「アリア、戦闘モードに移行!皆助けるよ!」
『畏まりました、ティナ。戦闘モードに移行、広域探知実施。これより戦闘のサポートを開始します』
突如として降り立ったティナはまるで少女を守るように翼を大きく広げて立ち塞がった。この事態に強盗達はもちろん、包囲している警官達や集まっていた野次馬達も動きを止めた。警察の増援はある程度覚悟していた強盗達だが、まさか今話題の宇宙人が介入してくるなど夢にも思わなかった。
周囲の困惑をよそに、ティナは立ち塞がりながら声を張り上げた。
「一度だけ言います。強盗の皆さん、武器を捨てて投降してください!これ以上罪を重ねる必要はありません!」
ティナの宣言に強盗達は更に困惑する。予想外の事態に思考が追い付いていないのだ。
だが、7人居た強盗の中で1人だけ直ぐに正気に戻った人物が居た。最も、それは彼らにとって不幸となったが。
「黙れ宇宙人がっっ!! 地球に来るんじゃねぇよ、この気持ち悪い鳥人間がぁあっ!!」
店内に居た1人が飛び出してきて、ショットガンをティナへ向けながら叫んだ。彼はクサーイモン=ニフーターの熱心なリスナーの1人であり、過激な思想の持ち主であった。政府が最も恐れた事態になった瞬間である。
一部始終を見ていた警官達も顔を青ざめた。
銀河の彼方からやって来た来訪者に対するストレートな暴言。下手をすれば地球滅亡を招くような暴挙だが。
「銃を降ろしてください。そんなものじゃなにも出来ませんよ」
ティナは怒るでもなく淡々と語り掛けた。彼女の反応を見て過激な強盗は怒りで顔を真っ赤に染めた。
「なっ!?舐めるなぁあっ!!」
激昂した彼は躊躇無くショットガンの引き金を引いた。甲高い同時に金属音がなりひびき、そして誰もが目を見開く。
そこには丸型の盾を構えたティナが立っており、その足元に潰れた銃弾が落ちる。
「だから何も出来ないって言ったのに」
「ばっ、化け物めぇ!!」
「アリア、いくよ!出力は最小!怪我はさせたくない!」
何処からかビームランスを取り出したティナは、力強く翼を羽ばたかせて一気に加速。唖然としていた二人をビームの刃で薙ぎ払った。
最小限まで出力を落とした刃に振れた強盗達は、強烈な電流を受けて全身に激しい痺れが襲いかかり喋る暇もなくその場に倒れ伏した。それを一瞥して、ティナは思考を走らせる。
「アリア!」
『人質の位置を確認しました』
目の前に店内の映像が映し出されて……よしっ!一ヶ所に纏められてる!
周りには……銃を持った人が5人!
「プロテクト!」
遠隔ではあるけど、人質にされている人達に防護魔法を掛けた。同時に体力をゴッソリ持っていかれた感覚に襲われるけど、なんとか踏ん張って堪える!
「人質の皆さんは無事です!今なら何をされても怪我をすることはありません!」
私はで警察の皆さんに向かって叫んだ。呆然と状況を見ていた警察の皆さんは、直ぐに反応してくれた。
「突入ーーーーッッッ!!!」
「やぁああっ!!!」
武装した警察の皆さんに先んじて、厳重に封鎖された出入り口にビームランスを突き立て、そのまま大きく円形にくり貫いた。高出力のビームに焼き斬られた出入り口は大きな音を響かせながら崩壊。店主さんには悪いけど、命には代えられない。
大穴を潜って店内へ踏み込むと、銃を持った5人が呆然としていた。人質の皆さんは光の膜に包まれている。良かった、見た限り怪我人は居ない。防護魔法の膜に阻まれて人質に触れることも出来なかったみたいだね。
さて、武器は危ないから捨てて貰おうかな。
「フリンゴっっ!!」
呆然としている強盗達に衝撃魔法をぶつけた。本来なら人を、ものを吹き飛ばす魔法だけど私にそんな力は無い。でも、彼らの銃を吹き飛ばすくらいは出来る。
強い衝撃が予想通り強盗達の武器が吹き飛ばして窓を突き破って店外へ飛んでいった。
「確保ぉーーーっっ!!!」
「手を上げろ!膝をつけぇ!」
警官の皆さんがピストルを突き付けながら強盗達を制圧した。強盗達は何がなんだか分からないって顔してる。
…っ。
『ティナ、マナの残量が危険域です。これ以上は使用しないことを推奨します』
「大丈夫っ!」
目眩がしたけど、まだ動ける。ちょっとふらつきながら店を出ると。
「ママァ!ママァ!」
「大丈夫、大丈夫よ」
泣き叫ぶ女の子を婦警さん達が宥めていて、その近くでは撃たれた女の人を救急隊員の皆さんが懸命に治療していた。けど。
「救急車はまだか!?」
「車を退かしてくれ!早く搬送しないと!」
「担架は!?」
「ダメだ!下手に動かせば出血が増すぞ!」
たくさんのパトカー、利用客の車でスーパーマーケット正面は混雑していて救急車が辿り着けないみたいだ。それに、皆さんの顔に焦りが見える。
それを見て私はフラフラする身体に渇を入れて近寄る。アリアが制止してくるけど、止まれない。
「ティナ嬢!?」
「致命的な場所を教えてくださいっ!早く!」
女の人は三ケ所を撃たれているみたいだ。私の言葉を理解してくれた救急隊員さんは。
「ここだ!多分動脈が破けている!」
「出血が止まらないんだ!」
女の人の胸を示してくれた。なら、迷わない。私は両手を傷口に当てて。
「癒しの光よ、消え行く命に救いの手を……」
優しい光が手から溢れ、傷口がゆっくりと塞がっていく。
「なんと!?」
「奇跡だ……」
皆さんが呆然としているのを感じながら、私はマナを振り絞って治癒魔法を継続。どんどん意識が遠ざかっていくのを自覚しながら、それでも歯を食い縛って耐える。絶対に死なせるもんか!
一分くらいだろうか? 手を離したら傷口が綺麗に塞がって女の人の真っ青だった顔も回復して、荒かった呼吸も落ち着き始めた。良かった、これなら後は……。
「ティナ嬢!」
周りの人の慌てた声を聞きながら、私は意識を手放した。ああ、またフェルに心配掛けちゃうな……でも、助けられて良かった……。
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