テラーノベル
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#自探索者
ゆむ。
98
#腐向け注意!
テリー・オスト
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コメント
1件
うわあ…もう、冒頭から胸が締め付けられました。特に父さんの「許してくれとは言わない」からの苑良の「愛してたよ」の流れ、涙が止まらなかったです。5年間の憎しみと空白が、真実を知ったことでこんなにも違う形で溢れ出すんだなって。槐の「敵だぞ」と怒鳴る声の裏にある苦しさも伝わってきて…最後の「愛してるぜ、兄ちゃん」、あのセリフには全ての想いが詰まってる気がします。本当に、素敵な兄弟愛でした。
(中編)
前回の続きです
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「なんだ、これ…」
久しぶりに来た実家には霧がかかっていてよく見えなくなっていた
それと、誰かが出入りに使っていたのであろう次元の扉までもが用意されている
覚えのある霊力に顔を顰めながらもそれらを取り去って足を踏み入れた
「ゎっ、?!」
自身のうなじにある霊紋が輝き地面を指し示すとガコンっという音と共に地下への階段が現れる
「これが、隠し蔵…」
トールの呟きが聞こえ、恐る恐る階段を降りていく
階段をおりた先の空間にはびっしりと陣が書かれておりその中心には御剣分家の霊紋が刻まれていた
「これは…」
一歩、足を進めると再び霊紋が輝く
思わず目を瞑り、光が治まってきてからゆっくりと目を開けた
『…久しぶりだな、苑良』
目の前に姿を表したのは、5年前のあの日、炎の中血を流し倒れていた父親だった
「と、ぉさん、」
『降霊の陣はしっかりと発動したようだな。…ここへお前が来たということは、苑良が当主となったか』
父は少し視線を落とし、なんともいえない表情で話し始める
『5年前のあの日、何があったかを話そう……そうさなぁ、何から話したものか…』
あの日いきなりお別れとなった父
伊沙奈に対してどこかよそよそしく、自分や槐に対する時と違うそれになんともイライラしたし伊沙奈を大切にしない父に幼いながらに嫌気がさしていた
それでも父として、御剣分家の当主として憧れも尊敬の念も持っていたと思う
だから突然亡くなって酷く混乱したし今でも伊沙奈の誕生日にはひっそりと命日として伊沙奈には秘密にしながら過ごしていた
『あの日、あの夜。伊沙奈はカミガカリとして覚醒することはできず、にも関わらず封印者として覚醒してしまった。
封印者としての霊力にただの人間である伊沙奈が耐えられるはずもなく自身でその身を燃やしたのだ。それが、あの日の火事の出火元だ』
潤んで揺れる視界を堪えながら、黙って話を聞く
何か返答や声を出せば押し留めている感情が溢れ出ると思ったから
『…私は、伊沙奈の命よりも大炎邪の封印を優先した。だからあの時次期当主候補だった槐に天之尾羽張を渡し、伊沙奈を殺すよう命じた。』
その言葉に強く拳を握り込み爪が掌に食い込むのを痛みで感じる
─伊沙奈だってあんたの娘だろ、たった一人の、娘だろ
そう怒鳴りたくなるのを堪えて、ギリっと嫌な音を立てながら歯を食いしばった
『当然、槐は拒否した。伊沙奈を可愛がったいたしな…槐が断ったことで険悪な空気が漂った時だ。大炎邪が伊沙奈の体に入りその影響で私たちは互いに攻撃しあったのだ。影響されず無事でいられたのは神剣の加護を得ていた槐だけだった。……あの日、私たちは同士討ちで全滅したのだ』
ガンッと硬いもので頭を殴られたような衝撃が走る
喉が焼け付いたように張り付いて、何も言えないその様はまさに絶句と言っていいだろう
─あの日、俺はあの人になんて声をかけた?
“何、してんだよ、兄ちゃん”
“クソ兄貴なんかっ、大っ嫌いだ!!!!”
─何も知らないで
何も見ていないのに
最愛の
尊敬する兄に
俺は何を言った……?
『…槐は伊沙奈に再度封印をかけ隠蔽を行った。そして全ての出来事を自分の仕業に見せかけ、神剣を持って海外へ5年、出ていたのだ。その先で何をしていたのかは分からない。……まぁ、考えるに伊沙奈とお前をこの呪縛から解放する方法を探していたのだろう。それが見つかったから、今回戻ったのだろう。……許してくれとは言わない、許してくれなくて構わない。だが…こんな父親で、すまなかった。』
「っ、ぅ…俺は、…伊沙奈に対して、よそよそしくて、俺や兄ちゃんと違う態度が嫌いだった、でも、……でも、尊敬もしてた……、伊沙奈を殺そうとしたことは、許せないけど…でも、でもッ……愛してたよ、父さん、」
涙をこらえるのは、もう限界だった
ボロボロと涙を流し、必死に袖で拭う。
幼い頃見た兄が来ていた上着に似ていたからずっと着ているものだった
兄を感じられる物を、無意識に身につけていたなんてな
本当は、大声で泣きわめきたかった
でもそれはきっと今じゃないから
あの日いきなり別れることとなった父へ、ずっと言いたかったことを、必死に言葉として紡いだ
あの日いきなり伊沙奈以外の全てを失って、残った伊沙奈はあの日何があったかも何も知らない
兄の最後の姿を見たのも、伊沙奈がどんな状態だったのかを知るもの、全て俺一人だった
何も分からないでただ事実だけ突きつけられて
どうすればいいか分からなかった
ただただ全てを知っているだろう兄を探すだけだった
─なぁ、兄ちゃん、俺あの日のことわかったよ、だからさ、今度こそ教えてくれよ。あんたが、何がしたいのかさ
『……天之尾羽張の力を一時的に封じる秘術を、当主であるお前に授ける。使い所は任せるが、当主としてきちんと務めるんだぞ。』
「……っ、。」
きっと俺は情けない顔をしているだろう
気を張るように釣り上げた眉も、目元にグズグズに泣いた跡があっては格好がつかない
それでもしっかりと父の目を見て頷いた
その様子を見てか、父は少し笑った気がした
すぐに消えてしまったから、定かではないけど
神剣を封じる方法は手に入れた
あとは、槐を、兄をぶん殴ってでも止めるだけだ。
──
─
再び戻った魔境に入るととらたととらきちが倒れていた
慌てて駆け寄り息を確認すると弱くはあるが辛うじて息をしていて少しホッとする
応急手当でも、と思ったところで上から声がかかった
「……戻ってきたのか。苑良。…どうやった?」
冷たい瞳が本殿の上から降り注ぎ拳に力が入る。
ついていた膝をはらいながら立ち上がりあの日の言葉を繰り返した
「答える義理はない、だろ?兄ちゃん。」
「……そうか、まぁ、大体は予想は着くが。……」
「俺は難しいことはよくわかんねぇよ。」
あの頃と一緒で、俺は理解するより見た方が解るタチだった
だからよく兄ちゃんに手本を見せてもらっていたっけ、なんて全く色褪せない思い出を反芻する
「ふ、そうか。……大炎邪の封印が何故本家ではなく分家で行われているか知ってるか?人身御供だよ。封印というシステムは、私欲にまみれているんだ。封印者となったものは高確率でカミガカリとして覚醒する。封印者が死ねば数百年内に新しい封印者が現れる。覚醒せず死んでも次には高確率で霊力の強いカミガカリが現れるんだ。それを繰り返して、カミガカリを増やして大炎邪を消耗させようとした。……俺はそのシステムを壊す。」
槐は長い階段を降りながら、きっとあの日兄が知ったのであろう事実を忌々しげな顔をしながら話す
「だから、お前は協会からの追求と弾劾を避けるため俺を倒さなければいけない。……俺は、お前を倒し目的を達する。」
そう言うと槐は手を振りかざし、いつかの結界について教えてくれた日のように、展開させた
夜空には素早く走る稲光や降り注ぐ光
そして足元に広がるのは、あの時と何ら変わらない広く、暖かい草原だった
まるで、怒りの中に愛と優しさが滲んでいるような風景で
「ははっ、あの頃と、兄ちゃんはなんも変わってないんだなぁ、」
愛しい記憶と変わらない兄の結界に安堵し、同時に心が苦しくなる
変わっていてくれれば、諦められたのに
確かにこの5年間恨んだし憎んだ、あの日も、大嫌いだと怒鳴った
だけど俺は、今の俺は、あんたがあの日何もしてないことを知ってしまったから
あの日から貴方が変わっていないことを確信してしまったから
──まだ、愛してしまったから
「……5年前のあの日から、俺ずっとあんたを探してたんだ、なんで兄ちゃんがあんなことして、伊沙奈がこんな目にあって、なんであんなことになったのか分かんなくて、兄ちゃんが何をしたいのか分かんなくてさぁっ、何かの間違いだったんじゃないかってさぁ、!」
ボロボロと涙を流しながら、下手くそに笑って兄を見上げる
「甘ったれたことを言うな!!!俺は敵だぞ?!!!」
兄は悔しそうに、苦しそうに歪めた顔で俺を睨みつけ怒鳴った
剣先をこちらへ向け、手を取ることはできないと示される
怒鳴られたのは初めてだった。
稽古が辛くて弱音を吐いても、父が怖くて甘えても、兄は優しかったから
そんな兄が大好きだった
憧れてた
優しくて強くて努力を苦に思わず、いつでもまっすぐだった
だから、あの日、嫌いと言ってしまったことがずっと心に重くのしかかっていた
「でもそれは、!!伊沙奈のためだったんだろ、?!伊沙奈をっ、俺たちを愛してたからなんだろ、?!!!」
悲痛な叫びのように上擦り掠れる声で噛み付く
俺は知ったんだ
あの日兄ちゃんが伊沙奈を殺せず、全ての罪を自分で背負ったことを
俺たちをこの封印による悲劇から解放するためだということを
「それでも!!!それだけが目的じゃない…!!!……剣を構えろ、苑良!!!」
鋭い眼光と鋭い剣先が容赦なく心を突き刺す
それでも、剣を向けられても、5年間の空白が俺を弟として兄へ手を伸ばさせようとした
でもそれはすべきでは無いから
俺には、守る妹も、背中を守ってくれる仲間もできてしまったから
だから
「……これが最初で最期の兄弟喧嘩とか、嫌だなぁ……、」
目を瞑って、自分のすべきことを頭で反芻する
小さく息を吐いて最愛の兄を見やった
「なぁ、愛してるぜ、兄ちゃん、」
5年前から使い続けている愛剣フランベルジュを強く握りしめ、剣先を兄へ向ける
なぁ、もし、もしまた兄弟になれたらさ
その時は普通の喧嘩をしたいな
お菓子がなんだゲームがなんだって喧嘩して
どっちが悪いだの言い合って、1人が仲裁してさ?
そんで仲直りして、また一緒に遊ぶんだ
誕生日も3人で祝いたいんだ
みんなで生まれてきてよかったって
家族になれて良かったって
そうやって、笑って暮らしたいんだ
溢れて止まらない涙を何度も何度も拭って
後ろにいる仲間を信じて
ピアスに手をかざしいつものように呟く
「変身。」