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涼ちゃん~…😏恋のキューピットだね🤭どうか2人の恋が実りますように🙏✨
続きが楽しみ、、、
りょつnice…ッ!
大森side.
「んで、結局今年の夏も言えてないと」
「…涼ちゃんうっさい」
若井がソロの仕事でいない間、
僕と涼ちゃんは小さなカフェでお昼ご飯を食べていた。
お昼…と言ってももう夕方近いんだけど。
バリエーションが豊富な上に
デザートもパスタも美味しいのに
このカフェにはあまり人がやってこない。
そっちの方が僕たちにとっていいんだけど。
Mrs. GREEN APPLEのバンド名でデビューして今年で十年。
活動休止、メンバー脱退、誹謗中傷、突然の病気、MV炎上…
この十年でさまざまなことを経験した。
でも、今一緒にバンドをやれていることが、
すごく嬉しかった。
有難いことに僕も涼ちゃんも若井も音楽だけでなく
さまざまな場面で活躍している。
本当は今日も若井と一緒にご飯を食べたかったんだけど、
ソロの仕事があるから、と断られてしまった。
「今年の夏は、夏こそは、って言ってたのにねぇ」
「…いう機会が無かったんだよ…、!」
涼ちゃんがしみじみと言いながらきのこパスタをフォークに絡めた。
僕は、若井のことが恋愛的な意味で好きだ。
涼ちゃんにそのことを言った時、
涼ちゃんは吃驚した顔をしながらも笑ってくれた。
「僕は全力で応援するよ」
「あ、ちなみに僕は若井のこと好きじゃないからね。恋愛的な意味では」
「元貴も若井も大好きだけど。恋愛したいとは思ったことないからね」
そうにこにこと笑った涼ちゃんが、
今まで数々の人の恋を散らしてきたことを僕は知っている。
綺麗で可愛くてお花みたいな涼ちゃんに
近づきたいと思っている人がどれだけいるか。
「ちゃっちゃと言っちゃいなよ、ちゃっちゃと。」
「…だって、振られたら終わりじゃん。」
「だーいじょうぶ。骨は拾ったげる。当たって砕けて!」
「砕ける前提で言わないでもらっていい?」
涼ちゃんはケタケタと愉快そうに喉を鳴らしたあと、
真剣な目をしていった。
「でも、若井は元貴のこと、好きだと思うなぁ」
そう言いながら窓に目をやり、「あ、もう夕方だ」と呟く。
「あー…今日なんもないから暇だなぁ…」
「僕の家くる?」
「いや、今日はやめとく」
「ふーん、…珍しい」
「いや、今日はね。二人の邪魔をするわけには」
涼ちゃんは僕の方を見てにやにやと笑った。
最後の一口できのこパスタを食べた後、
おしぼりで口を拭いた。
「…元貴はほんと、若井好きだよねぇ」
中学生の頃からの片思い。
高校生の時できなかった告白。
それを大人になってやろうとして、
未だにできていない。
でも、一人で抱え込むとこも、
涼ちゃんを泣かせたくないから一人で泣くとこも、
実は人一倍努力家なとこも、
繊細で涙脆くて、心配になるくらい優しくて、
普段はかっこいいのに、笑うと可愛いところも、全部。
「…うん。…大好きだよ」
涼ちゃんはもう一度笑った。
水を一気に飲んで、窓の外を見やる。
「あ、丁度いいとこに」
涼ちゃんが僕をつんつんとつつく。
そしてドアの方を指差した。
するとそこには汗だくになりながら店内に入ってくる若井の姿。
「若井ぃ〜!」
「あ、いたいたっ!」
手を大きく振りながらこっちに向かって歩いてくる若井。
心臓がドキドキとうるさくなるのを感じながら
僕は涼ちゃんを慌てて叩いた。
「ちょっと涼ちゃん、どういうこと…っ!?」
「僕が呼んだ。だってこうでもしないと元貴、若井と喋んないし。」
ゆっくりと笑って頑張れぇ、と言う涼ちゃんをもう一度叩く。
その顔が夕日で赤く染まった。
その顔に黒い影が入ってきた。
「涼ちゃん呼んでくれてありがと!もう急いで!きた!」
「だから汗だく、笑。暑苦しっ笑」
若井が明るい声で笑って、太陽みたいに笑う。
その笑顔はやっぱり、だれよりも輝いていた。
「…あっ!そうだ、僕、用事があったんだぁ」
涼ちゃんがわざとらしく口に手を当てる。
嘘だって僕は知ってますよ、
この後予定なくて暇ってさっき言ってたじゃん。
「…だから、二人でたくさん喋っておいで。」
涼ちゃんはふわふわと笑いながら僕に目配せした。
「えー、もう帰っちゃうの?涼ちゃんが呼んだのに?」
「ごめんねぇ。外せない用事だから」
涼ちゃんはそう言うと店内から出ていった。
僕と若井との間に静かな沈黙が流れた。
♡と💬よろしくお願いします。
夏の影むずかしい。