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光に目が慣れてくると、景色が目に入ってきた。
辺り一面の緑、芝生のようだ。ふと自分の体に目やると、さっきまで着ていた服ではないことに気がついた。
いわゆる「冒険者」の服だった。なぜこんな服を着ているのか、そもそもここはどこなのか、俺は一旦、今までの経緯を思い返してみることにした。
俺の名前は星澤彰、大学中退の20歳だ。俺はさっきまでニート生活を送っていた。自分の部屋のパソコンを使ってゲームをしていたのだ。そして気づいたらこの世界に。
理解が出来ない。なぜ俺はこんな場所にいるのだろうか。
とにかく歩きながらこれからどうするか、考えることにした。数十分ほど歩いていると門のようなものが視界に入った。
「街でもあるのか?」
と言いながら俺は門の前まで行った。
門の前に立っていた2人の男が門を開けてくれた。男たちは鉄製の鎧に槍という典型的な門番の姿をしていた。
「やはりここは異世界なのか…」
と実感していた。門をくぐるとやはりThe異世界という感じの街並みだった。時代はお決まりの中世といったところだろうか。
とはいえすることなどないので適当に街でも歩いてみる。文字は読めないが言葉は通じる。両方通じないとマジで詰むので言葉の方が通じて助かった。
まあとりあえず宿屋で1泊…と宿屋へ向かっているととある考えが頭をよぎった。
「金ねえ…」
ポケットに手を突っ込んでも空で、金は1枚も出てこなかった。財布は自室に置きっぱだったのでこの世界には持ち込めていない。
まあ現世の金が使えるとは思えないが。
野宿も視野に入れ散策を続けることにした。
歩くこと数十分、あたりは商店街のような感じになってきた。途中、果物屋の前を通り、リンゴのようなものを目にした俺は空腹感を感じながらも進んでいく。すると、
「!?!?!?」
背中に強い衝撃が走り、俺は思わず倒れ込んだ。急いで顔を上げるとものすごい勢いで走っていく男が目に入った。恐らくぶつかったのだろう。
「全く勘弁してくれよ…」
少し汚れてしまった服を砂を払いながらぼやく。早く人混みを抜けたいと思い少し早歩きになりながら進んだ。
すると巨大な建物が目に飛び込んできた。
俺はオタクだから分かる。見た目は完全に冒険者ギルドだった。
周りの建物と比べても明らかに異質で存在感のある建物で入口付近には紙が数枚貼ってある。文字と顔写真、恐らく手配書の類いだろう。俺はとりあえず入ってみることにした。
ドアを開けるとこれまたアニメなのでよく見た光景だった。いかにもギルド、冒険者たちが集う場所であった。
ギルドに来たらやることは1つ…
「依頼を受ける!」
俺は受付へと向かって行った。
「ようこそ!冒険者ギルドへ!私は受付のミアと申します」
受付嬢から声をかけられる。
綺麗な黒髪で見た目も声も美しい女性だ。恋愛ゲームならば正統派ヒロインって感じの見た目だ。
「本日はどういったご要件で?」
「自分お金を持ってなくて…それで仕事探しに」
「それならまずは冒険者登録を致しますね」
冒険者登録という言葉に俺の胸がおどる。ゲームのような世界に来たと実感した。
「それではお名前を教えてください」
名前…ゲームの世界ではだいたい「名前・苗字」という順番である。一応そのルールに合わせておく。
「それではアキラ様、少々お待ちくださいね」
冒険者になれるとわくわくしながら待つこと十数分、
「アキラ様、こちらの部屋にお入りください」
そう促され入った部屋は小さな応接室のような感じで、椅子が4つとテーブルがある部屋だった。
「お待たせ致しました。冒険者登録が完了しましたので諸々説明させて頂きますね」
「おねがいします」
そう言うとミアが説明を始めた。
「これからアキラ様は冒険者ですのでギルドで依頼を受けてもらうことができます。受けたい依頼がありましたら受付横の依頼リストをご確認ください」
ミアは続けて…
「ですが依頼には難易度によってランク付けされています」
「ランク?」
「はい。ランクにはアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、エメラルド、ダイヤモンド、マスター、ロードの9種類があります。基本的には自分のランクまでの依頼を受けることができます」
「どうやってランクをあげるんですか?」
「依頼をこなすなどしてギルドに貢献して頂ければ昇格させていただきますよ」
そう言うとミアは1枚のプレートをアキラに差し出す。
「えっと…これは?」
「これはアキラ様のランクを示すプレートです。依頼受注の時に使用しますのでお持ちください」
プレートを持ってみると軽く、『アキラ・ホシザワ rankアイアン』と印字されていた。
「あとこれもお渡しします」
そう言うと次はソフトボール位の大きさのビー玉のようなものを出した。
ミアは説明を始めた。要約するとこうだった。
このビー玉のようなものの名前は『魔物討伐記録装置兼アイテム収納拡張器(通称 ギルドオーブ)』
このアイテムの昨日は名前の通り2つある。
1つ目は魔物を討伐したことを記録する効果。討伐依頼の場合倒した魔物をカウントし受付に確認してもらうことで報酬を受け取ることができる。また、ギルドオーブを持ちながら念じることで倒した魔物の記録を確認することが出来る。
2つ目はアイテムを収納する効果。こちらもギルドオーブを持ちながら念じることで収納しているアイテムの確認や出し入れをすることができる。入る量の上限はないそうだ。そして倒した魔物の素材は自動的にオーブに収納される。
といった感じのようだ。随分便利なアイテムである。
「これで依頼を受けることができますよ。受付の隣から依頼の紙を持って来てくださいね。」
そう言うとミアは受付のカウンターへ戻って行った。
「さーて、どんな依頼があるかな?」
とはいえ今はランクの1番下、それに武器のひとつも持っていないアキラが選んだ依頼は…
「薬草の収集!安全そうでいいなこれ!」
アキラは依頼の紙を剥がすと受付に持っていく。ミアの手際はとても素早くものの数十秒で受注された。
「それでは依頼、頑張ってくださいね」