船が揺れる。放送機から鈍い音が響いてから、だんだんに船が沈み始めているのがわかった。私はひたすら走った。カナを背負って。
途中、不気味なモノに遭遇した。
背は2メートル以上、腕には血が付いていて、目からは黒い液体が流れている・・・背中しか見えなかったが、どことなく、あの人形に似ている気がする。
それは私達に気付いていないらしく、船内を荒らしていた。私達は音を立てず、ゆっくり逃げた。
結構な時間をかけ、シズハのいる部屋へ辿り着いた。ノックすると、すぐに出てくれた。
「あぁ、先輩方・・・って、どうしたんですか!?あの元気の塊みたいなカナ先輩が顔色悪くして背負われて・・・」
「ここまで来る途中、化け物に会ったの・・・おそらく今回の殺人の犯人だと思うんだけど・・・見た目が怖すぎて腰抜かしちゃった。それに、アナウンスの音が・・・ハハ・・・。」震えた声でカナが答えた。
「ところで、どうしてシズハはそんなに冷静にしてられるの・・・?」と、疑問そうにカナが聞く。
「電波が遮断される前に通報しておいたんです。メールで遺体の写真も送りました。そしたら、すぐ救助隊と自衛隊の方達が救出に来てくれるそうです。」
「そ、そうなの・・・?良かった・・・って、え?電波が遮断される前にって・・・?」
「大体、こういう状況では電波が遮断される事が多いんです。ドラマとかでもよく見るでしょう?人を監禁する時に、通報される可能性を考えて山奥の小屋に監禁するとか。でも、この船では電波が通っている。いつ通報されてもおかしくない。だから犯人はすぐに電波を遮断するはずです。では、いつ遮断されるか。遺体がバレる前に遮断してしまえば誰かが不自然に思ってしまう。だから『デスゲーム』を始める直前に遮断する必要がある。」
「だからわざわざスクリーンで奇妙な演出をして時間稼ぎをした・・・ってこと?」
「そう私は考えています。まぁ、あくまで私の推測ですが。」
「なるほど・・・シズハってオタクって言われてる割に冷静な判断が得意だよね。」
「オタクだからって冷静な判断ができないっていうのはちょっと違うかと。あと、ムギ先輩がさっきから足震えてますよ。いい加減降りたらどうです?」
「え?・・・あ、そうだね、ごめんムギちゃん。」
そうして、ようやくカナをおろすことができた。とりあえずは救助が来るまで生き延びれば何とかなりそうだ。希望が見えてきた。
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