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笑われて憮然とした表情の王子様。対してカエンはいつものニヤニヤ顏だ。
「で? 実際に見てこのダンジョン、どう思った?」
「敵にまわすと怖い」
王子様は真剣な表情で唇を引き結び、その後、華やかに笑った。
「味方なら、こんな面白いこと無いんじゃない?」
その輝くような笑顔が恐ろしい。うわぁ、もしかして面倒なのに気に入られたんじゃないのか? これは。
「とにかく、僕は気に入った。これからは兵士の訓練兼ねて、ちょくちょく寄らせて貰うよ」
それでね、と王子様は腹黒感たっぷりのスマイルを見せる。いったいぜんたい、どんなムリを言うつもりなんだろう。オレは内心思いっきり身構えた。
「僕の名前を貸す代わりにさ、このダンジョンの中に練兵場を造ってくれない?」
「名前を貸すってどういう意味ですか?」
ゼロが素直に聞き返す。うん、俺もそれが気になってた。練兵場は前に王様も似たようなこと言ってたってカエンに聞いてたし違和感ないけど、名前を貸すってのが分からない。
「エリカが入った超初心者用は、冒険者じゃない街の人にも公開するつもりだって言ってたよね? でも普通はさ、わざわざ危険な場所にお金払ってまで入らないよ?」
……確かに。
「でも、話題性があれば別でしょ?……アライン王子とエリカ姫御用達って冠、自分で言うのもなんだけど、効果絶大なんだよね」
カエンも不本意そうに、まあなぁ……と同意している。
「しかも、本人に会えるかも、ってのがあると足運ぶ人は相当いると思う。どう? 魅力的じゃない?」
なんと言うか、自分の利用価値をこれ程はっきり言うのも珍しい。それでも、王子の肩書きをかさにきて、とにかく言う事をきかせようというバカよりは数段マシな気がする。少なくとも取引しようという意識があるのはむしろ安心できる。
ゼロは、どう思ったんだろう。
チラリと横目で様子をうかがうと、ゼロは真剣に考えこんでいるように見える。こんな時は多分、話題になってる事以外にも色々思いついて、トリップしているんだ。
こうなると暫く戻ってこない。
仕方なく、王子様にも事情を話し、俺オススメのアップルパイを食べて貰いながら、ゼロの考えが纏まるのを待った。
庶民の行動を文句も言わず待つという、この変わった王子様。本当に結構信じていいんじゃないか?
不機嫌になるでもなく一緒にアップルパイを美味しそうに食べている王子様を見ながら、俺はそんな事を考えていた。
暫くして、ゼロがバッと顔をあげる。
「練兵場、いいと思います! 兵士の人達、何人位いますか? レベルってどれ位ですか? 週に何日位来る感じですか?」
いきなりの、あまりの勢いに、王子様もビックリだ。それでもゼロの矢継ぎ早な質問に答えてくれようというんだろう、ちらりとユリウスを見あげて頷いた。
ユリウスはそれに応えるようにひとつ頷くと、ゼロの質問にすらすらと答えていく。
「今、城とこの街に配備されている兵なら、合わせて100名ほどだろう。レベルは様々だが、殆どがレベル15以上だ。先程の新兵は特殊な例と認識して欲しい。週に何人、何日位来るかは……」
ここでユリウスは王子様に視線を戻した。彼は判断する立場にないという事だろう。
王子様も、「さすがに父上に相談しないと」と口ごもる。
「そっか、そうだよね。えと、じゃあ街やお城の兵士なら、モンスターよりも人タイプとの戦闘訓練が必要ですか? 僕、聞きたい事、いっぱいあって……」
もうゼロの頭は、どういう練兵場にするかでいっぱいのようだ。でも、王子様だってまだ明確な構想や意思が有るわけがない。なんせ今日思いついたんだろうし。
そんな様子を見てカエンが苦笑しつつ、場を収める。
「ゼロ、練兵場は王の考えも盛り込みてぇ。あいつも楽しみにしてんだ。考えを纏めてくっから、2~3日くれねぇか?」
王子様はホッとした表情をみせたが、甘いな。案の定ゼロはキラキラした瞳でこう告げた。
「うん、わかった! もう、すっっっごいの!! 考えてきてね。僕、楽しみで眠れないよ」
ハードルがスゲぇあがったな。ご愁傷さま。
王子様が頭を抱えたまま帰り、やっとダンジョンには平和が戻った。カエンも王様と相談するために、王子様に同行している。
まぁ、まだレッスン中の兵士達は居るものの、こっちはエルフ達に任せて放っといていいしな。
「ああ~……緊張した」
「さすがに疲れたな」
気疲れがひどかったんだろう、あまりにもゼロがぐったりした表情だったから、そのままカフェでひと休みするかって話になって、俺たちは一つの席を囲んでようやくゆっくりとくつろげた。
あ~……紅茶が旨い。
思えば俺が召喚されて、まだたったの5日だ。5日間で色々あり過ぎなんだよ。さすがにちょっと疲れた。