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8 - 第8話「歩く意味を探して」

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2025年01月24日

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そこから始まったのは、果てしなく続くように思えたリハビリの日々だった。
最初に向き合ったのは、手のリハビリだった。

ペンを握ることすら叶わず、手を動かそうとするたびに無力感が押し寄せる。


指先に力を込める練習を繰り返す。

けれど、ペンを握ろうとするたびに、指は震え、ペンは無情にも床に転がった。


「また、だめだ。」


その失敗が、胸に重くのしかかる。

指先の震えだけでなく、自分自身が壊れてしまったような感覚に襲われる。


看護師が優しい声で励ましてくれる。

「大丈夫です。少しずつできるようになりますから。」


でも、その言葉がかえって胸を刺す。

(少しずつって、どれだけの時間が必要なんだ。)

そんな苛立ちを隠しながら、ただペンを握る努力を続ける。


それでも、数ヶ月が過ぎた頃、僕はようやく箸を使えるようになった。

そのとき、看護師が心から喜んでくれたのを覚えている。


「すごいですね!ここまでよく頑張りました!」


でも、僕の中には何も残らなかった。

(君がいないこの世界で、こんなことに意味なんてあるのか?)


次に向き合ったのは、足のリハビリだった。


脛骨と大腿骨が砕けていた僕の脚は、最初は痛みで動かすことすらできなかった。

リハビリのたびに、傷口が焼けるような痛みに襲われる。


それでも、理学療法士が励ましてくれる。

「少しずつでいいんです。今日はここまで動けば十分です。」


だけど、痛みを超えるたびに思う。

(こんなことに、何の意味があるんだ。)


脚を動かせるようになっても、君は帰ってこない。

そんな絶望が胸の奥で渦を巻いていた。


やがて、車椅子を使えるようになる頃には、

僕の心はさらに削られていた。


車椅子に乗り、窓際まで移動できるようになると、僕は窓の外を見下ろす時間が増えた。

君と見た星空を思い出しながら、何度も窓から飛び降りることを考えた。


そのたびに看護師が駆けつけ、僕を止める。


「そんなことをしてはだめです。」

「あなたにはこれからの人生があります。」


その言葉が、僕には空虚に響く。


(僕の人生なんて、君がいないのなら空っぽだ。)


数ヶ月が経ち、ようやく松葉杖を使えるようになった頃、

僕は自分の足で立つ感覚を少しずつ取り戻していた。


松葉杖を握りしめ、病院の廊下を一歩ずつ進む。

そのたびに、足元が不安定に揺れる。

それでも、なんとか前に進むことはできるようになっていた。


「すごいですね!ここまで来られたんですから、自信を持ってください。」

看護師がそう言って笑ってくれる。


けれど、僕の心は笑顔とは程遠かった。


松葉杖を握るたびに、君と手を繋いで歩いた記憶が甦る。

君の手の温もりと、君の隣で歩く足取りの軽さが、痛みを伴って胸を刺す。


「誰も何も分かっていない。」


病院の窓から見えるのは、君がいない世界。

そんな世界で、どうやって歩き続ければいい?


松葉杖を支えに、僕は再び窓の外を見つめた―――。

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