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2 - 第2話 - 義手の騎士と空白の記憶

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2025年06月27日

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爆音と土煙の中、アルビスは瓦礫の山に叩きつけられた。右腕の義手から火花が散り、システムエラーを示す警告音が耳障りに鳴り響く。全身を打った激痛が脳を揺らすが、それよりも、レイヴァがリシャへと向かう光景が彼の思考を支配していた。

「…リシャ!」

声にならない叫びが喉から漏れる。レイヴァの細長い指が、今まさにリシャの白い首に触れようとしていた。リシャは目を閉じ、静かに何かを祈るように唇を震わせている。その無抵抗な姿が、アルビスの脳裏に焼き付いた。

刹那、彼の脳裏を、ある記憶の断片がよぎる。炎に包まれた都市、崩れ落ちる建物の陰で、何者かが差し伸べた手。しかし、その手は届かず、全てが闇に塗りつぶされる――。

「させるかぁあああ!」

痛みを無視し、アルビスは地面を蹴りつけた。義手のシステムは完全に損傷していたが、彼は構わずレイヴァへと突進する。狙いは、レイヴァの胴体。その脆弱な部分を、かつての騎士が培った全霊の力で叩きつける。

鈍い打撃音が響き、レイヴァの動きが一瞬止まった。感情のない光点が明滅する瞳が、わずかに揺れる。その隙を逃さず、アルビスはリシャを抱き寄せ、体勢を立て直した。

「大丈夫か!リシャ!?」

荒い息を吐きながら問いかけるアルビスに、リシャはゆっくりと目を開けた。その瞳には、安堵と、かすかな悲しみが混じっていた。

「はい、アルビス…ありがとう。」

レイヴァは体勢を立て直すと、再び二人に相対した。損傷したアルビスの義手を認識し、無機質な動作で攻撃態勢に入る。しかし、その動きは先ほどよりもわずかに鈍くなっていた。アルビスの捨て身の一撃が、何らかのダメージを与えたらしい。

「まだ動けるのか…しつこい奴め…!」

アルビスは冷徹に呟きながら、周囲を見回した。教会はこれ以上、身を隠す場所としては適していない。このままでは、リシャを守りきることは難しい。彼は瞬時に状況を判断する。

「リシャ、こっちだ!」

アルビスはリシャの手を引き、教会の裏手にある崩れかけた通路へと駆け出した。レイヴァも追随してくるが、瓦礫だらけの狭い通路では、その異形の体が動きにくいはずだ。

二人は、かつて地下へと続いていたであろう階段を下りていく。暗闇が彼らを包み込み、空気は冷たく湿っていた。埃っぽい通路の奥から、かすかな機械音が聞こえてくる。レイヴァが追ってくる音だ。

「ここは…昔の地下通路でしょうか?」

リシャが息を弾ませながら言った。

「ああ。昔の地図を頼りにしている。この先に、古いシステムの残骸があるはずだ。もし、こいつがシステムで動いているなら、何かしらの手がかりがあるかもしれん。」

アルビスは、義手の機能を確かめるように指を動かしたが、やはり反応はない。しかし、彼は諦めなかった。この試験体がなぜリシャを狙うのか、そしてなぜ旧世界のシステムに執着するのか。その謎を解けば、活路が開けるかもしれない。

通路を進むと、やがて視界が開けた。そこは、広大な地下空間だった。壁面には無数のケーブルが這い回り、中央には巨大なサーバーラックの残骸が積み重なっている。かつて、この世界の全てを動かしていたであろう、旧世界の遺産。

その時、背後からレイヴァの影が迫る。

「くそっ、ここまでか!」

アルビスはリシャを庇うように立ち止まった。しかし、その場所で、彼はある違和感を覚える。壁面に設置された、錆びたパネル。そのパネルの一部に、かつて彼が所属していた「騎士」の部隊章が刻まれていたのだ。

アルビスの記憶が再び、激しく揺れ動く。

――炎。叫び声。そして、自分自身が、この地下空間で、何かを護ろうとしていた光景。その「何か」とは、一体――。

レイヴァは、そんなアルビスの隙を見逃さなかった。その手が、再びアルビスへと伸びる。しかし、その軌道は、まるでアルビスの背後にあったシステムの一部を狙っているかのようにも見えた。

「――っ!」

アルビスはとっさに身を翻し、レイヴァの攻撃を受け止める。その衝撃で、彼の背中がパネルに強く打ち付けられた。

瞬間、パネルから鈍い光が放たれた。そして、機械的な合成音声が、地下空間に響き渡る。

「…認証完了。騎士、アルビス。システム起動。最終プロトコル、実行します」

その言葉に、アルビスは目を見開いた。そして、レイヴァの動きが、ぴたりと止まった。感情のない瞳の光点が、激しく点滅している。まるで、システムに干渉されたかのように。

「…な、なんだと?」

アルビスは混乱しながら、自身が打ち付けられたパネルを見た。そして、そのパネルの奥から、青白い光が漏れていることに気づいた。その光は、まるでアルビスの体をスキャンしているかのようだった。

そして、その光に照らされる中で、アルビスの脳裏に、失われた記憶の断片が急速に繋がっていく。

自分が、なぜ「元騎士」と呼ばれるのか。 なぜ、この義手を装着しているのか。 そして、このレイヴァという試験体と、自分自身の間に、一体どのような関係があるのか――

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