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葛葉に会いたい。
触りたい。
キスしたい。
身体舐めたい。
挿入れたい。
葛葉で満たされたい。
騒音と言っても過言ではないほど、賑やかな音がひしめき合う店舗から一歩外に出る。
スロット店に入ったのはまだ日も陰らない時間だったが、辺りは既に夜の街へと変わっていた。
久しぶりのスロットだったが、早々に軍資金が半減。
しかも、居座れるように喫煙可のエリアへ入ったのだが、負ければ当然吸う量も増えるもので、手持ちのたばこスティックが底をついてしまった。
これはもう止め時だと悟って店から出てきたものの、これからどうするか迷う。
(葛葉まだ帰って来ねえかな…)
恋人と会えていない日数は、今日で10日目に突入していた。
自分も集中しないといけない仕事があったのだが、葛葉は更に多忙だったようで、昨夜のメッセージによると今も相方の叶さんとどこかで何かをしているのだと思われる。
葛葉は自分のスケジュールを事細かには教えてくれない。
そもそもお互いに不規則なスケジュールなので、俺が会えるタイミングで連絡しては、葛葉が反応して会えたり会えなかったりというのが常だった。
それでも今まではお互いの隙間時間が噛み合って、3~4日に1度は会えていたわけで、今回は仕方のないことだとは言え、かなりフラストレーションが溜まっていた。
帰るにしろどこかへ行くにしろ、もくを切らしていては生命に係わるので、ひとまず補充するためにコンビニへ向かう。
普段ならスロットで負けたらさっさと家へ帰るところなのだが、今日はわざわざ葛葉の家の近くにあるスロット店に来ていたので、帰るわけにはいかない。
というのも、昨夜のメッセージで、今日の仕事が終われば数日ゆっくりできると言っていたのだ。
帰宅したらすぐに連絡するように言ってあるので、とにもかくにもすぐに家へ向かえるよう、近くまで来て時間を潰していた。
ただ、時間つぶし兼憂さ晴らしに入ったスロット店で、もくを早々に切らすことになるとは思わなかった。
自分も仕事が1つ終わって明日まで特に用事が無かったから、たまにはいいかと入ったのがいけなかったのだ。
葛葉と会えていれば、スロットで憂さ晴らししようなんて思わなかっただろうに…いや、あいつのせいにしてはダメだ。
葛葉の忙しい日常に恋人としての俺が入り込むだけ、と、自分で言ったのだ。
お互いに無理しすぎて体調を崩すわけにもいかない。
スロに負けたのも、もくを切らしたのも、不幸なことではあったが、今日葛葉に会うための代償だと思えば受け入れられる。
やっと300m程先にコンビニを見つけたところで、メッセージの通知が入る。
ポケットからスマホを取り出して確認すると、葛葉からだった。
<葛葉
〘 いまどこ 〙
「?」
なぜ俺の居場所を聞いてくるのだろうか。
もう家に帰ったのか?
だったらすぐにでも家へ向かおうと思い、電話をかけてみる。
「ローレン」
「葛葉もう家に帰ったん?」
「何で家に居ねぇんだよ」
「?…葛葉にすぐ会いたいからだけど?」
「は?じゃあ家に居ろよ」
「は?」
「今どこに居んだよ」
「…葛葉の家の近くだけど」
「…はぁ!?」
「葛葉どこに居んの」
「………ローレンの家の前だよ!」
ぶつ、と、電話を切られてしまった。
会話の内容が理解できない…どういうことだ?
葛葉は何故俺の家の前にいるんだ?
…俺に会いに来た?って、ことだよな?
でも、帰宅したらすぐ連絡しろって言っていたのに、その連絡はなかった。
ってことは、まだ帰宅していない?
「………まさか、仕事終わりに直接俺ん家行ったのか?」
未だに混乱しているが、とりあえず葛葉の家の最寄り駅に行くことにする。
葛葉がこちらへ向かっているのなら、自分が下手に動くと行き違いになってしまう。
確実に通過するであろう駅で待つのが得策だ。
俺は急いでメッセージを送り、駅へと走った。
<ローレン
〘 ●●駅の大時計で待ってる 〙
ローレンの家から自分の家へ向かうために地下鉄を目指して走っていると、スマホの通知が鳴った。
俺の家の前で待っているかと思っていたが、駅で待つ方が早く合流できると判断したようだ。
家に帰ったら連絡しろと言うから、てっきり自分の家で待っているものだと思っていたのに、ローレンの行動を読み誤ってしまった。
いや、自分がガラにも無いことをしたのがいけなかったのだ。
とにかく、1本でも早く電車に乗るために、スマホを手に再び走りだした。
ローレンに会いたい。
触りたい。
キスしたい。
キスマークが欲しい。
セックスしたい。
ローレンで満たされたい。
大時計の傍に立ったまま、葛葉を探し続ける。
俺の家から最寄り駅までの時間と、地下鉄に乗っている時間を考えると、そろそろ着いてもおかしくない。
電話では怒っていたが、恐らく、家に居なかった俺が悪いのだ。
早く見つけて、抱きしめて、ごめんと言って、キスがしたい。
何度も人ごみを見回しているうちに、かなり遠くからこちらへ走ってくる人影が見えた。
黒髪に黒いキャップ、色付きの眼鏡という格好だが、遠目でも変装した葛葉だと分かる。
真っすぐに葛葉をとらえたまま、俺も走り出す。
自分も、長いうえに目立つ色の髪をウィッグの中に隠して変装しているのだ。
人に見られようと構わない。
葛葉もこちらに気づいたようで、お互いに目を合わせながら走る。
そして、この腕の中に抱きしめた。
「葛葉お帰り。何かごめんな」
「………ローレン…煙臭ぇ!」
ぐいと胸を押されて葛葉が離れた。
「お前こんな臭くなるまでどこにいたんだよ!」
「あー、それもごめん。もくOKのとこでスロットしてた」
「なんで」
「えーと、葛葉から連絡が来たらすぐ家に行けるように、葛葉の家の近くで時間潰してました」
「はぁあああ…」
盛大な溜息をつかれてしまった。
えーと、これは…。
「葛葉は何で俺の家に行ったの」
「…………………………会いたかったから」
「え?聞こえん」
「だから!俺も早く会いたかったんだよ!帰ったら連絡しろって言うから、家で待ってると思って急いで行ったのに、お前居ねぇし!」
やはり、葛葉も早く俺に会うために、仕事が終わってそのまま来てくれていたのだ。
お互いに先走ってしまった結果がこれなのだが、1つ気づいた事がある。
改めて、むくれ顔の葛葉をゆっくりと抱きしめた。
「…………だから、煙臭ぇって」
「ごめんて。家に着いたら葛葉の服貸して」
「………いいけど、その前にシャワー浴びろ」
「浴びます。そんで、葛葉も浴びたら、すぐベッド行こうな」
「………そのつもりだし」
「……………、葛葉、気づいてる?」
「何が」
「これが初めてなんだよ」
「だから、何」
「葛葉から俺を求めてきたの」
「…………………………気づいてるし!!!!」
らしくない事したらこれだよクソが、と、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
自覚があるなら尚更嬉しいんだが。
「これからも、俺を欲しがってください」
抱きしめたまま耳元で小さくつぶやくと、みるみる赤くなっていく耳たぶが目に映った。
【あとがき】
結局は、ほうれんそうって大事だよねってことで。
連載のlrkzで、少し先の話でした。
いつもlrからアクションをかけてkzは受け身だったのが、初めてkzからアクションを起こしたよという話を書きたかった。
後編へ続きます。
リアリティを求めて、外出時は変装という事にしています。
そのおかげか、恋人になる前は人前で抱きしめられるのを嫌がった葛葉が今回は受け入れています。
変装しているとはいえ、イケメン2人が抱き合っているのですから、丁度近くを通りかかった腐女子には眼福だったことでしょう。
ちなみに、店舗禁煙がルール化された昨今ですが、加熱式たばこならスロット打ちながら吸えるところもあるそうです。