花火は、一緒に見られないわ)
***
その少し前――。建国祭の喧騒から離れた、貧民街の外れ。
使われなくなった古い礼拝堂で、深くローブを被った二つの人影が向かい合っていた。
「……通信魔石まで使って呼び出すなんて、珍しいですね」
澄んだ女の声が、薄暗い礼拝堂に響く。
「予定を変更する」
「何かあったんですか?」
「見張りから報せが入った。ソフィアが侍女とともに、皇宮を出ようとしているらしい」
「皇宮を?」
「ああ」
男は、わずかに口元を歪めた。
「ドレスや宝飾品を換金し始めた時点で、逃げるつもりだとは踏んでいたがな」
女は、手の中の黒い魔石を弄びながら問いかける。
「行き先は?」
「貧民街の孤児院だ」
「ずいぶん確信があるんですね」
「あいつが身を寄せるとすれば、あそこしかない」
「それで――予定を変更する、と?」
「これさえ成功すれば――もう、あいつがどうなろうと構わん」
「では……魔物の餌にしてしまっても?」
女の口元が、ゆっくりと歪む。
「……好きにしろ」
「ふふっ。随分と思い切りましたね」
ローブの袖から伸びた指先に、黒い光が妖しく灯る。
「帝国中に、思い知らせて差し上げましょう」
男は告げた。
「明日――亀裂を開けろ」
花月夜れん
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鷹槻れん

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ひより
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#ロマンスファンタジー
百はな🍑
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コメント
1件
第51話、めっちゃ熱かった…!カイル殿下の「忠犬だからって聞き分けがいいと思うなよ」、あの重すぎる独占欲やばい。壁ドンからのキスシーンで心臓持ってかれたわ。最後の花火の台詞も切なすぎるし、黒魔法師の不穏な動きで次回が待ちきれない🔥 ひよりさん、いつも最高の展開ありがとうございます!