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和美はマグカップに口をつけた。
しかし、すぐに飲むことをやめてわたしの方を見る。
「今、好きって言った?」
前のめりになり、目を丸くして聞いてくる。
声が小さかったからはっきりと聞こえなかったのかな。もう一度言おう。
「今まで恥ずかしくて言えなかったけど、好きな人ができて……」
「まじで!?」
和美は笑った時くらいに大きな声を出す。
「誰が好きなの? 教えてっ!」
そして、瞳を輝かせて活き活きとしている。
「えっと……、拓海くん……」
好きな人を教えると、ぽかんと口を開けて更に驚かれた。
「は……? 明香里は拓海のことが好きなの?」
こくんと頷くと、和美は背もたれに寄りかかってから笑った。
「超びっくりした。早く教えてよー。
あたし、恋愛の話大好きだからさ」
よかった……。
恋の話が苦手だったらどうしようかと思ったけど、大丈夫みたいでほっとした。
「そうだ! あたしがチャンスを作ってあげよっか。
拓海は水曜日の昼休みに食堂でチョコレートムースを食べるんだって。曜日限定みたいでさ。
ひとりでこっそり食べてるらしいから、その時を狙おう」
「話し掛けるチャンスってこと?」
「拓海と明香里、ふたりきりにするから。
まだ連絡先を交換してないでしょ?」
「うっ、うん……。でも……」
「あたしが明香里の代わりに聞くっていうのもありだけど」
「ううん……。わたしが聞く」
「じゃあ、決まり! 上手くいくように頑張ろう、明香里」
どこまでも頼りになる親友だ。和美の優しいところも尊敬している。
次の週の水曜日。
昼休みになってから和美と一緒に大学の食堂へ向かう。
賑わっている中、拓海くんを探すと、窓際のテーブル席にひとりで座っていた。
近づいてみると、テーブルの上にチョコレートムースが二個置いてある。
「チョコレートムース食べてるって、まじだったんだね」
「うわっ、和美!?
他の人には秘密だって言っただろ」
「いいじゃん。明香里くらい。
……あっ! 教室にペンケース忘れちゃった!
明香里はここに座って待ってて」
和美はわたしを椅子に座らせたあと、にっと笑い、手を降って去っていった。今日は授業がないからこのまま帰るらしい。
「あいつ、ドジだよなー」
「そっ、そうかな……」
いざ、ふたりきりになると緊張してうまく話せない。
「チョコムース、一個余ってるけど食べる?」
「えっ、いいの?」
「二個あるから。せっかくだし、食べてみてよ。めっちゃ美味いから」
「ありがとう」
好きな人からプレゼントをもらって嬉しくてたまらなかった。
ドキドキしながらチョコレートムースを食べて窓の外を見ると、小鳥が青い空に向かって飛んでいた。
恋をしてるっていいな。
怖いけど、幸せで……。
鳥がはじめて空を飛ぶ時もこんな気持ちなんだろうか――