「…涼ちゃん、。」
「ん、?」
藤澤は疲れてる様な、微笑んでいる様な
顔をして若井の方を向く。
「…やりたいこと、ある?」
「え〜…、笑」
余命半年も無い、
病気で寝込んだままの藤澤。
「欲しいもの..とかでもいいし。」
若井は藤澤の好きだったプリンが食べたい
とか、家族に手紙を書きたいとか
この場でできる
そしてなにか自分がお手伝い出来ることを
期待していた。
なにか少しでもできることは無いか、
望むものはないかと
目を丸くして聞いてくる若井。
「..もう一度、だけ。
….もう一度だけでいいから…
….デートが、したい..です、….。」
真剣な目の若井に答えるように
隠しておきたかった本音がついついポロリ
と出てしまう。
「デー..ト….」
衝撃を受けた顔をする若井。
そらみたことか、若井を困らせることは
わかっていたのについ言ってしまった
と自己嫌悪に陥る藤澤。
結婚前も結婚後も
何千
何百と繰り返してきたデート。
気合いを入れたクリスマスデートも、
ダル着で行ったお家でお酒飲みデートも。
全部全部楽しかった。
1年前のように、ただ手を繋いで
2人でゆっくり街中を歩ければ
あと寿命が何日縮んだって
構わない気さえしている藤澤。
ただ、どう足掻いても
藤澤の体は自由に動かない。
点滴チューブでベッドに
縛り付けられたままだ。
「..ははっ、!笑
そんなの..治ってから言えってな、!笑
なぁ、若井…」
藤澤が目をちらっと若井の方に向けると
若井は..苦しそうに、それでいて
悔しそうに下唇を噛んでいた。
あぁ、そっか。
もう治らないのか。
“たったもう一度だけ” のデートは
“たった一つの命” と共に
儚く散って消えて行った。
コメント
36件
儚い、すき、ミセスのみんなスってどこかに消えてしまいそうで怖いよね、わかるわかる
シニマシタ †┏┛ ᐛ ┗┓† ナムナム
うわああああああやばい好きすぎる😭😭😭