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ゼロも同じ事を考えているようだ。
課題は残ったものの、兵士達は回復温泉で、体力全快。身も心もさっぱりして、スキル習得に集中して励んでいる。こっちはもう放っておいて良さそうだ。
そう、問題は王子様ご一行の方なんだよ。
さっきから延々と同じ所をぐるぐるぐるぐると飽きずに廻っている。頼むから気付いてくれ。どうしたらいいんだ、ホント。
こう言っちゃなんだが、王子様もユリウスも、鎧達も口程にもないな。
「ゼロぉ、どうする?」
「うーん、まさかこうなるなんて予想外だったよね。時間制限とか決めたがいいかもね」
よし、それで行こう。
「それ、アナウンスしてくれ。エリカ姫もあんまり待たせられないだろ?」
だよね、とマイクに向かうゼロ。
「皆さん、ダンジョン侵入から5時間が経過しました。タイムアップのため、リタイアです。残念でしたね。またのチャレンジをお待ちしております」
応接室に戻った王子様は「時間制限があるなんて聞いてなかったな」と残念そうだ。
そりゃそうだ、申しわけないが今決めた。
「その、実はみなさん無限ループに入ってしまわれたので、強制終了したんです。実は、2~3時間でクリアする想定でした」
ガックリと肩を落とす、王子様と鎧達。ゼロもはっきり言うなぁ。
「無限ループか……タチが悪い」
造った時は、無限ループにするつもりはなかったんだ。同じ別れ道を常に同じ方向に曲がるとは思わなかったんだ! と言ってやりたい。
「えっと、通常はここでお帰りいただく予定なんですけど、折角視察に来て下さってるのでクリア後のご褒美ルームも見てくれませんか?」
ゼロは王子様の発言を華麗にスルーすると、ご褒美ルームへと案内した。
薄暗いダンジョンとはうって変わって、明るい森と草原が広がるご褒美ルーム。それだけで気分は嫌でも明るくなる。視覚効果ってやっぱり大事なんだろうな。
美しいエルフと談笑する兵士達を、鎧達は羨ましそうに見ている。まぁ、見た目は楽園のごとしだが、実際はマンツーマンのスパルタ教育でスキル習得中なんだがな。
「ダンジョンをクリアした人は、ここでいくつかのご褒美が貰えます」
ゼロが簡単に説明する。ご褒美の内容は纏めるとこんな感じだ。
1.特別な効果がついたアクセサリーをプレゼント
2.エルフの3時間家庭教師サービスチケットをプレゼント
3.回復温泉入り放題
4.駆け出し用ダンジョンクリアの冒険者限定、聖水プレゼント
しかも冒険者なら、カエンのギルドで依頼を優先的にまわして貰えるオマケつきだ。これは冒険者であれば地味に嬉しい特典だろう。
王子様にも気付かず、必死でスキル習得に励む兵士達を見て、王子様は少しだけ機嫌をなおしたようだった。
「マスター、たしかゼロって言ったっけ? 少し話したい事があるんだ。応接へ案内してくれないか?」
エリカ姫と鎧達を先に城へ帰し、応接室には今、王子様とユリウスが残っている。
こちらはゼロと俺。カエンにも中立の立場で参加して貰っている。残念だがルリとユキはマスタールームで待機だ。ダンジョンに人がいる以上、マスタールームは無人にはできない。
王子様は優雅にお茶を飲み、目を閉じて香りを楽しんでいるようだ。早く本題に入りたい所だが、相手は仮にも王族。ここは我慢だ、と思ったら。
「ところでアライン様、お話って何ですか?」
ゼロがストレートに切り出した。ゼロって変な所で遠慮がないよな。
「そうだな、まずはお礼を言わなきゃね。ゼロ、今日は本当にありがとう」
えっ!?
「今日は久しぶりに自分の未熟さを思い知ったよ。まさか駆け出しレベルのダンジョンですら踏破できないとは思わなかった。護衛の者達にも、良い刺激になったと思う」
隣でユリウスが深く頷いている。
「これからも、兵士の訓練にぜひ利用させて欲しい」
意外だ。ダンジョンでそこそこヒドイ目にあったのに、王子様はむしろ高く評価してくれたらしい。
「実は僕、父上から、ゼロはまだダンジョンマスターになって4~5日の筈だって聞いてたんだ。正直こんなにしっかりしたダンジョンだと思ってなかった」
確かに、普通にこれだけの設備を整えようと思えば数ヶ月かかるだろう。想像出来なくて当たり前だ。
「ダンジョンマスターと手を組むって言うのも理解できない、って思ったしさ。だからさ、はっきり言うと敵情視察に来たつもりだったわけ」
うわ、思いっきりぶっちゃけたな。そして、カエン、大爆笑。
「おめーはもう、相変わらず歯に衣着せねえなぁ!」
「隠してもしょうがないでしょ」