テラーノベル
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「じゃ、咲。俺らちょっと部屋で話してくるわ」
亮がそう言って、悠真を連れて奥へと消えていった。
閉まったドアを見つめながら、咲は小さく息をつく。
(……もう少し、話したかったな)
ほんの数分、挨拶を交わしただけなのに、胸の奥はまだざわざわしていた。
「妹ちゃん、大丈夫か?」――その声が、耳の奥に残って離れない。
勉強机に戻ると、問題集のページが白紙のように見えた。
ペンを持つ手は動かない。
(会えたのに、余計に会いたくなるなんて……どうしたらいいの)
窓の外、冷たい風がカーテンを揺らしていた。
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