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第1話 - 🐼×🔝　君を知らなかった頃には、もう戻れない

3,333

2025年05月07日

#BIGBANG

な

🐼×🔝です

前の携帯が死んだので、ここで活動します。

最初のなので、今回はR18は無しです

初めて18禁以外なの書いたかも、、w

本人様達には関係ありません

ではどうぞー

第1章：転校生と孤高の先輩

四月の終わり、名門私立・栄進学園の1年B組に一人の転校生がやってきた。

🐼「イ・スンヒョンです。よろしくお願いします！」

明るく通った声と共に、教壇の前に立った少年が一礼する。その瞬間、教室の空気がふわりと軽くなるような気がした。

どこか人懐こい笑顔。少し茶色がかった髪と、まだあどけなさの残る目元。それでいて、背筋は真っすぐで、彼の人柄を物語っていた。

「ね、どこから来たの？」

「クラブはやってた？スポーツ得意そう！」

女子よりも騒がしいクラスの男子たちに囲まれても、スンヒョン――スンリはにこにこと応えていた。

🐼「釜山の中学から来たんだ。サッカー部だったけど、ちょっとケガして今は休んでるんだ〜」

その無防備な答えがまた、周囲を和ませる。こうして、彼は一瞬でクラスに溶け込んだ。

けれど――。

スンリが、その“ひと”を初めて見たのは、転校してきた初日の昼休みだった。

校舎の一番奥、図書館の裏にある中庭。花壇のそばに立つその人は、制服のネクタイを緩めて空を見上げていた。

長身で、白くて整った横顔。どこか影を帯びた瞳と、近寄りがたい空気。無意識に見とれていたスンリに、彼はふと目を向ける。

🔝「……何か用？」

低く、乾いた声だった。

🐼「……あっ、ごめんなさい。なんとなく散歩してて……」

🔝「ここ、生徒は立ち入り禁止だよ」

嘘だ。そんな張り紙、どこにもなかった。

だけど彼はそれだけ言って、また空に目を戻した。

そのまま動かないその背中に、スンリはなぜか、強く惹かれていた。

＊

「先輩の名前？ああ、あれ、チェ・スンヒョン先輩だよ。3年生」

クラスメイトのジフンが、学食でサンドイッチをかじりながら教えてくれた。

「T.O.P（タプ）って呼ばれてる。この学校で一番モテるから、TOPって言うあだ名がついたんだって。……でも、確かに顔は、イケメンだけどすっごい変わってる人だよ」

🐼「変わってる？」

「誰ともつるまない。休み時間も昼休みも、いつも一人。前は生徒会にいたけど、2年の冬に辞めたらしい。女子の間じゃ“氷の王子”って呼ばれてる」

スンリはその話を聞きながら、心の奥に妙な引っかかりを覚えていた。

🐼「……寂しくないのかな」

「は？　誰が？」

🐼「その先輩」

「……おまえ、マジでそう思う？ただの変人だよ。深入りしない方がいいって」

ジフンは肩をすくめて言ったけれど、スンリの目には違って映っていた。あのとき、図書館裏の中庭で見た横顔。誰かを待っているようで、でも諦めているような、そんな哀しさ。

気づけば、彼のことをもっと知りたいと思っていた。

＊

それから数日、スンリは何度か同じ場所に足を運んだ。

花壇の横、校舎の裏。そこに、あの先輩――T.O.Pがいる。

けれど、声をかけてもろくに相手にされない。会話はいつも一方通行だった。

🔝「また来たのか」

🐼「はい。昼休みの空気、好きなんです。先輩もここ、好きでしょ？」

🔝「俺が好きかどうか、おまえには関係ない」

そっけない言葉。でも、どこか拒絶しきれていない。そんな微かな隙間に、スンリは希望を見出していた。

🐼「……先輩って、寂しがり屋でしょ？」

🔝「……」

一瞬だけ、T.O.Pの肩がわずかに揺れた。

けれどすぐに目をそらし、彼は低く呟いた。

🔝「……おまえには、関係ない」

たしかにそう言ったはずだった。でも、スンリはそのとき、確信した。

この人は誰かを必要としてる。そうじゃなきゃ、こんな目をしない。

だから――僕がそばにいる。

勝手な思い込みだとわかっていた。それでも、スンリの心はもう、後戻りできないところまで来ていた。

第2章：沈黙の先輩と、世界の隙間

中庭での沈黙の時間は、スンリにとってどこか心地よかった。

T.O.P先輩は相変わらず無口で、必要最低限の言葉しか発さない。でも、その隙間にある空白が、スンリにはとても大切なものに思えた。

先輩の“孤独”に、自分の存在が小さく食い込めている気がした。

そんなある日、2年生の教室の前を通りかかったスンリは、廊下に響くジヨンの甲高い声を聞いた。

🐉「なーんか最近、たっぴょん、機嫌いいよね？」

☀️「は？どこが？あの人の顔、常に仏頂面じゃん」

そう言って笑うのは、ヨンベという男子だった。落ち着いた声色。隣に並ぶジヨンよりも一歩引いた立ち位置に見えた。

🐉「いや〜でもね？前はもっと、目が死んでたっていうか、心が“終わってます”みたいなオーラ出てたけど、最近ちょっとだけ人間味あるっていうか？」

☀️「……それ、いい意味なのか？」

スンリは思わず立ち止まり、彼らの会話に耳を傾けていた。

ジヨンは続けた。

🐉「この前もさ、中庭で誰かと喋ってたんだよ？嘘でしょ？って思って二度見したもん。……あれ、誰だろ。1年生っぽかったけど」

心臓が跳ねた。

バレてる。

けれど、なぜか嫌ではなかった。むしろ、誇らしかった。

自分は、あの先輩の“特別”になれてるかもしれない。それだけで、胸がいっぱいになった。

＊＊＊

昼休み。今日もまた、中庭。

スンリはT.O.Pの隣に座り、コンビニで買ったサンドイッチを口に運んでいた。

先輩は相変わらず黙っていて、本を読んでいる。でも、その空気が心地いい。

🐼「……ねえ、先輩って、友達いないんですか？」

🔝「は？」

🐼「いや、別にバカにしてるわけじゃなくて……俺、知りたいんです。先輩のこと」

T.O.Pは本のページをめくる手を止め、低く呟いた。

🔝「知ってどうする」

🐼「好きだから……かも」

🔝「……」

風が吹いた。桜の花びらがふたりの間にひらひらと落ちる。

T.O.Pは無言のまま、それを見つめていた。

🔝「おまえは……浅いんだよ」

🐼「浅い？」

🔝「俺のことを“好き”だとか、“知りたい”だとか――そんな簡単な言葉で踏み込んでくるな」

冷たい声だった。

でも、スンリは怯まなかった。むしろ、何かが確信に変わった気がした。

🐼「じゃあ、深くなる。俺、先輩の全部を知りたい。笑うときの顔も、怒るときの癖も、泣くときの声も――」

🔝「……泣かない」

🐼「俺の前では、泣いていいですよ、」

その瞬間、T.O.Pの目がほんの少し揺れた気がした。

だけどすぐに背を向けて、「帰れ」とだけ呟いた。

スンリは、帰らなかった。

代わりに、黙って隣に座り続けた。

何も言わず、何も求めず。ただそこにいること。それが今の彼にできる、たったひとつの“愛情表現”だった。

＊＊＊

同じ頃、1年A組の教室。

👼「スンリくん、また今日もいなかったね、昼休み」

同じクラスのカン・テソンが、空になったスンリの席を見ながら笑った。

👼「最近ずっと誰かといるみたいだね。誰だろ。彼女……じゃないか。男子校だもんね」

「……先輩とじゃね？」

ジフンがぽつりと呟く。

「図書館裏で見たって、誰か言ってた。T.O.P先輩だったら面白いよな」

👼「えー、あの“氷の王子”？それはないでしょ〜」

テソンが笑い飛ばしたけれど、ジフンは真顔だった。

「スンリ、あいつちょっと変わってるからな。好きになったら一直線っていうか……誰かに夢中になると、見えなくなるタイプかも」

その言葉が、まるで予言のように感じられた。

このときはまだ、誰も知らなかった。

スンリの想いが、やがて“依存”という名の刃に変わっていくことを――。

第3章；嫉妬と秘密の境界線

🐉「――おまえ、何がしたいの？」

その声に、スンリは思わず立ち止まった。

放課後の廊下。人影の少なくなった校舎に響いたのは、2年生の教室の前で腕を組んでいたジヨンの声だった。

🐼「え、俺……？」

🐉「そう、君。最近、チェ・スンヒョン先輩と仲良くしてる“1年生”って、君のことだよね？」

不敵な笑み。前髪の隙間から覗く鋭い眼差しに、スンリは少しだけ背筋を伸ばした。

🐼「……何が言いたいんですか？」

🐉「別に、責めるつもりはないよ。ただ――警告？」

🐼「……」

🐉「たっぴょんは、傷つけられた人間なんだ。ちょっとやそっとの想いじゃ、あの人の“中”には入れないよ」

ジヨンの声は柔らかかったけれど、どこか冷たさを含んでいた。

🐉「俺ね、先輩とは1年のときからずっと生徒会一緒だったんだ。あの人が、どんな風に人を拒絶してきたか、見てきた」

🐼「……それって、ジヨン先輩はT.O.P先輩のこと、好きだったんですか？」

ほんの少しの沈黙。そして、ジヨンは笑った。

🐉「正直だね、君。……まぁ、“好き”だったよ。今でも、嫌いにはなれない。でも――俺には、踏み込めなかった。拒絶されるのが怖くてね」

スンリはまっすぐジヨンを見た。

🐼「俺は、怖くないです。……怖くなきゃダメですか？」

ジヨンの目が少しだけ見開かれる。

🐉「ふーん……そういうタイプか。……まぁ、がんばって」

そしてジヨンは、まるで舞台から退場する俳優のように、軽やかにその場を去った。

残されたスンリは、心臓の音が大きくなるのを感じていた。

🐼「俺は……T.O.P先輩を、絶対にひとりにしない」

その誓いが、後に自分自身を縛ることになるとも知らずに。

＊＊＊

☀️「何してるの？、こんなとこで」

同じ頃、中庭に座っていたT.O.Pの隣に、ヨンベがやってきた。

☀️「あいかわらず……ひとりが好きだね」

🔝「おまえも、今はひとりだろ」

☀️「まあね」

ヨンベはベンチに腰を下ろし、空を見上げた。

☀️「……最近、笑うようになったよな、ヒョン」

🔝「……は？」

🐉「ジヨンが言ってた。“前より目が死んでない”って」

T.O.Pは鼻を鳴らす。

🔝「アイツは、口が軽い」

☀️「でも、当たってるでしょ。……その1年生、スンリくんって言ったっけ？あいつのこと、どう思ってんの？」

🔝「……関係ないだろ」

☀️「そう？」

ヨンベの目は、鋭い。言葉よりも、深く刺さる静かな鋭さ。

☀️「ヒョンって、さ。誰かを信用するのが怖いんだよね。……だけど、あいつにはちょっと、ほだされてるでしょ？」

🔝「……知らねぇよ、そんなの」

そう言いながら、T.O.Pはふと、今日の昼のスンリの言葉を思い出す。

『泣いてもいいですよ、俺の前では』

あんなことを言われたのは、初めてだった。

少しだけ、心の奥が揺れたのを自覚していた。

＊＊＊

その夜、寮の自室。

スンリはスマホを見つめながら、溜息をついていた。

🐼「……返事、来ないな」

授業で使ったプリントの写真をT.O.P先輩に送ったついでに、「また中庭で会えますか？」とメッセージを送った。

既読はついている。でも、返信はない。

（嫌われたのかな）

そう思うと、胸が苦しくなる。焦りが、喉を締めつけた。

🐼「会いたいよ……」

その呟きは、誰にも届かない。

気づけば、T.O.PのSNSの過去の投稿をさかのぼっていた。

2年の頃の写真。生徒会メンバーとの集合写真。その中に、ジヨンも、ヨンベもいた。

その隣にいたT.O.Pは、今より少しだけ表情が柔らかくて――その笑顔に、嫉妬している自分に気づいた。

（あの頃の先輩を、俺は知らない）

でも、今の先輩は――俺のものだ。

その想いが、少しずつスンリの中で膨らんでいく。

愛情が、執着に姿を変えていく。

＊＊＊

翌日、いつもの中庭。

スンリがベンチに座っていると、少し遅れてT.O.Pが現れた。

🔝「……来たんですね」

🐼「……授業サボったのか？」

🔝「先輩に会いたくて」

「バカか、おまえ」

そう言いながらも、T.O.Pはスンリの隣に座った。

その沈黙が、少しだけ柔らかくなっていたことに、スンリは気づいていた。

🐼「……俺ね、先輩がどんなに冷たくても、全部好きです。過去に何があっても、俺には関係ない。俺は今の先輩を――」

🔝「おまえは……何も知らないくせに、そんな風に言うな」

🐼「知りたいから、言ってるんです」

スンリの目は、真っ直ぐだった。

T.O.Pは、ふと目をそらす。

🔝「俺は……人を信じるのが怖いんだよ」

🐼「じゃあ、信じてくれるまで、そばにいます」

それは、恋というにはあまりに重たく、でも誓いというにはあまりに純粋だった。

春の陽差しの中、二人の影が寄り添うように、そっと重なっていた。

第4章：境界線の崩壊

春の終わりが近づく頃、スンリは「違和感」に気づきはじめていた。

最近、T.O.Pの目が前より冷たい。

いや、もとから冷たかった。けれど、“自分にだけは違った”はずのその目が、また誰に対しても同じ表情に戻っている気がする。

🐼「……何かあったんですか？」

昼休み、中庭のいつもの場所。ベンチに並んで座ったスンリが、そっと問いかけた。

T.O.Pは答えなかった。

沈黙の先にあったのは、明確な“距離”だった。

スンリの中に、小さな不安が渦巻き始める。

🔝「……先輩、俺のこと、迷惑ですか？」

🔝「そうじゃない」

🐼「じゃあ、なんで……」

🔝「おまえが“重い”んだよ」

一瞬、時が止まったように感じた。

🐼「……重い？」

🔝「気持ちが、一方的すぎる。俺に、何を求めてる？」

🐼「求めてるって……そんなの、先輩の隣にいたいだけで――」

🔝「“だけ”じゃない」

低く、吐き捨てるような声。

🔝「俺を、自分のものにしようとするな。そういう“愛し方”は、俺が壊れる」

言葉のひとつひとつが、胸に刺さった。

🐼「……先輩が壊れるなら、俺も一緒に壊れてもいいです」

スンリは本気だった。けれどその言葉が、T.O.Pをより強く突き放した。

🔝「そういうのが、怖いんだよ」

言い終えると同時に、T.O.Pは立ち上がり、背を向けた。

🐼「もう……来るな」

＊＊＊

その日の放課後、ジヨンは2年の教室でひとり、窓の外を見ていた。

そこへヨンベが入ってくる。

☀️「……また見てたのか？」

🐉「何が？」

☀️「ヒョンと、あの1年生」

ジヨンは肩をすくめた。

🐉「ふたりとも、不器用だよね。でも……似てるんだよ」

☀️「似てる？」

🐉「“信じたいのに、信じきれない”っていう点では、ね」

ジヨンの目が少し陰を帯びた。

🐉「……昔、たっぴょんには恋人がいた」

ヨンベは黙って耳を傾ける。

🐉「他校の子だった。すごく優しくて、あの先輩が珍しく心を開いてた。……でも、裏切られたんだ。全部、遊びだった。金持ちの坊っちゃんと付き合うと、いろんな“メリット”あるもんね」

☀️「……そんなことがあったのか」

🐉「壊れたよ。それ以来、人に期待するのをやめた。自分にも、他人にも」

ヨンベは静かに目を閉じた。

☀️「じゃあ……あの1年生も、壊されるかな」

ジヨンは小さく笑う。

🐉「壊すか壊されるか――多分、それがこの関係の“本質”なんだよ」

＊＊＊

T.O.Pに「来るな」と言われた次の日。

それでもスンリは、中庭に行った。

けれど、T.O.Pは来なかった。

その次の日も、またその次の日も。

スンリは毎日ベンチに座り、ひとりでパンを食べながら、先輩の姿を探し続けた。

周囲はざわついていた。

「アイツ、毎日中庭で誰か待ってんの？」

「なんか怖くね？」

「ちょっと依存っぽい……」

そんな噂が流れていることを、スンリ自身も知っていた。

それでも、構わなかった。

（先輩に……会いたい）

誰よりも近づきたかった。

誰にも見せない弱さを、自分だけに見せてほしかった。

でも。

それは、願望じゃなく、執着になっていた。

＊＊＊

👼「ねぇ、スンリ」

教室でノートを閉じようとしていたスンリに、テソンが声をかけた。

👼「最近、元気ないね。何かあった？」

🐼「……別に」

👼「……なんかさ、変わったよな。スンリ」

テソンはスンリをまっすぐ見た。

👼「前はさ、もうちょっと“普通”だった。笑ってたし、みんなとも喋ってたし」

スンリは俯いた。

🐼「俺……今の方が、正直なんだよ」

👼「それ、正直じゃなくて、病んでるって言うんだよ」

冗談めかした口調だったけれど、テソンの目は真剣だった。

👼「その先輩のこと、本気で好きなんじゃないの？でも、自分を削ってまで想うのは、違うんじゃないの？」

その言葉に、スンリは何も返せなかった。

でも、心の奥が微かに揺れた。

＊＊＊

そして――事件が起こった。

ある日、校内の掲示板に、こんな紙が貼られた。

《1年スンリ、3年T.O.Pに粘着中？　異常なストーカー行為》

悪質ないたずらだった。だが、名前は伏せられていなかった。

一部の生徒がそれを写真に撮り、SNSに拡散した。

教師たちはすぐに動いたが、噂は止まらなかった。

その日、T.O.Pはスンリを呼び出した。

🔝「おまえがやったのか？」

🐼「……違います」

🔝「でも、事実じゃないとも言い切れない」

🐼「……どういう意味ですか」

🔝「おまえの“想い”は、俺には……重すぎるんだよ」

スンリは拳を握りしめた。

🐼「俺は……先輩が、何されても、誰に嫌われても、味方でいたいって思っただけなのに」

🔝「それが、“正しさ”だと思ってるなら……もう、俺に関わるな」

T.O.Pの言葉は、氷のように冷たかった。

そしてその日を境に、ふたりは完全に口をきかなくなった。

第5章：それでも、君を信じたい

雨が降っていた。

傘も差さずに濡れたまま歩くスンリの足取りは、どこか宙に浮いているようだった。

（見えない）

視界の奥が霞んでいた。雨のせいか、それとも自分の涙のせいか。

掲示板の紙、SNSでの噂、冷たい視線。

教室でも誰も話しかけてこない。まるで、自分だけが透明になってしまったみたいだった。

🐼「もう、いいや……」

呟いた声は、雨に溶けて消えた。

＊＊＊

それから数日後、スンリは寮の部屋から出てこなくなった。

食事にも来ない。授業もすべて無断欠席。

担任が寮まで見に行ったが、「体調不良」とだけ言い、ドアを閉めてしまったらしい。

そんな話を聞いたヨンベは、放課後すぐに動いた。

☀️「ヒョン」

🔝「……なんだよ」

自販機前に立っていたT.O.Pに、ヨンベが歩み寄る。

☀️「……もう、無視しきれないでしょ」

🔝「……」

☀️「スンリ、壊れてる。ヒョンのせいで、ってわけじゃない。けど、あいつはヒョンの言葉を“すべて”としてる」

T.O.Pの手が、缶コーヒーを握りしめたまま止まる。

🔝「……だから、何だ」

☀️「ヒョンさ、“逃げてる”よね」

🔝「……何にだよ」

☀️「人を信じることから。――自分が、誰かを“幸せにできるかもしれない”って可能性から」

その言葉に、T.O.Pは言葉を失った。

🔝「……俺だって怖ぇんだよ」

☀️「知ってるよ。でも、ヒョンが怖がってる間に、あいつは今、自分の存在すら疑ってる」

ヨンベは、背中を向けて歩き出しながら言った。

☀️「信じてみて、たったひとりを。……ヒョンが初めて“変わろうとした”あいつを」

＊＊＊

同じころ。

スンリの部屋をノックしたのは、ジヨンだった。

🐼「……なんですか」

重くかすれた声。

🐉「入っていい？」

🐼「なんでもいいですよ」

ドアが開き、ジヨンは室内を一瞥した。

ベッドの上に、スンリが膝を抱えて座っている。

🐼「……何しに来たんですか」

🐉「様子見」

🐼「バカにしに来た？」

🐉「いや、ちょっとだけ……“俺に似てるな”って思っただけ」

スンリの目が動いた。

🐉「昔、俺もたっぴょんに同じように夢中だったよ。……でも、結局、踏み込むのが怖かった。だからお前の方が、ずっとまっすぐで、ずっと強い」

🐼「……だったら、なんで壊れたんだよ」

その声は、涙混じりだった。

🐼「好きなだけじゃ、ダメなの？。信じたって、突き放される。愛したって、“重い”って言われる……だったら何すれば良かったんですか、、」

ジヨンは静かに答えた。

🐉「……それでも、信じ続けるしかないんだよ。“重くても離れない”って、証明するしかない。だってそれが、お前の“愛し方”なんだろ？」

スンリの目に、もう一度光が戻りはじめていた。

＊＊＊

日曜日の夕方、寮の裏の桜並木道。

誰もいないはずの場所に、T.O.Pは立っていた。

その手には、スンリの書きかけのノート。

🐼「……いつか、先輩と一緒に桜を見たい」

ふとした会話の中で、スンリが口にした願い。

記憶の中の声が、耳に残る。

（ほんとは、ずっと会いたかったんだ）

（でも、近づくのが怖かっただけなんだ）

その瞬間、後ろから足音がした。

振り向くと、そこにスンリがいた。

🔝「……来たのか」

🐼「来ました」

ふたりの距離は、わずか数メートル。

🔝「なんで来たんだよ。俺は――おまえを傷つけた」

🐼「でも俺は、先輩が傷ついてる方が、見てられない」

その言葉に、T.O.Pの肩が震えた。

🔝「俺、ずっと“誰も信じない”って決めてた。でも……おまえだけは、どうしても……切り離せなかった」

🐼「……なら、信じてください。俺は、絶対に先輩をひとりになんかしない」

スンリの目には、かつてのような強さが戻っていた。

🐼「何度だって言います。重くても、ウザくても、俺は先輩が好きです」

T.O.Pは、ゆっくりと歩み寄った。

その距離がゼロになった瞬間、スンリを抱きしめた。

🔝「……ごめん」

🐼「許します」

🔝「……ありがとう、、大好き」

その瞬間T.O.Pから一粒の涙が溢れた

「当然です、俺も大好きです」

そのやり取りに、桜の花びらが優しく降り注いだ。

孤独と不安と過去の傷を抱えながら、ふたりはもう一度、“始まり”を選んだ。

最終回　（第6章）：そして、春が来る

3月。卒業式まで、あとわずか。

校内のあちこちで、別れの空気が漂い始めていた。

🐼「……先輩、卒業しても、俺に会ってくれますか？」

ある日の放課後、校舎裏の階段で、スンリが静かに尋ねた。

🔝「当たり前だろ」

T.O.Pの答えは、今までで一番やわらかかった。

🔝「でもさ、正直……こえぇよ」

🐼「何がですか？」

🔝「こうして笑ってる時間が、もうすぐ“終わる”んじゃないかって……また、何も信じられなくなるんじゃないかって」

🐼「……大丈夫です」

スンリはそっと、T.O.Pの手を握る。

🐼「今の俺は、ただ“傍にいたい”だけじゃなく、先輩の“支えになりたい”って思ってます」

🔝「……変わったな」

🐼「変えてくれたの、先輩です」

ふたりの手が、ぎゅっと強く繋がれた。

＊＊＊

卒業式当日。

体育館は花の装飾と拍手の音で満ちていた。

在校生代表としてスピーチをするジヨンの言葉が、思いのほか胸に響いた。

🐉「この学園には、たくさんの別れがあります。でも、“別れ”がすべて終わりじゃないってことを、僕たちは知っています」

T.O.Pは、スンリの方をちらりと見た。

スンリもまた、微笑みながら彼を見つめ返していた。

（終わりじゃない。俺たちは、まだ――）

式が終わり、校庭では記念写真や歓談で賑わっていた。

そんな中、T.O.Pは制服の第二ボタンを、スンリに差し出した。

🔝「……あげる」

🐼「……いいんですか？」

🔝「おまえ以外に渡す相手、いねぇよ」

スンリはそのボタンを、まるで宝物のように胸にしまった。

そして、ひとつ息を吸って言った。

🐼「先輩、俺……この学園で先輩に出会えて、本当に良かったです」

🔝「……俺もだ」

🐼「最初はただ、格好良くて、冷たくて……だけどどこか寂しそうな人だと思ってました」

T.O.Pは少し笑う。

🔝「外れてないな、それ」

🐼「でも、知れば知るほど、先輩の“優しさ”とか“痛み”とか……全部抱きしめたくなったんです」

🔝「……おまえのそういうとこ、ずるいわ」

🐼「はい？」

🔝「逃げられなくなる」

🐼「……なら、もう逃げないでください」

T.O.Pはその言葉に、ふっと息を吐く。

🔝「逃げねぇよ。もう二度と」

スンリが満面の笑みを浮かべた。

T.O.Pは、そんな彼を一瞬じっと見つめると、不意に引き寄せて抱きしめた。

周囲のざわめきがすべて遠ざかる。

ふたりだけの、静かな春がそこにあった。

＊＊＊

【数年後】

ある雨の日の午後。

都内のギャラリーで開かれた小さな展示会。

そこに飾られていた一枚の絵。

薄いグレーの空の下、桜の花びらが舞う並木道を、ふたりの影が並んで歩いている。

その絵の下に、こう書かれていた。

「傘のない春」

――“壊れた愛”を、ふたたび信じる物語

その日、来場者リストの中に、こんな名前があった。

李昇鉉（スンリ）

そして、ギャラリーの片隅では、彼がひとりの男性に微笑みながら言う。

🐼「先輩の絵、やっぱり、世界でいちばん好きです」

男は少し照れたように言った。

🔝「……そう言ってくれるおまえが、いちばん信用できるよ」

傘も差さずに歩いていた、あの春の日。

あの時と同じ空の下、ふたりは今、確かに未来を歩いている。

ー完ー

もう腕が疲れた、、、

結構なキャラ崩壊ww

次は、まじでR18書こうとしてるから、宜しく

リクエスト何でも答えます。

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