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廊下の奥から、ドアが勢いよく開く音がした。
「おーい悠真! 遅せぇよ!」
部屋着姿の亮が顔を出し、玄関に立つ悠真を見てニヤッと笑う。
「せっかく来たんなら連絡ぐらいしろよな」
悠真は肩をすくめて、「ごめんごめん」と笑った。
その自然なやりとりを見て、咲の胸は少しざわついた。
(……やっぱり二人は“親友”なんだな)
「咲、ありがとな。呼んでくれて」
亮に軽く肩を叩かれ、咲は慌てて「う、うん」と答える。
さっきまで胸を占めていたドキドキは、兄の登場によって霧のように薄れてしまった。
でも――ほんの一瞬でも悠真と目を合わせたときの熱は、まだ心の奥に残っていた。