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「なんで俺が…こんなガキの世話なんかしなきゃ…あらへんねん…」
ある夏の日だった。
僕の両親は交通事故に巻き込まれ他界、すぐに僕は親戚に預けられる事になったけれど、何度もたらい回しされ、今日もまた他の親戚の家に行くのだ 。
親戚が送ってくれた車を降り、軽く会釈するとそのまま車は走り去ってしまった。きっとこの後予定があるのだろうと思い込み、深く息を吸う。
「…よしっ」
そしていつものようにチャイムを鳴らす。ここでビビり散らかしていたら何も始まらないのだ。
…しかし、しばらく待ってみるも応答が無い。どうしたものか?と、うろついていると勢いよく戸が開き、突然の事で僕は体が硬直してしまっていた。
「…お前が姉貴のガキか」
20代くらいの大学生だろうか?出てきたのは煙草を咥えた若い男の人で、見下ろしてきていた。
「…そう…です」
…どうも空気が重い、やはり初めから引き取る気なんて無かったのかもしれない。男の人は黙ってこちらを見ているだけで何も話さず、ただ沈黙が続いていた。
…とにかくこの場から早く逃げたいと思っていたが、この沈黙を破るように男の人は
「…お前、名前は?」
「しょ、翔也…」
なぜ僕はこんなにも緊張しているのだろうか?何度もしてきたことなのに…
「チッ…はよ上がれ」
抵抗する理由もない、言われた通り中に入ると古い木の匂いと煙草の匂いがしていた。男の人はどんどんと中へ突き進んでいく、遅れないようにと、僕は足早々に後をついて行った
「…ここがお前の部屋な」
引き取る気が無いのに部屋?1度期待だけはさせるつもりなのだろうか?
「う、うん…」
「…はぁ…そこ座って大人しくしてろ」
僕はそこまで活発な方ではないと思うが、機嫌を損ねたら面倒だと思い、軽く頷いた。
しばらくして男の人はソファに横になり目をつむっていた。探索するなら今だろうかと思い、立ち上がる。
「…うぅ〜ん…」
…うなされているのだろうか?いや、そんな事を気にしている場合では無い。どうせすぐに他の親戚に回すんだ、少しくらい自由にさせてもらおう。
玄関を開け、外に出ると青々とした空が家の目の前にある緑の稲畑を照らしていた。空気は透き通っており、蝉の声もする。さて、どこから見ようか。
それからしばらく男の人の家付近を歩いてみたが、近くには小さな川と田んぼしか見えない。コンビニらしきものは遠くに薄らとあるが、僕の足では難しいだろうと思い落胆し、顔を俯いた。
「…ん?」
ふと、足元が一瞬煌めいていた。
なんだろうか?金属?ビー玉?いや、もしかしたら高価な物かもしれないと思い雑草を手で払いながらも探して見ることにした。
「…ブレスレット?」
こんなもの普通落とすだろうかと思いながらも拾い上げる。少し土が付着しており、薄汚れていたが、わすがに太陽の光に反射して光り輝いていた。
「誰のだろう…最近落としたみたいだけど…」
場所的にあの男の人のものだろうか?大事なものだったら大変だろうと思い、僕はあの男の人の家へ向かった。