早朝のコトブキムラ。
なんとなく早く目が覚めたノボリはいつもより早く
訓練所の入り口でいつも通り立っていた。
だがそんなノボリの心に数日前から取れないものが。
そう、この前のゾロアーク。
いや、自分自身の姿。
白いコートに、上がった口角。
あの姿を、何処かで見たことあるとノボリは感じていた。
(…あれは一体…)
ノボリは深く考え込む。
ふとノボリは昔見た夢を思い出した。
相手の名前と顔はモザイクがかかったようにわからなかった。
だが、よく似た顔だったのは覚えており、
自身のコートの色違いのような白いコートと帽子、
片言な喋りと自身を呼び捨てするあの声。
まさかあれは、夢のあの男なのだろうか。
記憶のかけらの、あの男。
きっと前の世界で…共にいた者。
そう深く考え込んでいたノボリは、
訓練場の入り口から声をかけてくるショウに気づかない。
「ノボリさーーん!!おーーーーい!!!」
「…はっ!」
ショウが5回ほど声をかけやっとノボリは我に返る。
「す、すみません」
『どうしたんですか?呼びかけても反応ないから心配しましたよ』
「…少し、考え事をしておりまして」
「え、珍しいですね…何を考えてたんですか?」
「……」
ノボリは少し間を空けてショウの目を見て
「以前オオニューラの力を借りに行った時、
洞窟の中で私が話した話があったでしょう」
「あぁ、たしか前いた世界の記憶…ですよね」
「はい。実は最近…」
ノボリがそう言いかけた時、
「うわぁぁぁぁぁん!!」
遠くから子供の泣き声が聞こえた。
「おや…?」
「様子見に行ってきます!」
「わたくしも行きますか」
ノボリとショウは泣き声の元へ向かう。
するとそこにはシンジュ団の長、カイの姿と
小さな子どもの姿が。
子供は泣いており、カイはオロオロとその子を必死に慰めようとしている。
『あ、ショウさん、ノボリさん!
この子、泣いてて訳を話してくれなくて…!』
カイもショウもこういう経験が無いため、
オロオロと戸惑っていると、
ノボリがその子供の前にしゃがみ目線を合わせ、
優しい声で
「泣かないでくださいまし。何があったのですか?」
そう聞くと子供は少し落ち着いたようで、
しゃくりあげながら話す。
「…おにぃ、ちゃ、っ…いな、…」
「お兄様が居なくなられたと?」
「…うん…」
「わたくしたちが探して来ますのでご安心を。
ショウ様、カイ様、頼めますでしょうか」
『「は、はい!」』
あっという間に子を宥めたノボリに驚きながらフタリはコトブキムラの中を探し回る。
少しすると、すぐにその子は見つかり、
二人は抱き合って再開を喜んだ。
「おじちゃんありがとう!」
「おじッ……」
『あ、あはは…』
おじさんと言われ少し傷つくノボリに苦笑するカイ。
『そういえば二人、そっくりね。双子なの?』
「うん!そうなんだ!」
二人は抱きついたままにっこりと笑う。
そのまま二人は手をつなぎながら走って去っていった。
「…双子、ですか」
ノボリは何かを想うように空を見つめる。
するとショウが少し考え込み、
「…あ!!」
と閃いたように声を上げた。
『どうしたのショウさん?』
ショウはノボリをまっすぐ見て輝いた目で続ける。
「ノボリさん、前
自分によく似た男がいたって言ってましたよね!?」
「…?え、えぇ…」
「それってもしかして、
ノボリさんも双子だったんじゃないですか!?」
どくん。
その言葉にノボリの胸が
大きく一度跳ね上がるように鳴った。
『あ〜!確かに、ありえるかも!』
「ですよね!?」
盛り上がる二人をよそにノボリは膝をついた。
『の、ノボリさん!?』
心配して駆け寄ってきた二人の声も届かないほどに、
ノボリの中に沢山のものが流れ込んでくる。
『ノボリさん!大丈夫!?』
「ノボリさん!!」
あぁ、そうだ
「…クダリ!!!」
ノボリは叫んだ。
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コメント
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めっちゃ続き気になるぅ!! え?神?あなたは神様ですかッ! フォロー失礼します!!