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姫音❄️🪽
瀬名 紫陽花
和美はマグカップに口をつけた。
しかし、すぐに飲むことをやめてわたしの方を見る。
「今、好きって言った?」
前のめりになり、目を丸くして聞いてくる。
声が小さかったからはっきりと聞こえなかったのかな。もう一度言おう。
「今まで恥ずかしくて言えなかったけど、好きな人ができて……」
「まじで!?」
和美は笑った時くらいに大きな声を出す。
「誰が好きなの? 教えてっ!」
そして、瞳を輝かせて活き活きとしている。
「えっと……、拓海くん……」
好きな人を教えると、ぽかんと口を開けて更に驚かれた。
「は……? 明香里は拓海のことが好きなの?」
こくんと頷くと、和美は背もたれに寄りかかってから笑った。
「超びっくりした。早く教えてよー。
あたし、恋愛の話大好きだからさ」
よかった……。
恋の話が苦手だったらどうしようかと思ったけど、大丈夫みたいでほっとした。
「そうだ! あたしがチャンスを作ってあげよっか。
拓海は水曜日の昼休みに食堂でチョコレートムースを食べるんだって。曜日限定みたいでさ。
ひとりでこっそり食べてるらしいから、その時を狙おう」
「話し掛けるチャンスってこと?」
「拓海と明香里、ふたりきりにするから。
まだ連絡先を交換してないでしょ?」
「うっ、うん……。でも……」
「あたしが明香里の代わりに聞くっていうのもありだけど」
「ううん……。わたしが聞く」
「じゃあ、決まり! 上手くいくように頑張ろう、明香里」
どこまでも頼りになる親友だ。和美の優しいところも尊敬している。
次の週の水曜日。
昼休みになってから和美と一緒に大学の食堂へ向かう。
賑わっている中、拓海くんを探すと、窓際のテーブル席にひとりで座っていた。
近づいてみると、テーブルの上にチョコレートムースが二個置いてある。
「チョコレートムース食べてるって、まじだったんだね」
「うわっ、和美!?
他の人には秘密だって言っただろ」
「いいじゃん。明香里くらい。
……あっ! 教室にペンケース忘れちゃった!
明香里はここに座って待ってて」
和美はわたしを椅子に座らせたあと、にっと笑い、手を降って去っていった。今日は授業がないからこのまま帰るらしい。
「あいつ、ドジだよなー」
「そっ、そうかな……」
いざ、ふたりきりになると緊張してうまく話せない。
「チョコムース、一個余ってるけど食べる?」
「えっ、いいの?」
「二個あるから。せっかくだし、食べてみてよ。めっちゃ美味いから」
「ありがとう」
好きな人からプレゼントをもらって嬉しくてたまらなかった。
ドキドキしながらチョコレートムースを食べて窓の外を見ると、小鳥が青い空に向かって飛んでいた。
恋をしてるっていいな。
怖いけど、幸せで……。
鳥がはじめて空を飛ぶ時もこんな気持ちなんだろうか――
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