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それから20年後…

大阪 ミナミ

某クラブ



「ご指名ありがとうございます! 真美で…す。」


この真美という女を指名したのはダボついた派手なシャツにスラックス、金のネックレスを着けた任侠映画にでも出てくるようなあからさまにガラの悪いチンピラ風な男、そしてその隣には特注なのか見慣れない派手なスーツに身を包み、しかめた顔をしながら女に視線を送る少し大柄な男の二人組。


大柄な男は異様な威圧感を放ちながら店のソファーに腰掛けていた。


指名した女の姿を見てチンピラ風な男が口を開く


「お!毎度!萬田金融ですぅー!わざわざこっちから店まで出向いて指名したったでぇ!事務所になかなか顔出さんからほんま心配したわぁ…ほな!楽しい夜にしてもらおかー!」




「ちょ…ちょっとなんぼなんでもお店まで来るのはやめてくださいよぅ…」


「わざわざ店にまで来させとんのはそっちの方やろが。利息の支払いの期限!とっっっくに過ぎとんのやぞ?」


「声が大きいですって!皆に聞かれてしまうでしょ…」


「利息分も支払わんと!誰かに聞かれて恥ずかしい事しとるのはお前の方やろ!わざわざ店まで出向いて指名までしたってんねやから、サービスしてやぁ」


「い、今ほんまに手元にお金が残ってないんです…。父親が突然倒れてしもうて、急な入院費が必要になって。だから…もうちょっとだけ待ってもらえませ…」


「高岡はん!そないなでまかせ。ワシには通用せえへんでぇ。」


一際、ドスの効いた声でもう一人の男が女の言葉を遮ぎった。


「ま、萬田さん…」


「兄貴!この女!利息分支払われへんとかふざけたことぬかしとるんですわ!」


「どうせあんたの事や…。そのへんの男かホストにでも貢いで散財したんやろ。こっちが何も知らん思って同情買おうとしたかてそうは行きまへんでぇ。」


「なによ!そんな事言われたかて無いもんは無いんや!無いもんをどないして支払え言うんや!」


「ほーら!本性あらわしよった!開き直りよってからに!」


チンピラ風な男が豹変した女の態度を煽るかのごとく言葉を重ねる。


「ほな、今からソープにでもいって働いてもらおか。あんたやったらその気になれば一晩で30万くらいは稼げるやろ」


「そ、そんなん…無茶やわ!」


突飛押しもないその提案に動揺する女


「何が無茶や、今のあんたに選択肢なんぞあらへんのや。」


男は表情を変えず当然かのごとく冷たく女にそう言い放った。




コツコツコツ…


異変に気付いたもう一人のクラブの女が男達のテーブルに近づいて来た。


「あの!失礼ですが、先程からなんや騒がしいようですけど。うちの真美がお客様に何かご迷惑おかけしましたでしょうか?」


「あぁ!明香先輩ー!助けてくださいぃ!私この人らに脅されてるんです!」


「なんやとぉ!このアマぁ!兄貴ぃ!」


「…………。」


兄貴と呼ばれる男は割って入ってきた女の物怖じしない態度と強い口調、その姿を目にし沈黙した。


「あ、兄貴ぃ…?」


少し間をおいて口を開いた。


「迷惑も迷惑。大迷惑かけられとりますなぁ。ワシこの女に300万の金貸しとりますんや。それが利息分の支払いもできひん、そない言うから支払えるような金策をこっちから提案したってるんやないか。」


「こ、この人ら私に今すぐ体売って働いて返せってそんな事言うんです…!」


一連の話を聞いたもう一人の女は呆れたように口を開いた


「ふっ…そういう事ですか…。 たかだか300万ぽっちのお金返して貰われへん言うてこないに騒いで! 女をソープに叩き売ろうとするなんて…あんたらも、ちっさい男やなぁ!」


「なんやとぉー! 借りたもん返さん人間の方が根性腐っとるんと違うんかいー!!!」


女の言葉が癪に触ったチンピラ風な男が更に声を荒げた。

それに負けじと間髪入れず女も反論する。


「ほんまやかましいなぁ!300万くらい私が払ったるわ!」


「……な、なにぃ…?」


「それで文句ないやろ?300万きっちり用意してあんたらのとこに払いにいったるわ」


「いや、先輩…そこまでしてもらわんでも!」


「助けて言うてきたんはあんたやろぉ?黙っとき!」


「そやけどこれは私の借金です!」


「今更なに見栄張ってんの!そしたらあんた返せる当てでもあるんかいな?」


「いや、それは……」



「あの、兄貴ぃどないしまひょ…」


それまで強気に出ていたチンピラ風な男は反論の余地がなくなり途端に弱気になった。


兄貴と呼ばれる男は表情を変えないまま口を開いた


「ふ… どないもこないもあらへん、金さえ払うてもろたらこっちはそれでええんや。あんたの後輩の借金は今からあんたの借金や。利息はトイチやで。」


「ト、トイチて…上等やわ!お金は明日きっちり用意して持っていったるわ。」


「そうでっかぁ…言うとくけど300万言うのは元金の事や。利息分と合わせて360万。きっちり耳揃えて返してもらうで。それにワシはまだあんたの事信用したわけやあらへんからな。」


「心配せんでも…どんなことがあったかて約束は守ったる。もし約束破ったらその時は、私の事売り飛ばすなり、なんなり好きにしたらいいわ。」


「ふっ…ほな、今日のところは帰らせてもらいまっさ。竜一、行くで。」


「え……?へ、へい!」



「ちょっと待ちぃ!お金返しに行く言うてる相手に自分の名前も名乗らんと帰るつもり?それはなんぼなんでも失礼と違う?」


「ふっ、名乗らんかてあんたはワシの事よう知ってるはずや…。」


何かに勘づいたかのように男は怪しい笑顔を浮かべた。


「はぁ…?どういうことやの!」

男の意味のわからない言葉に困惑する女。


「ほな、明日待ってるで。」

男はチンピラ風な男を残し、一人クラブをあとにした。


「ちょっと兄貴ぃ! あ!あんた事務所の場所は後輩が知ってるから聞いて来なはれ!ほな!

兄貴ぃー!待ってください!」


もう一人の調子のいいチンピラ風の男が急いでその後を追いかけクラブを飛び出していった、


“あ、ありがとうございましたぁ。”


クラブのボーイは少し困惑した様子で嵐のように去っていった二人組を見送る。


「せ、先輩、ほんまにごめんなさい…。 私こんなつもりなかったんですぅ!」


「こんなつもりもどんなつもりもあるかいな!あんな暴利な闇金からお金借りるやなんて!ほんま信じられへん!アホにも程があるわ!!」


「だってぇ…。」


「だってもクソもないわ!今回の事であんたもさすがに懲りたやろ!男に入れ上げてお金でものにできるやなんて思ってる、その根性がこういうドツボを招くんや!真面目に働き!男はその後や!」


「はい!もう二度とこんなアホな真似しません、これからは真面目に仕事します!!!で、でも!ほんまに300万もの大金大丈夫なんですか?あの男の取り立て…ほんま鬼みたいにえげつないんですから…。」


「ふっ私も伊達にこの世界で働いてないわ。 これでもそこそこ稼いでるし、貯えかてある、300万くらいのお金どうってことあらへん。」


「先輩神様や……ほんまにありがとうございます!!!この埋め合わせは一生かかってでもさせてもらいます!!」


「また調子のええ事言うてぇ!あんたのこと全然信用してないからなぁー。とにかく!仕事に戻るで!」


「ほんまですってばぁ!それはそうと先輩…あの”萬田”いう人のこと知ってはるんですか? “ワシの事よう知ってるはずや”とか帰り際に言うてたけど…。」


「え、今なんて言うた?」


「え?だから”ワシの事よう知ってるはずや”って言っ…」


「そ、そうじゃなくて! その前のあの男の名前…。」


「え………。だからあの人は萬田金融の”萬田”いう名前です…。」


「萬田…。下の名前って?」


「下の名前?確か…… “萬田銀次郎”やったと思いますけど…。なんかミナミの鬼とか呼ばれてめちゃくちゃ恐れられてる街金らしくて…私お金借りる時そんなん全然知らんかったんです…。」




“萬田銀次郎…”


まさかあの萬田くん…


いや、そんな訳……。




忘れもしないその名前。

まさかこんな場所で再び聞く事になるとは思いもしなかった。

果たせなかったあの約束をした日の事が鮮明に思い出される…。


特別な存在として心の中に閉まっていたその少年が


“ミナミの鬼”と呼ばれるような男なってるなんてそんな事…




ミナミの鬼の煉慕

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