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紅魔館にてーーーー
(咲夜side)
(買い出しに行く時間だわ。急いで言っていそいで向かわないと。)
「ちょっといいですか?」
メイドの妖精が、咲夜に声をかけた。
「あら?見かけない顔ね。新人かしら」
「はい!そうです!あ、ころねと申します!」
(…?…気のせいか)
「…そう。で、要件は?」
「…ちょうどハーブティーを切らしていて、買いに行こうと思ったのですが」
(あら…ハーブティーはたしか…)
「人里の行き方がわからないんです…私は新人で、キラさんたちのようにここに来たばかりで」
「良ければ咲夜さんに、人里への行き方を教えてもらおうと…」
(なぜ私に…というかこの子、キラたちのことを知って…)
「悪いわね。私は急いでるの。頼むんだったらあそこの妖精に…」
「咲夜さんがいいんです!」
彼女は強引気味に咲夜の手を引く。
(ちょっと待って…この子の手…)
「…」
「あははぁ…そんなに見つめないでくださいよ。どうしたんですか?咲夜さん」
ーーー幻符 インディスクリミネイトーーー
「はっ!?」
辺りに爆発音が鳴り響く。
「急にどうしちゃったんですか咲夜さ…」
「どうしたって言いたいのはこっちよ。あなたなんでしょう?お嬢様を傷つけたのは」
「……何を言ってるんですか。私はただの新人メイドで…」
「ふふ…とんだ妄想ね。」
笑顔の欠片もない笑顔で彼女は背後に回りこむ。
「うぁっ、早!!」
「私があんたみたいな嘘つきをメイドにするわけなんてないでしょう。」
「…あはは…咲夜さんはそういう人ですもんね…とりあえず人里に案内をお願いします」
「その嘘もいつまで続くか見ものね。」
(私のことを知ったかのように言う…間違いない、彼女は……!)
…私ったら馬鹿ね。戦った相手の特徴を捉えておかないと、……守るものも守れないのに…
「単刀直入に言う。あなた、ここ紅魔館のメイドじゃないわね。」
「何を言ってるんですか〜?そんなわけないじゃないですか」
「ではなぜこんなにも矛盾が生じる。メイドたちは基本お茶を入れないわ。私は昨日の今日までハーブティーだなんて入れてない。昨日確認した時はまだ余りに余ってたのにね。なぜ切れているのかしら?辻褄が合わないわ」
「…え〜、だからって咲夜さん、それじゃまだ完全に理由には……」
「ならないと?だったら、新人なはずの貴方が、なぜキラたちの名前を知っている。仮に何らかの原因で知っていたとしても、私のことを知ったような口で語る。……とにかくあなたは辻褄の合わない点が多すぎるのよ。…計画深いけれど…思わぬ所で隙を作っていく。昔とちっとも変わっていない。」
「……」
黙り込む『ころね』に対し、咲夜は追い打ちをかけるように問いかける。
「あなたの手のひら…見せてみなさい。きっとあの真っ黒な魔法陣が描かれてるはずだわ。…それが何よりもの証拠よ。」
「……チッ」
ーーー『無符 究極の不協和音』ーーー
「これくらい避けられ…」
「それはどうかなぁ?w」
「な、ダミーか!!」
迂闊だった。私、完全に嵌められて…
「ふふっ、滑稽ねw」
「ッッー!!腕が落ちたんじゃないかしら?」
なんとか身をかわして避ける咲夜。
(くっ…時止めが通用しないっ…!でも今はそんな泣き言言ってる場合じゃ…。そうよ、今度こそ仕留めるのよ)
「って言って強がってるんじゃないの?あはは、変わってないのはそっちこそじゃないの?w」
「…うるさい」
「悪いけど私は、こんなつまらない戦い、これ以上続けるつもりはないわ。」
「は?ちょ、逃がさないわよ…!?」
「…さよなら、哀れなメイド長さんっw」
「ま、待ちなさいっ!!!」
シュッ
「ま、待て…ッッ!」
「え……?」
(身体が動かない…!!?…あの日、必死で追ったのに…届かなかった。能力である時止めが使えなきゃ、私はッッ……!!)
(ダメだ…追えない……私が追わなきゃ…行かなきゃいけないはずなのに……動けない…)
あぁ、無力だわ。
「ぐっ……ふざけるな……ふざけるな…!!!
お嬢様がどんな思いで私を庇ったと思ってる!
……あぁ、私がもっと強ければ…!」
私には今…嘆くことしかできないです…。
こんなメイド長で申し訳ありません、お嬢様…
……彼女…アイツの能力は瞬間移動だ。
表向きにはそうなっている。
……現にアイツは、さっきもそれを使って逃げやがった。
アイツの本当の能力は……
「咲夜さん!?こんなところで何してるんですか、まさかお昼寝しようとしてたわけじゃ…」
「あぁ、美鈴?そんなわけないじゃないの。あんたに言われたくないわよ。」
声の主は美鈴だった。
「…なぜここに?」
「いやぁ、妖精メイドに、咲夜さんが暴れてるって言われて…急いで駆けつけてきたら、咲夜さんが座り込んでるんですよ。」
「…はぁ?私は暴れてなんか…」
「ほらほら、そういうことは後回しにして。何をしでかしたかはわからないけど、とにかく部屋戻りましょう?お嬢様が待っています。」
「あ、いえ、私は買い出しを…」
「いいんです。私がやっておきます。」
「美鈴が?」
「はい!買う物を教えていただければ!」
「それで……いいのかしら…?」
「いいんですよ!!」
……まぁ、いいわよね。私も、一秒でも多くお嬢様の傍にいてあげたいし…
「…ええ。それでお願い。…礼を言うわ。はいこれ、買い物リストよ。」
「あれぇ、咲夜さん素直ですね〜。いつもなら『美鈴が優しいなんて気持ち悪いわ』とか言うのに。」
「うるさいわね、放っておきなさい。でないとその罵倒の代わりにナイフの雨が…!」
「ひい〜!それだけはご勘弁を!」
「……冗談よ、私もお嬢様が待ってるんだしはやくいくわ。」
「……ふふ」
「どうしたのよ急に笑い出して。」
「いえ、咲夜さんが、まだ咲夜さんで良かったなと」
「はぁ……?」
何を言ってるのよこの子は。全くもう。
「…何を言ってるのか分からないけど、褒め言葉として受け取っておくわ。」
「ええ、そうしてください。それじゃ」
タッタッタッタッ
…私も行かなくちゃ。