今度あったら、
ヒタは、崖を指差して言った。
「この崖に生えている」
「は??」
聞き間違えかと思い、もう一度訊き返した。
「えっと、もう一度お願いします…」
「この崖に生えているんじゃ」
マジかぁぁ…
レイナは心の中で言いながら、薬草の見た目や生えている場所を訊く。
「薬草はどこに生えているんですか?」
「この崖に大きな窪みがある。その窪みの奥の草地に薄いピンク色の花が生えている。それが取ってもらいたい薬草じゃ。それと」
そう言いながらヒタは透明なガラスで出来た小瓶を取り出して言う。
「この中に、窪みの奥の『空気』を入れてきて欲しい」
「空気?」
一瞬の間レイナの思考は停止した。空気を入れてくる?何を言っているのだろうか?
「あぁ。この便の蓋を開けて3分くらいしたら、空気が中に入る。そのまま蓋を閉めて持ってきてくれ」
「分かりました…?」
スマホのメモ帳アプリにメモしようとしたが、崖の下にスマホを落とす訳には行かないため、スマホは置いて行くしかない事に気が付き少し慌てながら言う。
「大丈夫か?」
明らかに分かっていないレイナを見てヒタが心配そうに言う。
「大丈夫デス」
レイナは少しカタコト気味に言うと、崖を降りる時に自分の体が落ちないように固定する為のゴム製の硬くて長い紐を作り出した。
それを見てヒタが言った。
「フユの能力はなんじゃ?」
「魔法使いです」
「なら、『視える』かもしれんな…」
「見える?」
「行けば分かる」
レイナは少し疑問な思いながらも体に着けた紐を近くにある頑丈そうな岩に括り付けると、崖の凹みや出っ張りに手足をかけながら、ヒタの言っていた窪みを探した。
窪みはだいぶ下の方にあり、窪みより洞窟と表現した方がいい様な見た目をしていた。
気を付けながら進み、洞窟に辿り着く頃には、レイナは肩で息をしていた。
「ハァ、ハァ、」
浮遊魔法覚えよ
そう思ったのは言うまでもない。
「ソウも連れてくればよかった」
ソウの風を操る能力を思い浮かべながら、洞窟の奥へと進んでいく。
薄暗い中、いきなり明るい場所に出た。
「うわぁ…」
そこは、思わず声が出てしまうほど美しかった。
地面には新緑色の草と薄いピンク色をした可愛らしい花が生えており、歩くとサクサクと音がする。
壁には蔦が生えており、その隙間から色とりどりの宝石のような石が覗いている。
天井には黄色の果実がなった植物が垂れてきている。
ボーッと見ていると、レイナはあることに気がついた。草も花も蔦も石も果実も植物も光っていないのに、何故か明るいのだ。
不思議に思い周りを見ると、空気中に光っている物が浮かんでいることに気がついた。
それは優しい温暖系の色で光っている。
ずっと見ていたかったが、仕事がある為花を何個か摘み、瓶の蓋を開ける。すると、空の瓶の中に光が入っていった。
「これでいいのかな?」
レイナは瓶の蓋を閉め、洞窟を出て崖の上へ向かった。
「ゼェ、ハァ、」
帰りは登るため行きよりも辛い。
辿り着くなり座り込んで肩で息をしているレイナを見て、ヒタが近ずいてくる。
「大丈夫か?」
「大、丈夫、です」
レイナは息を整えると、取ってきた花と小瓶をヒタに渡した。
「窪みの奥はどうだった?」
ヒタが水を差し出しながら訊く。
「とても美しかったです。上から実のなった植物が垂れていたり、壁には色々な色の石があったり、地面には草花が生えていたり…あと、なんか空気中に光っているものが浮かんでいたり」
「やはりフユは視える方じゃな」
ヒタがレイナが洞窟に行く前に言ったことと同じことを言う。
「見えるってなんなんですか?」
「フユが洞窟で視た光は、実は魔法使いの特定の者にしか見えないものなんじゃ」
「特定の者?」
レイナが訊くと、ヒタは立ち上がりながら言った。
「この話は少し長くなる。薬草は撮ってもらったし、家に戻ってから話そう」
ヒタは家に着くと、薬草と瓶を机に置き話し出した。
「この話は殆どの者が知らないだろうし、恐らくそこら辺に売っている本には書いていない話じゃ」
「そうなんですか?」
何故そんな話を知っているのだろうか?
レイナはそう思いながらも、ヒタの話を聞いた。
今日2話目でした。
この話書いてる途中に全部消えて、1回スマホをぶん投げそうになりました(笑)
ここまで読んでいただきありがとうございましたヾ( ˙꒳˙ )
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