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戻れない距離

7 - 朝になって言わなくても

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2026年01月13日

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目が覚めたとき、

元貴は一瞬、自分がどこにいるのか分からなかった。

カーテン越しの柔らかい光。

見慣れない天井。

そして――背中に回された腕。

「……」

動こうとして、やめる。

若井の腕は、逃がさない力じゃない。

でも、離す気もない重さだった。

「起きた?」

すぐ後ろから、眠そうな声。

「……起きてない」

「声出てる」

「……うるさい」

そう返しながらも、元貴は体を起こさない。

昨夜のことを思い出さないようにしているのに、

体の距離が全部思い出させてくる。

若井は何も言わず、

元貴の肩に額を預けた。

「元貴さ」

「……なに」

「昨日のこと、なかったことにしないよね」

返事はすぐには出なかった。

代わりに、元貴は小さく息を吐く。

「……するわけないだろ」

その一言で、若井の腕に少しだけ力が入る。

「よかった」

「……調子に乗るな」

「うん。でもさ」

若井は笑いながら、囁く。

「朝になっても、

元貴がここにいるのが一番嬉しい」

元貴は顔を背けて、ぼそっと言う。

「……誰にも言うな」

「言わない」

「見せない」

「俺だけ知ってる」

その言葉に、元貴はようやく若井のほうを向いた。

「……若井」

「なに?」

「今日から」

「距離、考えろ」

一瞬の沈黙。

そして若井は、にやっと笑う。

「考えるよ」

「“離れない”方向で」

元貴は舌打ちする。

「……ほんとムカつく」

でも、

若井の腕を振りほどかなかった。

カーテンの隙間から朝日が差し込む。

昨夜のことは、言葉にしなくていい。

朝になっても隣にいる

それだけで、全部決まっていた。

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