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5話❀
病室の中、白西がゆっくりと目を開ける。目に見える疲れと痛み、それを必死に隠す彼女の表情が、俺の心に重くのしかかる。
「颯馬…」
白西が僕の名前を呼んだ。その声は少し震えていて、かすれていた。
「どうした?」
「ちょっと…聞きたいことがあるの」
「うん、なんでも言えよ」
俺は少し緊張して答えた。彼女が何を言いたいのか、想像ができなくて、胸がざわざわとする。
「私さ、もし…もしも、私が本当にいなくなったら…」
その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。言葉が出ない。
「お前、何言ってるんだよ…そんなこと考えんなよ」
「でも、もし私がもうすぐいなくなったら、あたなは……どうなるんだろうって思って」
「お前がいなくなるわけないだろ!そんなこと言うな!」
声を荒げたことに、俺自身驚いている。でも、何も考えずにそう言ってしまった。
「ごめん、つい…」
「謝る必要なんてないよ。でも…」
「でも?」
「でも、私がいなくなったら、どうなるんだろうって思うの」
その言葉の意味が分からなかった。
「どういう意味だ?」
「私がいなくなった後、あなたがまた別の人を好きになることがあっても、私は仕方ないって思うよ。でも、あなたが他の誰かを幸せにしてくれることは嬉しいと思う」
その言葉に、僕は言葉を失った。
「なんだよ…それ」
「考えたくないけど、それが現実だって思うから」
「それでも俺は、今もずっとお前だけを見てる」
白西は少し驚いた顔をして、それから静かに笑った。
「そんなこと言って、でもいつかきっと忘れちゃうんだよね」
「だとしても今は絶対に忘れないし、その先も忘れない…忘れたくない。」
「でも、私はあなたが幸せでいてほしい」
その言葉が、俺の胸に突き刺さる。俺の幸せを一番に願ってくれているのは、白西なのに…。
「絶対に忘れないって。お前がくれた笑顔、表情、全部覚えてる」
「そっか、ありがとう。」
その言葉に、俺はただ黙って頷いた。白西の笑顔が、俺の心にいつまでも残るだろうなと思った。
「私…思うの。」
「なに?」
「どれだけ辛いことがあっても1つ夜を超えれば明日は必ずやってくるじゃん?明日もいきなくちゃって。生きなくてはならない。その事実が私にのしかかって寝れないの」
そのまま続ける
「だって怖かった。明日が来ることが、じゃなくて。いつ死ぬのかな、明日とか、今かな、とか、いつ死ぬのか分からない恐怖の気持ちを抱えたまま…明日を迎えることが、、」
本音なのか、独り言のように呟いていた。
こんなにも悲しいことを思っていたのか
そういえば、俺が病室に来ると毎回笑顔で出迎えてくれていたな。
いつ死ぬか分からないという、まとわりつく恐怖の気持ちを抱えていたのに。
俺は咄嗟に彼女の手を握った
彼女は、
「とか言うけど、私はもう大丈夫だよ」
なにが大丈夫なのか分からない
君は優しいから…
『大丈夫だよ』が口癖で、自分のことは後回しでヒーローみたいに誰でも助けて、嫌いな人にも笑って泣きたい時はひとりぼっちで泣くんだよ。
俺は知っている。