──────???視点──────
「よしよし____。君は良い龍だなぁ。」
「そうでしょうね。」
「わぁ、自己肯定感高め」
「____優秀なように作られてますので。」
「あ、そういうこと言わないの。そこが君の悪い癖だよ。自分の頑張りを他の人のおかげにしないの!め!」
「____善処します。」
「絶対しないやつじゃん!!もう!神直々に言ってあげてるのにさ〜」
「…」
「いや、ごめんて。無言で睨みつけないで!?」
「____ふはッ。善処しますよ。」
「ちょっと!?神をからかうなよ!?」
そんな、いつも通りの会話だけど、幸せな1ページ。私───地の龍は今、神様とお話をしていた。どうでよくて、でも、少し、この時間が続けばいいのにって、願ってしまう。
この方は私のご主人様。地の神。と、1括りされているが、知恵の象徴だったり、戦争の象徴だったりと、地に関することだけでは無い神である。そんな私は、この方に仕えている龍だった。
私の名は──────本当は存在しない。龍に名前なんていらない。従順に神に仕える為だけに存在しているからだ。しかし、ご主人様が、勝手に名前をつけた。
──────「ハーデン・ベ・ルギア」
ご主人様曰く、適当につけた名前だと仰っていたが、例え、適当でも。名前をつけてくれただけでも嬉しかった。必死に顔には出さないようにしていたが、心は嬉しさで舞い上がっていた。
地の龍。これは私の名称。龍は私の他に4体いる。
炎の龍、水の龍、雷の龍、風の龍だ。
私を含めたこの龍を五大龍としている。それぞれが別の神々に仕え、その神の手足となり、様々なサポートや、下界のパトロール。そして、時には神の仕事を代理で行ったりもする。いわば、神の次に偉いポジだった。____そんなことはどうでもいいが。
「ぉーい!おい!話を聞け!」
そんなややイラついた口調で私に呼びかけるのは炎の龍であった。その黒い髪に所々に燃え上がるような赤いメッシュが生えており、その目は炎に劣らず、メラメラと燃えている。しかし、服装は炎、と言ったようなものではなく、黒で統一された、シックな服装となっていた。
「どうしたんですか?私、仕事残ってるんですけど?」
私がやや、面倒くさそうに言うと、炎の龍はわるいわるい。と、謝ってくる。正直な性格で、短気なところもあるが、世話焼きの良い奴だった。
「そんなことより聞いてくれよ!!俺の一大イベントがくるんだよ!!!」
「はぁ?なんです、そのどーでもいいやつ。」
「どーでもいいってなんだよどーでもいいって!?」
そんな、いつものくだりを繰り返す。炎の龍は早く一大イベントについて言いたいようで、やや興奮気味に話し出す。
「いや、俺この度!!【炎神】2代目に選ばれたんだ!!」
「───は?まじ?」
「まじだよおおまじ!!この前炎神様に言われたんだよ!!『私の後継はお前しかいない。任せたぞ』って!く〜!!!かっこいいぜ!!」
「ちょっと待て、まじで神になるの?」
「そのとーり!いや〜出世しちまったよ俺も!」
「はぁー?マジで?お前1番神に向いてなさそうじゃんw」
「はぁ!?どういう意味だよ!?」
そんなくだらないことを言っても、内心は驚きと、賞賛でいっぱいだった。まさか、五大龍でも神になる資格があるとは、思いもよらない。さらに、炎の龍が神になるなんて夢なのでは、と疑うほどには信じられなかった。しかし、目の前では嬉しそうな表情をしながら、自慢げに話す炎の龍。それを見てると、自然とこっちまで嬉しくなった。
「じゃあ、今日は打ち上げですね。」
「そうだな!せっかくだし、奢ってやるよ!」
「【神の一雫】頼むわ。」
「いちばん高いのを頼むなよ!?」
「それじゃ、俺の神になることを祝して!」
「「「「天祝〜!!!」」」」
そんな掛け声とともに私たちはアルコールを飲み始める。普段はあまり摂取しないが、たまに飲むと美味しい。いつも、仕事のことしか頭にない私ですら、どこか、それをぼやかし、脳に隙間を開けてくれる。ぼー、とするのもまた楽しい。
「まさかあの炎が神になるとはなー」
と、風が笑いながら言う。こいつはアルコールを摂取すると、直ぐに笑いだす。自然と翼を生やし、それを悠々と広げ、くつろぐ。久しぶりに翼を伸ばしているようだ。
「まさかとは余計だなー。まあまあ、俺がなれるってことはお前らもなれるってことよ!さっさと神になれよな〜。」
そう言いながら炎は二酸化炭素____炭酸と言っただろうか?を口に含む。炎はアルコールを飲むと、力の制御が出来ないので、店内で飲むことは出来ない。
「───ふと、思ったことなんだけどさぁ。」
そう言って水がどこか悲しげに瞳を揺らす。こっちはどこかネガティブな発想ばかりする。───飲み終わったら、そんなことを忘れるというのに。
「炎が神になったら私たち、炎と一緒になれなくなっちゃうね。…いつか、そうやって炎に忘れられていくんだぁぁああ!!!うわぁぁぁああん!!」
そう言いながら大きな声で泣き始める。それを雷が慰める。
「まあまあ。炎ちゃんはこれからも私たちのお友達よ。安心しなさい。」
そう言いながら、雷は水の背中をさする。水は安心したかのように泣き止むが、今度はまた別の理由で泣き始める。
「でも、でもさぁ!!神になったら付き合えなくなっちゃうよぉぉおお!!やぁだぁ!まだ気持ち伝えてないのにぃぃ…ヒッグ」
「───は!?え///!?」
水の衝撃的なカミングアウトに炎が顔を真っ赤にして驚く。これには私も驚く。何故ならば、そんなことを言っていたことは無かったのだ。私達の反応を見て、雷は
「気づいてなかったの?割と分かりやすかったじゃない。」
そう言って、ため息を吐かれた。───いやいやいや!
「え?これマジのやつ?」
「あ、う、でも。俺も水のこと…嫌いじゃないって言うか…」
「やめろやめろやめろ!!私たちは惚気話を聞きに来たんじゃあねえ!!!」
なぜだかいい雰囲気になりそうな炎と水の会話を私は聞いてはやれない。だって、こんなことになるなんて思っても見なかったから。しかも、友達同士の恋愛を見ていると、こちら側まで恥ずかしくなるからだ。
「あら?地ちゃん、こういう話苦手なの?大人びてるのに意外だわ〜」
「無理無理無理ッ!!見てるこっちが恥ずかしいからやめろ!!今回は帰らせてもらうからな!!」
そう言って、私は半ば無理やりこの酒場から離脱する。いや、この雰囲気の中でいられるほど私はメンタルが強くなかった。恥ずかしいものを見せられたものだ。全く。
少しだけ気になって、ご主人様に聞いてみる。
『私も、神になれるんですか?』
そう、テレパシーを送ったら、直ぐに帰ってきた。どうせ、『なれるよ』とか、『応援してるよ』と、来るかと思ったが
『絶対にならせない。』
そう、返ってきた──────
──────そこから。炎の龍は神になることになった。
「それでは。神、引き継ぎを開始する。」
そんな、淡白な言葉でその儀式は始まる。その儀式を取り仕切るのはもちろん最高神様お2人。
「それでは、炎龍──────入ってきなさい。」
「…。」
無言で、一礼してから炎の龍は入ってくる。どこか、苦しげな表情を浮かべながら。らしくない表情だった。それに、水の龍も来席していない。____なぜだか、嫌な予感がする。
「それでは、炎の龍よ。───この炎に耐えて見せよ。」
その瞬間、炎だけが結界のようなものに取り囲まれる。その中には───おそらく炎神様が、ほとんど体が燃えている状態で結界内にいる。そして、完全に───炎へと姿を変え、その結界内を豪華で焼き尽くす。声も、何も、聞こえないと言うのに、不思議と耳では炎の燃え上がる音が聞こえた。
───衝撃的な光景が数分続く。それで、私は声を出すことすら出来なかった。恐ろしかったから?怖かったから?衝撃だったから?───違う。美しかったから。その炎は見とれてしまうほど美しかった。息を飲むほどまでに、その炎は光よりも明るく、そして、海よりも深く、地よりも安定して、風のように自由に燃え、雷のように荒々しかった。
「───。それでは、炎の龍よ。その結界内から出てきなさい。」
そう、最高神様が仰る。───だが、誰も出てこない。───数分がたち、その結界は、消される。
「───炎の龍は神に適していなかった。これにて、継承の儀式は失敗で終わりとする。」
「───ぇ?」
やっと、口から言葉が飛びでる。微々たる音量だし、それだけで私の想いを言葉にはしきれていなかった。
「───ッッ!?」
「───ッへ?」
水と、炎以外の龍も目を見開き、その光景に釘付けにされた。
───だって、何が起こったか理解できなかったから。いや、理解したくもない。なんで、何が、どうなって?そんな、疑問で脳内をいっぱいにしていく。理解したくない、という考えを無視して。
え、だって。失敗。炎の龍は戻ってこない。神は燃え尽きていた。───一体なぜ?
しばらくした後、私たちの時は動き出す。───誰とも話す気分にはなれなくて。私は、その1日を燃えカスのように過ごす。───次の日、私はご主人様に聞きに行くことにした。───炎の龍が死んだなんて、信じられなかった。あいつは、どんな炎にも耐えられた。だから、燃えるなんて有り得ないのだ。
「ご主人様ッッ!!!」
普段、ノックしてから入るご主人様の部屋を思いっきり開ける。ご主人様はいつも通り、柔和な笑みを浮かべていた。
「炎ッ炎の龍はどうなったんですかッッ!?!?」
私が柄にもなく慌てているからだろうか、ご主人様は少し驚いた表情を見せてから少し表情に影を落とす。
───嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
私が聞いたことなのに、その答えを聞きたくなくて、頭の中に全力で否定する言葉のみが私を安心させるかのように陳列する。しかし、それをぶち破ってご主人様の声が聞こえる。
「───炎神の炎に耐えきれなかった。あいつは神になれないし、龍に戻ることも出来ない。」
「───嘘だ。」
「───本当だ。こればかりは。本当なんだ。」
「だって!!だって炎の龍はどんな炎にも耐えられるんだよ!?なのに!!なのにあんなことってないでしょ!?」
「口を慎め」「無理ですよ!!なんで!!なんでとめなかったんですか!!!?」
「最高神様に逆らえると思うなよッッ!!!!」
私が叫び散らかすとほぼ同時に、地を揺らすほどの大声が部屋中に響き渡る。空気をふるわせ、地を揺らすその声は私の批判の声をかき消した。
───怒られたのは、これが初めてだった。胸がぎゅっとなる感覚。目頭が熱くなって、とめどなく水が目から溢れる。私は、初めて泣くという行為をした。
「───すまん。こればかりは。どうしようもないんだよ。最高神様には逆らえん。」
「───あ゛ッヒッグ─ッ」
「──泣けばいい。気が済むまでな。ただ、炎龍は戻ってこない。」
私は、初めてだ。初めて神を心から憎いと思った。
ここで切ります!前回書けなかった代わりに沢山書けました!!約4700字です!それでも書き終わらない八幡さんの過去…。今回は長いからって調子こいて色んなことを書きたらそれが良くない方に転んじゃいました…。まさか、書き終わらないとは…。後、もう少しなので続きをまた明日書きます!
それでは!おつはる!
投稿してませんでしたァァ!!!完全に出し忘れましたぁぁ!!!
コメント
4件
誤字するのノルマだったりする?