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「は、初めまして……4cardさん……6keyです」
「う、うーむ……その姿とその声でペコペコされると、違和感が凄いな……アレだ、そこまで緊張せずに。俺の事は異性だとか年上だとか考えず、4とでも呼び捨てにしてくれて良い」
「あ、はい……承りました……」
「物凄く低姿勢なのに、ずっと無表情なのがまた……何とも」
件の賞金首決闘イベントの後。
私とお兄ちゃん、sevenと早乙女さん。
そして4cardさん……じゃなくて、呼ぶ時はフォーって呼べって言われたけど。
彼と、その担当さん含めた六人で会議。
基本的には皆“遊び”程度に考えているらしく、ガッツリ自分の得意分野は使用しない事。
サブキャラをやっている時にメインキャラの話はしない事、などなど。
色々な注意事項が発表され、皆揃って「はーい」って感じに緩く終わったのだが。
会議の最後に、4cardからもう一度ログインする様に催促されてしまったという。
まさか対戦が始まってしまうのか……?
なんて、ビクビクしながらゲームに入ってみれば。
転送されたのは訓練場? みたいな場所。
そこに立っていたのは、ムキムキの特殊部隊員って見た目の人。
この外見を見て、会議に居たスーツでムキムキの人だ! 私顔合わせた事ある! って気がついた。
その後、今に至るという。
「色々と考えたんだが、君は……あぁ、すまない。俺の方まで距離を取る様な喋り方は不味いな。シックスはやはり、ハンドガンの近接戦闘が素晴らしい。だからこそ、他の武器を教えるよりもそこを尖らせてみたいと思ってしまってな」
「はぁ、どうも……え、でも聞いた話だとフォーって……“本業”の方、ですよね? 私なんて、ド素人も良いところなんですけど……」
なんというか、無理に褒めてもらっている様な気分になってしまって、ひたすらペコペコと癖で頭を下げてしまう。
リアルの本人もそうだけど、ゲーム内の姿もガチガチの軍人って感じだし。
しかも本職の方って言われたら、私のプレイスタイルなんて鼻で笑ってしまう程度のモノなのだろうと予想出来る。
だからこそ、どうにか失礼の無い様にと緊張しっぱなしなのだが。
相手は、ハッハッハと豪快に笑ってから。
「今はこうして“こっち”で仕事をさせてもらっているからな、現役という訳じゃない。でもそんな俺からしても、シックスの動きは綺麗だと思えたんだ。とても基本に忠実で、誰でも出来る動きを正確にこなす。これは意外と難しい事だぞ?」
「きょ、恐縮です……」
「だからこそ、俺の方からまた別の戦い方……つまり近接格闘術と、少し銃の構え方を崩した様な……それこそ、実戦だったらこれくらいはやるぞって事を教えてみたくてな。だからこうして、時間を取って貰ったんだ」
なんかもう話し方から分かる。
この人、多分凄く良い人だ。
グイグイ来るsevenとはまた違った、コミュニケーションの道筋を向こうが整えてくれるみたいな。
そんな、“頼れる”感じが凄い。
あれだ、凄く優しい先生って雰囲気が伝わって来る。
「お、お願いします!」
「あぁ、こちらこそ。それじゃ時間を決めてやっていこう。シックスは学生だから、あまり長時間付き合わせても申し訳ない。予定がある時は、遠慮なく言ってくれて良いんだからな? これは、俺の趣味に付き合ってもらっている様なモノだ」
なんて言って、優しそうに笑っている彼に。
こちらもどうにか笑顔を作りながら返事をしていたのだが。
あ、そう言えば6keyは表情トレースオフなんだった。
相手からしたら、ずっと無表情で話を聞いていた事になるのか……。
これ、やっぱり考え物だな。
◆
『白川さん、ほんとゴメンね……今日は時間取れるからって、他の二人が張り切っちゃってて……』
「あ、いえ、全然。私の方も大丈夫ですから、是非お二人には……その、お手柔らかに……と、伝えて頂ければ」
『ホンットォォに、ごめん! あんまり煩かったり、鬱陶しいって感じたら俺に個人チャット飛ばしてくれて良いから。こっちでどうにか押さえつけるから……』
後日、ついにその日がやって来てしまった。
学校で黒沢君と仲の良い二人、その人達と一緒にマルチプレイをする約束の日。
なんかもう既に、緊張で心臓が口から出て来そうだけど。
しかし黒沢君が引っ切り無しに謝って来るので、此方としては蔑ろには出来ない。
というか、私が変な事をして皆の友好関係を崩してしまったら……なんて考える方が怖いので、ちゃんと頑張らないと。
そしてこう言ったらアレなのだが……その二人で、色々と練習させて頂こうと思います。
基本的に黒沢君は私のサポートに徹してくれるというか、此方のプレイ優先にしてくれるので。
これまではどんなにドタバタやろうとも、何とかなったけど。
普通だったら、絶対に呆れられるペースで進行している筈なのだ。
だからこそ、いい加減私も“周りに合わせる”という事を覚えないと。
そうしないと……今後迫っている、sevenと4cardのサブキャラとの合同プレイ。
あっちに対して、脳内処理が追い付かなくなる可能性の方が高い。
二人共意味合いは異なっても、両方“プロ”だし。
賞金首キャラ以外でのゲームとなれば、兄からのサポートも無し。
というか、本当に個人としてのお付き合いになってしまうのだ。
そして今みたいに、黒沢君みたいな協力者も居ない状況になってしまうのだから。
ここで問題を起こしてしまうと、今後ガンサバのお仕事の時に影響してしまうかも……とか考えたら、気が気じゃない。
なので、今の内から慣れておく事にする。
申し訳ないが黒沢君のお友達を実験台とし、私もネット内でコミュ力を磨くのだ。
「そ、それじゃ……えっと、ログイン、します!」
『な、なんか妙に気を張ってる気がするけど……ホント、無理だったら言ってね? 俺の方でも、全力でサポートするから』
最後まで黒沢君には気を使わせてしまったが、とりあえずサブキャラでログイン。
ここ最近は6keyの方で、徹底的に4cardから指導を受けていたので、急に視線の高さが低いとちょっとびっくりするけど。
その場で少し身体を動かせば、馴染んだ。
よしっ、いつも通りの“46leather”だ。
向こうと違ってちょっともっさり動く感じ、でもリアルの私より身体能力が高いんだから全く文句は無いけど。
などとやってから、公園のベンチで座っていると。
「ハァイ、彼女。一緒に遊ばなぁい?」
「……ほへ?」
急に声を掛けられ、物凄く間抜けな声を返してしまった。
相手に視線を向けてみると、そこに居たのは……なんか、派手な髪色の女の人。
頭半分だけ色の違う様な、不思議な……って、ちょっと待った。
この感想、前にも何処かの誰かを見た時に考えた気がする。
ついでに言うと彼女は自撮り棒みたいな物を持っていて、その先端に取り付けられたスマホからは『REC』という録画中のアイコンが飛び出しているではないか。
あの、ですね。
私の勘違いじゃ無ければ、この人……。
「いや、え? あの……もしかしてsev――」
「おぉっと!? ちょっとちょっと、始めたばかりなのにもしかして私のリスナー発見!? どうもどうも、その通り! 今もライブ配信中のゲーム実況者、“ナナ”ちゃんですよー!」
サッと此方の口を塞いで来たかと思えば、彼女はスマホを自らの顔に近付けながらもベンチの隣に座って来た。
ネット配信してるみたいな事を言っていたし、不用意に私が映らない様にしてくれているのかもしれないけど……いや、待って?
この人、間違いなく“seven”だよね?
むしろ今のキャラクターの方が、リアルと近い見た目をしているんだけど。
もっと言うなら、キャラボイスが彼女のソレそのままなんですけど。
しかもプレイヤーネームが“ナナ”って、それは良いのだろうか?
早乙女さんからも、賞金首とは結び付かない様な名前を~って注意事項があった筈なんだけど。
とかなんとか考えたら、あんまり私も他人の事を言える立場じゃなかった。
考え過ぎなのは分かってるけど、どっちのキャラクターにも“6”の数字が入ってるし。
何と言っても、サブキャラがリアルの自分に近いのさえも……ある意味、私も同じなので。
慣れて来た頃に再度アバターを確認して、もう少し変えれば良かったかなぁ……? なんて、何度思った事か。
つまり、全く持って他人の事言えない。
「え、えぇ~と……“ナナ”さん? で良いんですか?」
「そうでーす、よろしくね? 今日からガンサバの配信始めたんだぁ~。あ、コレ名刺ね? フレ登録しよっ? それから、配信にキャラ乗せても良い?」
「あ、はぃ……私なんかでよければ、どうぞ……ご自由に……」
そんな会話をしつつ、二人目の名刺交換。
と言う名の、フレンド登録なんだけど。
ちなみに受け取った名刺には、そのまんま『ナナ』って書かれていた。
いやぁ……これは、良いの?
“seven”と“ナナ”って、そのままな気が……と、思わなくも無いけど。
「“46leather”ちゃんね? それじゃシロちゃんだ。ヨッロシクー! 私最近始めたばっかりの超初心者なんで、先輩プレイヤーから色々教えて欲しいなぁって!」
なんて、それはもう可愛らしい上目遣いを晒してくれる訳ですが。
座っていてもちょっと私の身長が低すぎて、相手がベンチで物凄く腰を折り曲げながら変な体勢になっております。
傍から見たら、きっと凄く変な光景です。
というのと……早乙女さーん! お兄ちゃーん! 賞金首が一人、滅茶苦茶嘘ついてまーす!
この人の何処が初心者なんですか!? 貴女のプレイヤースキルを考えたら、初期数値でも無双し放題でしょうに!
とか言いたくなってしまい、ヒクヒクと頬を動かしていれば。
「えぇと……あの、すみません。その子、凄く困ってる表情してますけど。そういうの、止めてもらえますか? 何か話があるのなら、俺が聞きますよ」
「……はぁ?」
急に新しい声が増えたかと思えば、目の前に居る彼女の肩をガシッと掴んで来た男性プレイヤー。
これに対して、急に怖い顔をしたナナさんが懐からハンドガンを抜き取り、相手の額に押し付けてみせた。
しかし。
「ちょっ、ちょっちょっと、ちょっと待ったぁ! その人、私のフレンドです!」
慌てて声を上げてみれば、二人は此方にキョトンとした視線を向けて来る。
ナナさんを止めようとしてくれていたの、クロさんだったのだ。
もしかしたら、私が知らない人に絡まれているとでも勘違いしたのか……結構強めに彼女の肩を引き剥がしたらしく。
逆に相手も、いきなり声を掛けられた上に肩を強めに引っ張られて警戒した、とかそういう事なのかもしれないけど。
いや、怖いよ! 賞金首の反応速度やっぱり怖いよ!
クロさん何も出来ずに銃口押し付けられちゃったよ!
「えっと……このナンパ男、シロちゃんの知り合い?」
「シロさん、お待たせ。この人……友達なの?」
二人揃って、両者を指さし合っているという。
何でこうなるかなぁ……色々と気を張っていたのに、思い切り溜息が零れてしまうのであった。
あぁもう、最初から滅茶苦茶だよ。
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