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「好きだよ」
「えっ……」
「僕はね、ずっとあなたが好きだった。初めてご両親のお店に父と和菓子を買いにいった時、穂乃果ちゃんを見て一目惚れ……した」
「恭吾さん……」
「可愛くて、笑顔が素敵で、僕は本当にドキドキして、その時からあなたは僕の大切な人になった」
大切な人……
恭吾さん、私をそんな風に思ってくれてたっていうの?
「和菓子を買いにいって、穂乃果ちゃんに会えなかった日は、1日落ち込んだりして。でも逆に、あなたに会えた日はものすごく元気が出て。僕は単純なんだよね。そのうち、父と穂乃果ちゃんのご両親が自然にお見合いの話をしていて……すごく嬉しかった」
眼鏡の奥の優しい瞳が、とっても綺麗だった。
恭吾さんは東京大学出身で、お父さんの経営する大企業の跡継ぎ。今はそこで専務をしていて、間違いなく将来を約束された超エリートだ。
そんな人のお嫁さんになる人は、当然、きちんとした人じゃなきゃいけない。
もちろん、悠人のお嫁さんだってそうだ。
「そんな風に思ってもらえてたなんて知らなくて。本当に、もったいないです。もちろん、嬉しいですけど……」
「でも、そんなあなたには、あんなにも素敵な婚約者がいた。驚いたけど、とてもお似合いだと思ったよ。まあ、正直、かなり複雑な気持ちだけどね」
「すみません。両親にもまだ話してなかったので、恭吾さんにも言えなくて。本当にごめんなさい。でも……私は悠人さんと……」
それ以上、言葉にならなかった。
「大丈夫。2人のことを見て……納得したから。月城さんみたいな紳士なら、穂乃果さんにふさわしいと思う。他の人なら嫌だったかも知れないけどね。明日、月城さんと話して、あの人の思いを聞いたら……ちゃんと僕もケジメをつけるよ」
和菓子を買いにきてくれる誠実で真面目な恭吾さんを、うちの両親は本当に気に入っていた。
穂乃果の結婚相手に――って、そんな両親の気持ちも本当に嬉しいし、恭吾さんは素敵な人だし……
いろいろ考えたら申し訳なさでいっぱいになった。
「穂乃果さん。僕は2人の結婚を祝福します。でも……」
そう言って、恭吾さんはゆっくりと立ち上がった。
私も思わず立ち上がる。
こんなに近くに恭吾さんがいて、とても優しい香りがする。
「これから先も、僕はずっとあなたを想ってる。大好きだよ」
その甘い言葉と同時に、恭吾さんは私を優しく抱きしめた。
でも、なぜか、この人を突き飛ばしたり……拒否することはできなかった。
「お願い、あと少し、少しだけ……穂乃果さんの側に居させて……」